学校生活

眠気との戦い

作:あかり

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「彷徨ってすげーよな。絶対授業中に居眠りなんてポカしたことないもんな。眠くなったりしたこともないんだろ。良いよなあ。おれ、先生の話聞いてるとすぐ眠くなっちゃうんだよー。」
そういったのは今回席替えで俺の横に座っている三太だ。眠くないわけあるか!!と思う。
今はもう終わってしまったけれど、プールの後の時間や昼ごはんのあとの5時間目は特に。
もう、眠いなんてもんじゃすまない。なんでこんな時間に授業をするんだろうと思うこともあるくらいだ。
でも、三太には俺が眠そうにしてるなんて見えないんだろう。


さっきの5時間目クラスの何人かはコックリ、コックリして途中ではっと気付くみたいなことをしてた。俺に、あんなことをいった三太も途中、ぼーっとしててそこを先生に当てられたもんだからちょと慌ててた。そのこともあって、そんなことを言うんだろう。
「そんなことないぞ。俺だって眠い。」
「うそだー。なぁ、光月さん。」
そう言って、ちょうど近くを通りかかった未夢を捕まえていた。
突然振られた未夢は何の話だろうと怪訝そうだ。


従姉妹だと通してはいるものの、なんだかんだと三太や未夢の友達の天地や小西は俺と未夢をくっつけたがる。というより、勘ぐってる感じがある。ま、今のところはどうにもこうにも転びようがないんだけど。今は、4人の秘密と生活を守ることに精一杯だし、多分未夢は俺のことをそんな風に見ていない。俺だって、今すぐどうこうなりたいって情動はない。未夢を含めてルゥもワンニャーも大切にしていることだけは確かだけど。


「ん?何のこと?」
首をかしげて不思議そうな様子をしてるから、肩をすくめて答えてやった。
「三太には、俺のこと授業中まったく眠くないように見えるんだってさ。そんなことないって言って反論中なんだ。」
「なぁんだ。そんなことか。三太君の『うそだー。』しか聞こえなかったから何のことかと思ったよー。」そう言って、ニコニコ笑った。
そして、次に言った言葉は、衝撃的だった。もう、本当に。



一瞬息が止まるかと思ったくらい。



「三太君てば、隣の席なのにおもしろいな。彷徨、5時間目とか結構眠そうだよ。今日も、あくびをかみ殺してたもん。私、みたもん。三太君があてられてちょっとした後だったよ。三太君当てられて、大変そうって思ってみてた後だったから覚えてるよ。」
「えぇ!!そうなの?」
「え・・・うん。あ、そうか三太君は当てられた後で驚いてたから気付かなかったのかもね。」
「なんだよぅ、彷徨。俺の一大事の後に眠そうだったなんて、ひどいぞ!!大体、先生が見てるの知ってたなら教えてくれたっていーじゃんか!!」
「おい、無茶言うなよ。俺だって起きておくのに精一杯だったんだから。」
「むー、ならしょうがない。許してやる。」
「あー、はいはい。サンキューな。」
「仲いいねー。」クスクス笑いながらそう言ってじゃあねと、天地や小西たちの方に歩いていった。



「・・・で、彷徨なんで口元に手をあてたままなんだ?」
「いや、別に。」
「ふーん。」
なんとなく、意地悪な笑みをしたかと思うと三太のやつこう続けやがった。
「しっかし、光月さんも彷徨のことよく見てるよなー。俺だって、ずーっとかなたの友達やってきたけどあくびをかみ殺したとこなんて見たことないよ。っていうか、見たことはあるんだろうけど、気付いたことなかったなー。光月さん以外、多分誰も気付いてないんじゃないの?だって、なんせ美少年コンテスト2年連続1位だもんなー。たしか、新聞部がだしたフレーズは『鉄壁の王子様』だったかな?」
美少年コンテストのことに触れられるのを嫌がってるのを知っててこんなこと言いやがるんだ。
しかも、未夢のことを含んで言うもんだからやっぱり気に食わない。
というか、こいつ朝、どうしても分からなかったからと数学の宿題を見せてやった恩を忘れたのか?
「へー、三太はそういうこと言うんだな。明日、知らないぞ。数学、今日もたっぷりでてたよなー。しかも、明日は今日のところを解いてこいって言われてたのは誰だったっけ?」
「あっ、ごめんなさい!!俺が悪かったよう。今度、自販機おごるから!!西遠寺様、彷徨様、どうかこのことは水に流して。」
必死に手を合わせて拝んでいる様子はなんだかこっけいで、まぁいいかと思えた。
なんだかんだで、三太に甘いよな俺。
「自販機は別にいい。でも、許す。ただし、宿題は自分でやってこいよ。」
「分かってるって。なんだかんだ言っても、彷徨は許してくれちゃうんだよなー。」
へへっと笑いながら、俺を拝んでいた手を解いた。
そして、静かにでも満面の笑みでこう続けた。
「でもさ、光月さん、やっぱり彷徨のことよく見てると思うよ。おれさ、なんかよくわかんないけど、そのことは嬉しいんだ。お前、前より表情も柔らかくなったし笑う回数も増えただろ、よかったなーって。」
三太の言葉にも驚いた。こいつ、そんな風に俺のことを見てたんだなって。三太なりに心配してくれてたんだなって。
でも、それを直接言うのは恥ずかしい。いや、俺じゃなくても恥ずかしいだろう?
「いや、でも別に俺は、あくびをかみ殺してるところは分かってほしくないぞ。誰にも。」
「まあ、そうだろうけど。でも、誰かが知ってくれてるって嬉しいだろ。本当の自分のこと。」
一瞬ドキッとしたことは絶対内緒だ。「はい、はい。」といって次の授業の準備をする。
いつまでもしゃべってるわけには行かないからな。
三太も「ちぇー。」なんて言ってる。多分、今日のところはもうこの話題は口にしないだろう。
いつもなら、次の授業もあくびをかみ殺しながら聞くことになる時間帯だ。なんせ、6時間目が国語だなんて子守唄を言っているのかと感じるくらいなんだから。いつもなら、眠気と格闘になること必死だ。
だけど、多分今日はそうならない気がする。いつもなら、授業開始にチラッとしか目を向けない未夢のほうを授業中幾度となく見てしまう気がするから。
出来合いの4人家族の秘密と生活を守ることに精一杯ではあるけれど、さっきの未夢の一言で『どうにかなりたいって情動はない』って思ってた気持ちが揺らぐ。



ああ、もう。今まで以上にいっぱい、いっぱいだ。








お題に挑戦させていただきました。
お題をお借りしたサイト様は以下のとおりです。ありがとうございました。

サイト名・時雨れ喫茶   管理人名・道野 木実 様
URL http://www.geocities.jp/tokisamechaya/index.html


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