作:久保真理
お互いに背を向け、真っ赤になった顔を見せないようにする。
未夢の涙はすっかり乾いていた。
未夢の顔の熱がさめてきて、余裕ができたときに気づいたことがあった。
”ここの部屋も、きれいだなぁ”
ずっと沈黙で正直気まずい。
未夢から、切り出した。
「ここもきれいだね。掃除してるんだ」
「え?あ、ああ。いつ帰ってきてもいいように。な。」
そう言って彷徨は振り返る。
彷徨の顔の熱はさがり、もう普通のいつもの彷徨だった。
未夢はまだあっちを向いている。
その背中に、続きを声を出さずに言う。
”未夢も。いつだって帰ってきていいんだ。ここはお前の家だから。”
未夢が振り返る。
彷徨は、聞こえたのかと一瞬ドキッとするが、
声には出していないから聞こえていない。
「いつか。帰って来るよね。」
「帰ってくるさ。ここはあつらのもうひとつの家だ」
優しく返す
「また、暮らせるといいな。ルゥくんとワンニャーと彷徨と、四人で毎日ドキドキわくわくしながら・・・・」
そう言って顔をまた赤くした。
”あたし、何てこと言ってるのよ”
うつむく未夢を見て、彷徨は驚いていたけど、うれしそうに微笑んだ。
「そうだな。いつか。四人でまた暮らせたら。楽しいだろうな」
その言葉を聞いた時
未夢は彷徨の胸にしがみついた。
”帰りたくない。このまま、ここでアナタと一緒にいたい”
その言葉がのどまで出かけて、
ぐっと飲み込んだ。