作:あかり
西園寺の朝はものすごく忙しい。
「きゃー、寝坊しちゃった!!」
まず、少し離れた部屋から聞こえてくる未夢さんの悲鳴から朝のあわただしさは始まる。
本人は寝坊しちゃったと思っているようだけれど、毎日その時間が起床時間になってるといっても過言ではないと思う。
声を発してからものの5分で着替えたかと思うと、髪の毛を整えるのに15分くらいかけて「どうしよう、なんだか変な気がするよぅ。」と私からみたらどう変なのか分からないことで困っている。
最後は「しょうがない、ご飯食べなきゃ。」と言ってパタパタ走りながら居間にやってくる。
「あぁ、目が覚めた。」
未夢さんよりは少し早い時間に目を覚ましてはいる彷徨さん。
今日の準備の確認をし終わるくらいに未夢さんの声を聞いて目覚ましの洗顔をしにいく。
2人が洗面台でかち合わないように。最初のころは、よく一緒の時間に重なって口げんかを始めてしまい本当に遅刻すれすれになることが多かったから、気をつけているそうだ。
もっと早く顔を洗えば良いのにと言うと、「なんか、変なんだけどさ、あの声聞いてからじゃないとまだぼーっとしてるんだよ。もう一回顔洗うの、面倒じゃん。」と苦った顔をしながら話した。
多分、本人にしてみれば不本意なんだろう。「前はちゃんと起きれてたのになー。」と言っていた。
まあ、なにはともあれ、そうこうしているうちに2人はやってくるので、彷徨さんが洗面所に向かったらご飯を飯台に運ぶ。最後にきちんと風呂敷に包んだ2人のお弁当を飯台の端において準備完了だ。
そして、ルゥちゃまをお連れする。前に、寝ている間に2人が学校に言ってしまったときには、探しに外に出て行ってしまい大変だったから。3人で話し合って、朝ごはんを一緒に食べて2人にいってらっしゃいをルゥちゃまにしてもらうようにしたのだ。目の前から知らない間に2人が消えてしまったわけではなく、きちんと用事があって出かけて用が終わったら帰ってくるのだと分かっていただくために。
今のところ、1度未夢さんのかばんの中にまぎれてしまったとき以外は、2人が学校へいっても探しにいくようなことはない。さすが、私のルゥちゃまです。
「おはよう。ルゥ君、ワンニャー、彷徨。」
ルゥちゃまを子供用の緑の椅子に乗せると同時くらいにそんな風に朝の挨拶をしながらパタパタと未夢さんは忙しそうにやってくる。彷徨さんは準備を済ませて新聞に目をとおして全員がそろうのを待っている。未夢さんのあいさつに「おはよう」とかえして、新聞を脇に置く。皆が飯台について「いただきます」と手をそろえて言って朝ごはんをあわただしく食べる。男の子だからでしょう、彷徨さんが1番先に食べ終わって、それを追いかけるように未夢さんも食べ終わる。
歯磨きをして、身支度を整えて、彷徨さんが先に玄関について「未夢、はやくしないと置いていくぞ。あ、体操着も忘れんなよ。玄関にないぞ。」といつもの言葉を口にする。彷徨さんの委員会などの用事がなければ、必ず二人そろっていくのに、毎日その言葉を口にする。「今いくよー。体操服は・・・机だった。」返事をする未夢さんの言葉も後に続く単語を除いて毎日同じだ。
そのころにはミルクを飲み終わったルゥちゃまと一緒に玄関へ行く。
まず、彷徨さんが「ルゥ、ワンニャーと留守番頼むな。」と言ってルゥちゃまの頭をなでる。
後からやってきた未夢さんも「じゃあ、ルゥ君、ワンニャー行ってくるね。」と言ってやっぱりルゥちゃまの頭をなでる。二人になでてもらって、ご機嫌のルゥちゃまと一緒に、あわただしく駆けていく2人を「いってらっしゃいませ。」と言って見送る。
玄関の扉を静かに閉めて「あと10分早く起きてくだされば、こんなに忙しくないんですけどねぇ。」2人には多分もう聞こえてないだろうけど、ほぅと一息つきながら私はいつもと同じようにつぶやいた。
ここまでが、忙しい西遠寺の朝の始まりです。
本当に毎日毎日、なんて忙しいのでしょう。
願わくば、どうか私の愛すべきルゥちゃまはこれだけはお二人の真似をしませんように。
お題に挑戦させていただきました。
お題をお借りしたサイト様は以下のとおりです。ありがとうございました。
サイト名・時雨れ喫茶 管理人名・道野 木実 様
URL http://www.geocities.jp/tokisamechaya/index.html