作:紅龍
彷徨は実行委員会の確認事項や当番の引き継ぎを終え、
その後クラスの出し物の最終確認、クリスや女生徒達からの逃亡などに追われていた。
「西遠寺先輩、一緒にまわりませんか?」
「わるい。ちょっと急ぐから。」
「彷徨君、もしよろしければイベントまでのお時間、
ご一緒させていただいてもよろしいですか?」
「ごめん、ちょっと用事があるから。イベントには戻ってくるから」
気持は一刻も早く未夢のもとへと行きたいのに。
キレそうになるクリスを宥め、しつこい後輩を追い返し、彷徨は学校中をまわった。
天地たちと一緒って事は食いもん関係か?とあたりをつけながら。
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「そうだ!未夢、3時からのダンスパーティ用に着替えなきゃ」
非常階段での昼食が終わった3人は、おやつを求めに校内をめぐり、
ちょっと休憩と自分のクラスまで戻ってきていた。
さすがに来客スペースに座るわけにいかなかったので、
裏に用意している休憩所に陣取っている。
2年のクラスで買ってきたドーナツを食べていたななみが、時計を見るなり叫び出した。
「そうだよ、未夢ちゃん。もう30分しかないよ」
綾もあわてて残りのドーナツを口にほおり込む。
「ダンスパーティって中庭でするって言ってた?いいよ、私ダンスとか知らないし」
「大丈夫。ようは仮装パーティよ。」
「さっき見た時、うちのクラスみたいに宣伝しようとフェイスペインティングをするクラスもあったし、
お面を配るクラスもあったよ。よく準備間に合ったよね。」
「でも〜」
「はいはい、早く行かなきゃいいドレスなくなっちゃうよ〜」
「ちょ、ちょっと〜・・・」
いきなりの提案に驚いた未夢をよそに、
綾とななみはどのドレスを着せようかと話し合っている。
こうなっては止まらなくなる親友達から逃れようとこっそり逃げ出そうとした未夢だったが、
あっけなく捕まり、衣裳部屋となっている家庭科被服室まで連行されていった。
「おーい、光月さ〜ん。・・・あれ?光月さんたちどこに行った?」
表の接客を担当していた三太だったが、客同士の会話からなじみ深い名前が出てきた為
事実確認をしようと裏まで戻ってきたのだが、当人達は一足違いで教室から出ていた。
「なんか天地さんと小西さんに連れ去られたぽかったけど?」
「ちぇ、せっかくネタ仕入れてきたから裏を取ろうと思ったのに・・・。まぁ今さらのネタだけど」
気になる事は即確認しないと気が済まない三太だったが相手がいないのでは仕方がないと
諦めかけていると、後方から三太の一言を聞きつけた者が声をかける。
「何が今さらなんだ?」
「あぁ、彷徨が彼女を作ったって。この学校の生徒じゃないらしいとか、
すごいのがすでに夫婦らしいとか噂になってて、今日急に広まった噂だから、
たぶん光月さんの事かな・・・・って彷徨 !? お前いつから」
仕入れてきたばかりのネタを誰かに話したくてしょうがなかった三太は、
声の主が誰なのかを確認せずにしゃべりだし、
振り返った先にジトッと睨みつける彷徨と目が合った。
「今きた。・・・三太、その噂どっからもってきた。」
呆れ混じりの声で聞いてみれば、悪びれもせずに答えた。
「へ?もうほとんどの生徒が知ってるんじゃないかな?
なんか1年の女子達がうわさの奥さんを探すんだって躍起になって聞いて回ってたから」
彷徨は思わず頭を抱えながらため息をつき、全身から力が抜けそうになる。
( 会いたいのを我慢までして人がまじめに仕事をして・・・未夢を探して教室まで戻ってみれば、
人の事好き勝手言いやがって。だれが奥さんだ、まだ・・・。)
そこまで考えてふと、三太のセリフが引っ掛かった。
「で、三太。結局、何が今さらなんだ?」
噂の内容では当てはまる部分が見つからないのでもう一度同じ質問をしてみる。
「いやぁ、彷徨が彼女にするなら光月さん以外にありえないし、主に1年生に噂されてるから、
光月さんを知らない子たちって事だろ。二人でいるところを知ってる2、3年なら
わざわざ噂するまでもないしな。ましてや中学生なのに夫婦って言われるほどなんて
光月さんぐらいだし、今さら裏を取るまでもなかったかなぁなんて・・・どうした?彷徨」
彷徨は頭を抱えて座り込んでいた。
聞いていれば、それは自分の気持ちが周囲にはバレバレだったという事。
しかも交際中のごとく認知されていたってことになる。それも全校レベルで。
たしかに2、3年の女子から交際を申し込まれるのはなくなっていた。
あいかわらず、きゃあきゃあとグループでは騒いでいたようだが。
「・・・もういい。それより未夢は来てないのか?」
項垂れたまま本来の目的を果たす為に噂になっている相方を探す。
「あぁ、さっきまで居たんだけど、また出ちゃったみたいだな。
それより彷徨〜、おまえどーすんだよ。噂だけが先にいってるぜ〜」
項垂れた彷徨の表情が見えない三太は、彷徨の首に腕をまわし心配そうに覗き込む。
小さい頃からの親友は自分の気持ちを表に出す事があまり得意ではない。
時々こうやって自分がきっかけを作らなければと、からかい口調ではっぱをかける。
「・・・噂だけじゃない・・・」
「え?」
隣にいる三太だけに聞こえるぐらいの声で噂を肯定し、スッと立ち上がる。
その顔は少し赤くなっており、口元を手で隠しているが緩んでいるのがわかる。
「もうイベントの時間か。じゃあな三太。クラス任せたぞ」
教室の時計を確認し早口に言って彷徨は廊下へと飛び出していた。
あとには呆然と座り込む三太を残して。
やっぱり、親友たちにはすぐばれますわ・・・
目指せ完結!
お読みいただきましたみなしゃん、もう少々お付き合いを
よろすぃくおねがいします。