作:あかり
苦手なことはたっくさんある。でも、色んなことをあきらめたくないし頑張るつもり。だって、いつだってあきれながらも応援してくれるから。いっつも意地悪なことをいうけれど、それでも最後には頑張ったって認めてくれる人がいるから、その人のためにも頑張りたいから。
そう、なんていうかそれだけで頑張れちゃう。
「ね、彷徨どうかなぁ?」
「今度はカボチャのタルトか?」
「うん。だって、彷徨カボチャ好きでしょ。だから、もっとレパートリー増やしたくて。今度は、お菓子も挑戦したいなって。どうかなぁ?」
「・・・そっか、サンキュ。いただきます。」
一瞬返事に詰まったような顔だったのは、少し焦がしてしまったからかもしれない。はしっこが焦げてしまったタルト。おいしいものをあげたかったから焦げてるところをちょっとずつとったけど、その分不恰好になってしまった形。それでも、大事そうに食べてくれる。それが嬉しい。だから、彷徨が食べている間の沈黙はちょっぴり緊張もするけど、大事な時間に思える。
「今日は砂糖と塩間違えなかったみたいだな。」
にやって笑って、食べ終わった後に一言。その顔はやっぱり意地悪。でも、最近分かってきた。意地悪を言うときも、口がすこーしあがってる。それに、目も優しいってこと。
「意地悪。」
「ごめん。ちょっと、言いたくなったんだ。うまかったよ。甘さも俺の好みだった。はしっこはちょっと苦かったけどな。また、作ってくれな。」
髪の毛をクシャリとなでて告げられる言葉はどこまでも優しい。にこりと笑って告げられるその言葉とか、表情だけで胸の奥がキュッとなる。きっと、彷徨は気付いてないと思うけど。私はそのたびに、彷徨のことが好きなんだって思い知る。
「また作るね。」
笑顔でそう返すのが精一杯。
でも、「また」って言ってくれたから次も頑張れる。苦手な料理だって、彷徨のためだったら頑張れる。
急にグイと大きな力に引き寄せられて、暖かなものに包まれる。
くすぐったいなと思ったのは一瞬で、首の後ろに熱いものが触れる。「なんだっけ?」と思って、思い当たって首筋から全身に熱さが広がる。
突然の襲撃にびっくりして、ぐいと両手で目の前の壁を押して距離をとる。恥ずかしくて「何するの!!」って言ったら、彷徨は涼しそうな顔をしていて。「嬉しかったから、お礼しただけだよ。」なんてひどく嬉しそうに言う。
もう本当に、たちが悪い。
あんまりにもびっくりして言い返せないでいたら、「足りない?俺は、そのほうが嬉しいけど。」なんて言って近くなる距離に「もう十分。」って言って後ずさる。
「残念。」なんてつぶやかれて、おろされた手に少しほっとする。いつだって、急に触れてくるから心臓に悪くて仕方ない。
手をつないで歩いたり、急に抱きしめたり、付き合うことになってからの彷徨の行動はびっくりすることが多くて、私はいつだって心臓が壊れそうなくらいドキドキさせられっぱなしだ。今だってほら、「びっくりさせて悪かった。」なんていって頭を撫でてる。「仲直り、な?」そう言って揺らされる繋がれた手。
コクンとうなずけば、嬉しそうなほっとしたような笑顔が見えて。
「じゃあ、お茶にしようか。未夢が作ってくれたタルトあるしな。」
「うん。コーヒー煎れるね。」
甘い言葉に、触れる指。
これだけは慣れることが出来そうにない。
お題に挑戦させていただきました。
【猫かわいがり】5のお題 『だって可愛くて仕方ない』
蛇足になりますが・・・。
2.愛の無条件降伏でもOKですと一緒に書かれていたのがこのお話の題にもなっている「愛の無条件克服」でした。
降伏を書いた後に、こちらは未夢に合うなぁと思って、こちらも書かせていただきました。
5つのお題とのことでしたので、こちらは、「´」を題名につけています。
お題サイト様以下のとおりです。ありがとうございました。
管理人:藍花
サイト名:starry-tales
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