サークル

   [ Y ]

作:紅龍

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〔 ご来場のお客様にお知らせいたします。午後3時より中庭にてダンスパーティーを
 開催いたします。
 各クラス、各種思考を凝らした衣装となっておりますので、ぜひお集まりください。 〕

開催時刻の迫っている放送が聞こえると、
女生徒や一般の女性客でいっぱいになっていた被服室もだんだんと空いていった。


「・・・よーし完成!」

「こっちもできたよ〜。さぁ、ななみちゃん。私達も準備終わらせちゃおv」


ブラシを片手にななみが満足そうに鏡を見つめる。
机を挟んで正面からは綾がマニキュアの瓶のふたを閉めながら立ち上がる。


「ねぇ、ちょっとやり過ぎじゃないかなぁ〜。」


二人の間で椅子に座らせられていた未夢が
綾に塗られた指先を見ながら動けずにいる。


「なーに言ってんの。ほとんど透明だから近くで見ないと分かんないって。」

「あ、でも西遠寺くんにはよく見えるかもね〜」

「綾ちゃん、ななみちゃん!そういうことじゃなくって・・・」


普段しない格好や髪形にマニキュアまで塗られてどうにも落ち着かない。
押しの強い友人たちに連れられて気が付けばこの状態。

左上にアップにまとめられた髪。
ところどころ三つ編みされて、頭を動かすたびに揺れる。
ひざ丈のドレスは柔らかい白のワンピース型。
腰の大きなリボンと首に巻かれたチョーカーがお揃いになっていた。


「私も裾の長いドレスでよかったのに・・・」

「ダメダメ。未夢ちゃんには動きやすい衣装じゃなきゃ」

「そうそう。未夢にはそのドレスが一番似合ってるよ」


当の友人たちは未夢のドレスアップを優先させ、今から自分たちの準備を終わらせる。
普段から演劇などでこの手の衣装を着なれている二人には残り時間で十分なのだ。


「さ、出来たよ〜。いざ参る!」

「ななみちゃん、男らしいよ・・・」


準備を終え、ななみを先頭に被服室を後にし、中庭へと向かった。



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「おーすっごい人!こりゃ宣伝しすぎたんじゃない?」

「踊るスペースすらない感じだねぇ」


中庭いっぱいの人だかりで、ダンスフロアというよりセール会場のようなありさま。
ななみも綾もさすがにここまでとは予想していなかった。


 〔 ご来場のお客様にご連絡いたします。
   中庭でのダンスパーティの開催時刻が迫っております。なお、会場内
   だいぶ込み合っておりますので、御観覧、ご休憩のお客様は校舎内、
   各教室へのご移動をお願い致します。 〕


校内放送にしたがって校舎内に入って行く人や、あわてて会場入りする人。
未夢達はその波に流されないよう、中庭中央にある小さな簡易ステージの近くにいた。
そのステージに校舎から三人が歩いてくる。


「ほらほら、未夢ちゃんみて。水野先生達が来たよ。」

「あの二人ノリノリですなぁ。」

「後ろの西遠寺君はなんかキョロキョロしてるね?緊張してるのかな?」


周りからの歓声に答えながら、まるで本物の王族のよう歩いてくる水野とクリスの後ろには
いつも通りのポーカーフェイスで彷徨が付き添う。
時折、人ごみの中を見渡すように歩きながら。

クリスを真ん中に、三人がぎりぎりのスペースの小さなステージに立つ。


『 ご来場に皆様。本日はダンスパーティin四中文化祭にお越しくださいまして
  誠にありがとうございます。一時間という短い時間ですが、どうぞ楽しんでくださいませ。 』


クリスの挨拶とともに、スピーカーからはどこかで聞いたことのある曲が流れだした。
挨拶が終わった三人は校舎に引き上げて行き、集まった人々は徐々に曲にのりだした。


「あ、トリ・・・」

「そう。うちのクラスこのダンスの担当だから、黒須君が張り切っちゃって。」

「でも、ノリは確かにいいよね。」


すでに曲にノリ始めている綾とななみに挟まれ、未夢も体を揺らし始める。


 (この曲ルゥくんも好きだったよね)


以前、学校に連れてきた時に、この曲を聴いてご機嫌だった、小さな赤ん坊のルゥ。
忘れた事は一度もないけど、いつも以上に鮮明な思い出が胸いっぱいに広がる。
未夢は思わず涙ぐみそうになり、そっと顔を伏せた。


ふと、楽しそうなルゥの笑い声が聞こえた気がした。


声のした方へ顔を上げると、人混みの向こうから自分を見つめる琥珀色の瞳があった。











あれ?年が変わってしまいました。 orz

更新がかなりスローペースになってしまった紅龍です。

なかなか言葉がスムーズに出てこなくて、書いては消し、書いては消しの繰り返し・・・。

それでも完結目指して、書き続けます!

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