作:久保真理
「よし!ジャンケンだよっ!」
座ったとたんに、バッと立ち上がった。
「お風呂お風呂!!」
久しぶりの五右衛門風呂にわくわくしているみたいだ。
「よし!いくぞ!!ジャンケン」
ぽい!!
未夢はぐーで、
彷徨はぱーだった。
「勝ち!」
「ぐぬぬぅ〜」
「じゃ、俺はいってくる。」
ニヤニヤとしながらリビングを出てった。
すこし悩んで、未夢もついていった。
ジャーというシャワーの音の後、ザブンというお湯につかる音が聞こえると
未夢は脱衣所からお風呂に通じるドアに背中をつけて体育座りをした。
「彷徨?」
「ん?なんだ?」
影が見えて、いるのを知っていた彷徨は別段驚かない。
「静かだね・・・」
「まー。そりゃ俺と未夢だけだからな。」
風呂の窓からみえる夜空を見上げる。
星がたくさん輝いている。
「彷徨。一人で、こんな広くって。寂しくないの?」
あたしは、無理だよ。
そんな言葉が隠れている言葉だった。
「今は、未夢がいるから。」
そんなことを言われると思わなくって、未夢は顔を真っ赤にした。
「あたしは、ずっとはここにいられないんだよね・・・」
”帰るところは、もうここじゃない。”
そう思うと、ふと悲しくなって、涙があふれそうになる。
「未夢が、居たいなら。いていいんだよ。ここは未夢のもう一つの家みたいなもんだから。」
”というか。いて欲しい。”
そこは飲み込む。
両思いなのに、お互いがお互いのことを思いすぎて
すれ違う。