学校生活

本日の指名率

作:あかり

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最近、ルゥは甘えん坊だ。
多分、未夢がキャスターにスカウトされたとき、4人がしっかりそろうことがなかったことが寂しかったせいだろう。なにをするにも俺も未夢もワンニャーもそろってないと嫌そうな顔をする。
でも、今日はそういうわけにもいかなかった。ワンニャーが腰を痛めたとかで、起き上がれなかったから。今日が土曜日でよかったよ。本当に。学校のある日はどうしてもワンニャーに頑張ってもらわないわけにはいかないから。明日には直ると思うとは言っていたけれど、1日無理はさせられないからな。
そんなわけで、今週の週末は家事を全部俺と未夢と2人で分担だ。

「ね・・・ご飯は彷徨にお願いしていいかな?」
今日の役割を決めるのに一緒に頭を付き合わせたとき、おそるおそる言ってきたのは未夢からだった。もちろん、俺ももとからそのつもりだった。最近は、大分ご飯を作るのに慣れてきたとはいえ、準備から片づけまでを考えると未夢に食事を任せるとかなりの時間ロスだ。
それに、俺は、洗濯はあんまり好んでしたい作業じゃないから、未夢に任せたほうがいいなと思っていたから。
「いいぞ。じゃあ、洗濯は未夢の担当な。あとは、朝飯作ってから決めよう。じゃあ、俺朝飯作るからワンニャーとルゥのことは頼んだ。」
「うん、ありがと。」
パタパタとルゥとワンニャーの部屋へ向かう未夢の足音を聞いて、袖を捲り上げた。ご飯は昨日のご飯当番だった未夢が炊いてくれているのがあるから、味噌汁と卵焼きを作るために。


ご飯が出来上がって、ワンニャーのためのおにぎりを持っていきながら未夢とルゥを呼びにいくと部屋から声が聞こえてきた。
「ルゥ君、今日はワンニャーの調子が悪いから、私と彷徨にいろいろお願いしてね。うーん、そうだ!ご飯のときとかオムツのときとか『どっちがいい?』って聞くから私か彷徨かどっちにしてほしいって言ってくれる?私と彷徨でルゥ君を取り合って喧嘩にならないように。ね?」
いいのかそれ?とは思ったものの、ワンニャーも特に反論していないしルゥもパチン、パチンと両手を合わせているようで喜んでいるならいいかと思って「ご飯できたぞ。」と声をかけた。
ワンニャーはおにぎりに感動した様子で、「これなら、私が横になっていても食べれますぅ。」なんて喜んでた。なんかしてほしいことあったら呼んでくれと通信機の片割れをワンニャーに渡してご飯を食べに先に行ってしまった未夢とルゥを追いかける。

「ルゥ君、ご飯どっちにしてほしい?」
早速さっきのを実行することにしたらしい未夢がきいていた。ルゥは、「マンマっ、パンパっ」と両方の名前を呼ぶ。やっぱりな。
「えっと、ルゥ君?」
困り顔の未夢に助け舟を出してやる。
「ルゥ、ご飯作ったのは俺だから、食べさせてくれるのは未夢な。それに、先に食べ終わったら俺がルゥの口に運ぶ。これで一緒だ。良いか?」
ルゥは、それを聞いてご機嫌だ。ご飯を指差して、パンパ、自分を指差してマンマと言ってる。本当に、赤ちゃんとは思えない賢さだ。


その後も、歯磨きをするときもオムツを替えるときも遊ぶときも「どっちが良い?」と未夢が聞くと、「マンマっ、パンパっ」と両方の名前を呼ぶ。結局、未夢はたずねること自体をやめて「皆でしようね。」と言っていた。
掃除に洗濯、ご飯を作って、時間は刻々と進むから2人で手分けして、そうやって家事を割り振っていった。そうこうしているうちに日も暮れて夕方だ。
別段何も困ることなく、2人で手分けして、家事をして一緒にルゥのことをする。特に問題もなかった。





最後の難関、お風呂を除いて。





「ルゥ君、どっちとお風呂に入る?」
こればっかりは聞かねばならないと、未夢も俺も思っていた。さすがに皆一緒に風呂に入るわけにはいかなかったから。みんなルゥと同じくらいの小さな子供だったらありえるだろうけれど、さすがに俺も未夢も中学2年生だ。さすがに一緒に風呂には入れない。
「パンパっ、マンマっ。」
「「う・・・、それはちょっと。」」
顔を見合わせて、苦笑する。いつもは、ワンニャーがお風呂に入るときに一緒に入れてくれてたから。その返事には、今回ばかりは困ってしまう。「ル?」とルゥだけは不思議そうにしてたけど、こればっかりは譲れない。
うーんと困っていると、打開策を思いついた。
多分、未夢に言ったら最初は驚くだろうなと思うと少し口元が緩んでしまう。
「あ、大丈夫だ。3人で入れる。」
「えぇ!?彷徨、ナニ言ってるの!!入れるわけないでしょ!!」
突拍子もないことを言い出した俺に未夢は頬を真っ赤にしてあわて始めた。まあ、3人で一緒に風呂になんて入れるわけないて思うよな普通。
でも、大丈夫なんだ。俺も未夢もルゥだけを入れることを考えてたらいいんだから。
「入れるだろ?俺と未夢が服着たままでルゥを風呂に入れればいい話なんだから。」
そういうと、未夢は『はっ』とした表情をしてた。多分、今頃、恥ずかしがったことを恥ずかしがっているんだろう。
「ああ、そういうことかぁ。」
「そういうこと。ナニ想像したのかなー。未夢ちゃん?」
わざとそう言ってやると、プイとそっぽをむいて「知らない。早く、ルゥ君お風呂に入れてあげなくちゃだめでしょ。私、タオル準備するから彷徨は着替え持ってきてね。」とやっぱり赤い頬のまま返された。



夜、眠るときもルゥが俺も未夢も一緒ががいいというものだから、居間に皆で布団を持ってきてワンニャーとルゥを真ん中に挟んで川の字+1で眠った。
結局のところ、ルゥは未夢と俺、一緒にしてくれとお願いしていて、まあ、正直どちらかを選べって赤ちゃんに言うほうがおかしかったんだ。
ルゥがスヤスヤ寝息を立て始めたころ、「ルゥ君、どっちにしてもらうのがいいかきいても私と彷徨どっちも呼んでたねぇ。どちらかを選んじゃったらけんかしちゃうと思ったのかな?」なんて未夢は言ってクスクス笑っていた。
でも、その後に続いた言葉がもっとおかしかった。
「あーでも、ルゥ君の名前は私も彷徨も同じだけ呼んだんだから、ルゥ君が1番名前を呼ばれたのかぁ。西遠寺の指名率ナンバーワンはルゥ君だね。それで、2等は私と彷徨。彷徨も学校だったら、ナンバーワンかもしれないけど。授業で当てられるだけじゃなくて、女の子にとか結構名前を呼ばれるからねー。学校では一番の彷徨も家ではルゥ君にはかなわないね。」
なんていうんだ。どこかの店じゃないんだから、指名率ってなんだよって思ったのだけど、あんまり未夢が嬉しそうに言うもんだから「そうかもな。」って返事を返しておいた。



でも、暗闇の中から腰痛もちのワンニャーが「ルゥちゃまが一等なのは嬉しいんですが・・・私のことをお忘れじゃないですか?未夢さん、彷徨さん。」ってちょっと涙混じりに言うものだから、「じゃあ、ワンニャーも俺たちと一緒で2等な。」って俺が返したら「まあ、それならいいです。私、有能ですから・・・えっへん。て、あいたた。」って言うもんだから、大丈夫か?なんていいながら3人で笑ってしまった。せっかく眠ったルゥを起こさないように声を潜めながら。






お題に挑戦させていただきました。
お題をお借りしたサイト様は以下のとおりです。ありがとうございました。

サイト名・時雨れ喫茶   管理人名・道野 木実 様
URL http://www.geocities.jp/tokisamechaya/index.html

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