空には輝くばかりの星が輝いている。
私はこの空に、この星に誓う。
お互いがそれぞれの道を歩んでも、私はあなたのそばにいると。
あなたを見守っていると。
瞬くこの空の、この星に・・・・。
空に輝く星のように、私にとってあなたは一つの輝ける星。
これからは私が守る・・・・。守ってく。
あなたを、あなたとのこの幸せを。
”あの頃”のように。
ここは地球から遠く、遠く離れた一つの星。
地球に比べて、何の汚れもない、美しい星だった。
この星は地球よりずっと科学の進歩が進んでいた。全体的に美しくレイアウトされた建物に、環境に優しく、安定した強い素材が使われている建物が星全体に広がっている。
なにせ、赤ちゃんが浮いているのが当たり前の星。UFO型の乳母車が飛んでいて当たり前。なおかつ、それを押している猫と犬がミックスされたような動物がいて当たり前の星。。
そう、この星から物語は始まった。そして、今回もここから新たなストーリーが刻まれる・・・。
「ワンニャー、ただいまぁ〜」
「ルゥちゃま、お帰りなさいませ。」
ここは、地球から遠く離れた、オット星にある小さな街の可愛い一軒家。金色の綺麗な髪の男の子が目を嬉しそうにキラキラさせながら、家に帰ってきたところらしい。年は8歳くらい。それを、この星ではおなじみのシッターペット(子供が大きくなると、お世話係に昇格)であるワンニャーが顔をにこにこさせながら迎える。猫のような耳と髭に、犬のようなふさふさした毛と大きなキラキラした瞳が特徴の愛らしいペットでもあるが。。
「ルゥちゃま、プラネタリウムは如何でしたか?」
ルゥは、学校の社会科見学で、プラネタリウムに行っていた。と言っても、地球のとは違う、立体映像で、迫力も、見える星の範囲も段違いなのだが。。それにしても、ルゥは、誰よりも星を見るのが好きならしかった。毎晩、誕生日にパパとママから贈られた望遠鏡を夢中で覗き込んでいる姿がワンニャーには微笑ましかった。と同時に、地球にいる未夢と彷徨のことを、無意識に求めているのでは?とも感じられて、切なく、寂しい気持ちに駆られていた。
「うん、とっても楽しかった。僕が以前、飛ばされた、”地球”も見えたよ。じっさいはすっごく遠いんだよね。。」
(会いたいな、地球のパパとママに・・・。)
ワンニャーにはそう聞こえたようにも感じられた。
「そうですね。地球は本当に遠い、遠い星です・・・・。」
ワンニャーは今でも信じられなかった。自分とルゥが気が遠くなるほど、遠い、遠い地球に自分達が飛ばされたこと。宇宙人である自分達を温かく迎えてくれた未夢と彷徨のこと。まるで本当の家族のように過ごした日々。。。思えばもうあれから8年の年月が流れている。そして、ルゥも自分もルゥのパパとママも忙しいながらも、幸せな毎日を送っている。
(こんな風にオット星で、幸せな毎日が送れるのもお二人のお陰ですね。。)
「そう言えば、お二人は今頃どうされているんでしょうかねえ。」
ワンニャーはしみじみ考え込んでしまった。
そのとき、ピピピと小型通信機のなる音がした。
「ワンニャー、何だか通信機が反応しているみたいだよ。僕見てみるね。えっと、このボタンを押すんだよね。」
いつものように、自分の妄想にすっかり浸りきっているワンニャーには、ルゥの呼ぶ声は届かなかった。好奇心旺盛のルゥは、ワンニャーの通信機をものの見事に操り、通信回線を開いた。その通信は、ルゥにとっては特に驚くべきものだった。
**ルゥくん、ワンニャーへ**
ルゥくん、ワンニャー、お元気ですか?未夢です。(通信、届いているといいのですが。。。)ワンニャーが餞別に、と置いていってくれた通信機から、オット星に向けて通信しています。
私も彷徨も、とっても元気です。彷徨は相変わらずだし、毎日喧嘩ばかりだけど。
2人がオット星に帰って、早いもので、もう4年になります。何だか長いようで、短い4年だったなあという気がします。当たり前だった2人の存在が、当たり前でなくなって、寂しかった頃のことを思うと、何だか懐かしい気もします。(あっ、今でも寂しいのは同じだよ。)
何か、これ書いてたら、無性に会いたくなっちゃった・・・・。会いに行けたらいいのにな。(急にごめん。)では、また通信するね。2人が幸せな毎日が送れることを、遠い宇宙から祈っています。
未夢
*****
ルゥは、興奮して画面を見つめていた。これが、自分を地球で育ててくれた母親が自分達のために送ってくれた通信。。。どこか懐かしいような言葉。いつもワンニャーが聞かせてくれた地球のパパとママの話。。幼き頃の未夢のイメージが蘇りつつある瞬間だった。何だか、未夢が自分に本当に呼びかけてくれているような気分になった。
(ルゥくん???)
(・・・・・ママ??)
「ルゥちゃま、ルゥちゃま」
ワンニャーがルゥを必死に呼びかけている。ようやく妄想状態から正気に戻ったようだ。
「???ワンニャー?」
ルゥも正気に戻ったのか、ワンニャーの声に気づき、はっとする。
「ルゥちゃま、どうされたんですか?あっ・・通信機に反応が・・・勝手にいじったらダメですよ。いつも申し上げているように、このような機械のたぐいは、どのような反応を起こすか分かりません。以前のように、地球に飛ばされるなんてこともあるかもしれないんですよ。今は、時空のひずみを操る装置が完成して、心配ないとはいえ、どんなことが起こるか分からないんですから。。今だって。。」
ワンニャーが珍しく真剣な顔をしてルゥを叱る。
「・・・・ごめんワンニャー。」
ルゥは珍しくシュンとした様子で頭を下げた。
「いえ、すみません。私も言い過ぎました。。どうもこの手のことになると過剰になりすぎてしまって。。そもそも私の不注意ですから。少し最近疲れていたのかもしれません。」
ワンニャーの頭をルゥが優しく撫でる。
「いいよ、僕が悪いんだから。それよりさあ、これ見てよ。この通信、誰からだと思う?」
「・・・・これは・・・・・。」
ワンニャーはあまりに驚いて、目を丸くした。
*****
「ルゥちゃま、これは未夢さんからの通信じゃないですか!
あんな遠い星から通信が届くなんて、本当に奇跡です〜」
ワンニャーはさっき怒ったかと思うと、今度は目に嬉し涙を浮かべている。
「これって、やっぱり地球のママからの通信なんだよね。」
ルゥは目を輝かせながら聞いた。
「そうですよ。今の私達があるのは、地球のママとパパである、未夢さん、彷徨さんのおかげです。」
「ワンニャーがいつも僕に話してくれたよね。地球とパパとママの話。僕達が地球でどのような毎日を過ごしたのか・・・。パパとママが居たからこそ、僕達は無事にオット星まで帰ってこられたって。・・・・いつか会ってみたいなあ・・・。僕、こんなに大きくなったんだよって。」
「・・・ルゥちゃま・・・」
ルゥの寂しそうな顔がワンニャーの心に痛いほど伝わってきた。
会いたいけど、会えない、そんなもどかしい想いが・・・。
「・・・・ところでさあ、前から聞いてみたかったんだけど。」
「なんですか?未夢さんと彷徨さんのことなら、何でもお聞きになって下さい。」
ワンニャーは得意そうに胸をポンと叩く。
「地球のパパとママってさあ、僕のパパとママみたいに結婚してたの?」
「・・・・・ルゥちゃま・・・・そのようなこと、どこで覚えられたんですか?」
ワンニャーは予想外のルゥの言葉に目を丸くしている。
「結婚ぐらい、みんな知ってるよ。それより、ねえ、どうなの?」
「・・・結婚はされていなかったと思いますよ。」
ワンニャーは思わず言葉を濁した。さすがのワンニャーも、未夢と彷徨は結婚はしていない関係であることはもちろん、未夢が居候の身だと言うことも知っている。でも、あと一歩で相思相愛になるような関係であったことは間違えない。。そう考えると、2人があれからどうなったのか、気になってきてしまった。。
「・・・・ふ〜ん・・・・。」
ルゥは顔をにやにやさせて、ワンニャーをじっと見た。
「そんなこと言ってると、ワンニャーがこっそりへそくりしてるの、パパとママにばらしちゃうぞ。」
「ふえ〜ん、ルゥちゃま、どうかそれだけはご勘弁下さいな。。」
ワンニャーが泣きそうな顔をしてルゥに訴えかけている。ルゥはこんなワンニャーが愛らしくてたまらなくなって、ついつい頭を撫でたりしてしまう。。
「冗談だよ。でも本当のところはどうなの?」
ワンニャーは、ルゥの世話をしてきた8年の間、子守歌のようにルゥに、自分とルゥが体験した、地球での出来事を話して聴かせていた。ただ、未夢と彷徨の関係については詳しくは触れていなかった。ルゥの中のパパとママという強いイメージを壊したくなかったから。だけど、もう本当のことを話さなければならない時期に来ていると確信した。
「実は・・・・。」
ワンニャーは、未夢と彷徨が赤の他人で、未夢が居候の身で、2人の両親が夢を追いかけて外国に行ってしまったこと、その中で、自分達の居候を受け入れてくれたこと。ルゥをパパとママの代わりをして育ててくれたということ、バラバラだった関係が、ルゥによって次第に無くてはならない絆に変わっていったことなどすべてを打ち明けた。また、ルゥの年齢ではすべてが理解出来ないことも多かったが、ルゥは身を乗り出して一生懸命聴いていた。
「ふ〜ん、そんなことがあったんだ。僕、赤ちゃんだったから覚えていないのが寂しいな。で・・・・パパとママがその後どうなったのか、気にならない?」
ルゥは、さっきのように、にやっとして、ワンニャーの顔を見る。
「そ・そうですね。」
ワンニャーも何か企んだような顔をした。
*****
ルゥの両親は発明家だった。ここ最近は、いつも研究室にこもり、実験に明け暮れている。ワンニャーの話によれば、新しい発明が完成しそうということだった。ルゥとワンニャーは、自宅の地下に創られている研究室に忍び込んだ。幸い、研究室には、誰もいなかった。ルゥのパパとママは発明が完成して、大学の研究発表にでも出かけたのだろうか?妙にガラリとしていた。
そして、ルゥの両親が研究に加わったと言う、時空の歪み発生・コントロール装置を持ち出した。”時空の歪み発生・コントロール装置”(通称時空ステッキ)は、その何の通り、ステッキのような形をしていた。傘のように開くと時空の歪みを発生されることが出来るというしくみになっている。コントロールには、持ち手についている液晶画面を使う。
2人はさっそく出かける準備をした。身の周りのものを整理して、お気に入りのリュックに詰めた。そして、最後に2人で悪戦苦闘?して書いたルゥの両親に宛てた置き手紙。
「これで準備万端だね。」
「ルゥちゃま、さっそく出発しますよ。心の準備はいかがですか?」
「万事OK!」
「それじゃあいきますよ。それっと」
ワンニャーは時空ステッキの傘を広げた。液晶画面を操作し、場所と時間を慎重に操作する。すると、時空の歪みが2人を覆うようにして包み込んだ。そして、遙か彼方の地球へと運んでいった。
「パパ、ママ、待っててね。今、会いに行くよ。」
「久しぶりに地球のみたらし団子が食べられるんですねぇ。。」
(早く会いたい)
ルゥの心は、そんな気持ちでいっぱいだった。それが、ドタバタ生活の始まりになるとも知らずに・・・。
そんな中、ワンニャーの手の中の通信機がキラキラ光っていた。
*****
「未夢、お前、何やってんだ?」
引っ越し屋と一緒に、忙しそうに荷物を部屋に運び込んでいた彷徨は、未夢が、”居間”になるはずの部屋で、何かモバイルのようなものを、一生懸命、いじっているのに気が付いた。
「あ・・・彷徨? ちょっと、ワンニャーが置いていった通信機を動かしてるんだけど、なかなかうまくいかなくて。」
「ちょっと貸して見ろよ、えっと、こうして、こうすれば・・・・。おっ動いた動いた。」
「さっすがぁ〜。と、さっそくメッセージ送らなくちゃ」
未夢は一生懸命メッセージを打ち込んでいる。
「ところでさ、何で急にそんなもん、いじってんだ。」
彷徨は、不思議そうな顔をして、未夢の方を見ていた。
「久しぶりに、連絡とれるかな・・・と思って。何か急に2人のことが恋しくなっちゃって」
未夢は引っ越しの整理のときに、アルバムを見つけたこと、それを見て、何だか無性に2人に会いたい気持ちが強くなったことを話した。
「あれから4年だもんな・・・。でもさぁ、その通信が届く確率って、ものすげー低いんじゃなかったのか?」
「うん。でもね、その何百分の確率で、通信が届いたら、またルゥくん達に会える気がして。」
「そうだな。」
未夢は、満面の笑みを浮かべて見せた。それに答えるかのように、彷徨もにっこり笑った。未夢は、そんな彼の笑顔が眩しくて、顔が次第に赤面していくのが分かった。
「・・・・。ところでさ・・・良かったのか? 」
「何が?」
「・・・結婚。」
「いいの。」
「お義父さんやお義母さんと喧嘩別れしたままでいいのか?」
「いいの。大体、両親にも場所を知らせずに家を出ようって言ったの、彷徨じゃない。」
「あれはだな・・・・その・・俺にも意地ってもんがあるからな。」
「それを言うなら私だって意地があるんだから。何が何でも2人だけで子供を育ててやる!」
未夢は力強く、右手を振りかざした。そして、左手で彷徨の手をぎゅっと握った。
「これからが勝負だな。」
「うん。」
彷徨は未夢を自分の方に抱き寄せた。そして顔を近づけると、軽く短めのキスをした。
「それにしても大変だったな・・・。」
「そうだね。」
未夢と彷徨は軽くため息をついた。
あれから一週間。クリスマスとともに、2人の新しい生活が始まろうとしていた。2人にとって、この一週間は、思い出しただけでため息が出るほどの、波乱に満ちたものだった。
*****
”あの日”から2日後のこと。。。
「「「け・・・結婚??」」」
3人の声が同時に発せられた。突然、呼び寄せられただけでも驚きなのに、自分の娘と息子にこのような報告を受けることになろうとは、夢にも思わなかったからだ。。
「未夢・・・結婚っていったい?? 婚約は許したけど、どうしてこんな突然・・・あなたたちまだ学生でしょ。」
心配そうに未夢の母、未来が尋ねる。未来の横では父・優がすでに失神している。さすがの宝晶も度肝を抜かれているというような状況だった。
「ママ、心配かけてごめん。あのね・・・私・・・・」
「未夢?」
未夢の横では、彷徨がいつになく、真剣な眼差しをしている。
「・・・・お腹に子供がいるの。おととい・・・検査に行ったの。・・・3ヶ月だって。」
「「「こ・・・子供??」」」
再び3人の声が重なる。
未夢と彷徨はお互いの手をぎゅっと握りしめている。
「俺達、結婚して、西園寺を出るつもりです。これは、2人で決めたことなんです。確かに、まだ俺達は自立していない子供かもしれません。でもこのままではダメだと思うんです。親になる俺達がしっかりしていなければ、子供を育てることなんて出来ませんから。」
「2人の気持ちは分かるけど、僕は賛成出来ない。」
突如、正気に戻った優が、真剣な目で、未夢・彷徨を見据える。
「パパ!!」
「未夢には僕達と同じ想いはさせたくない。僕達も学生結婚で、未夢が生まれて、ずいぶん苦労した。未夢に寂しい想いをさせてばかりいた。君たちは、親として、子供に寂しい想いをさせることは許されない。君たちはまだ、子供だよ。僕はその責任が十分果たせるとは思えない。」
「未夢・・・ママもパパと同じ考えよ。お願い。もう一度考え直して、冷静になって。何も2人の結婚を反対しているわけじゃないんだから。もう少し大人になってからでも遅くないのよ。確かに好きな人の子供を産む、とても大切なことよ。私もそれが夢だった。だけど・・・ママは未夢に・・・・・」
そこまで言うと、未来は泣き出してしまった。
「・・・・・ママ、本当にごめん。でもね。。。私、決めたの。彷徨とこの子と、一生懸命生きていくって。だからどんなに反対されても、これだけは譲れないの。」
「お義父さん、お義母さん、突然こんなことになってすみません。だけど。俺達、もう一歩を踏み出さなければならないんです。夢のために、子供のために。」
「そこまでいうのなら、やってみたらどうかの。未夢さん、彷徨。」
今まで黙ったまま、一連のやりとりを聴いていた宝晶が初めて口を開いた。
「親父・・・。」
「お義父さん。。。」
優がすかさず反論する。
「宝晶さん、まだ自立も出来ていない2人を結婚させて、親として、それで見過ごせるんですか?彷徨くんの将来だって・・・僕は絶対に許せない。」
宝晶がゆっくりと口を開く。
「お二人の気持ちは痛いほど分かります。大切なものを失うことほど悲しいことはない。そして、人間は自分の大切なものがどんなことがあっても傷ついて欲しくないと心の底から願っている。だけど、そこから一歩踏み出せなければ、人間は成長しない。そうではありませんか?」
優は反論出来ずに口ごもってしまった。未来はまだ優の横で泣いている。しばらく沈黙が続いた。
ーバン
静止状態を破ったのは未夢だった。叩いたテーブルの音が、大きく響く。
「もういい。・・・もういいよ。分かってもらえなくてもいい。私は・・・・私達はそれでもいいと思ってる。私は自分の思った通りの道を進むから。誰にも反対させない、自分だけの道。。」
そうつぶやくと、ピシャリと響くような音を立ててふすまを開けると、その勢いで部屋を出ていった。
「おいっ・・・未夢」
彷徨は、未来と優の方を向くと、丁寧に会釈をして、足早に部屋を後にした。
部屋には空しい雰囲気だけが残った。外は、空が突然雲に覆われ、雷が鳴ったかと思うと、大粒の雨が降り出した。その雨は、まるで、このときの優と未来の心、そのものだった。
*****
「あれからが大変だったよなあ。お前、宛てもなく出ていこうとするから。」
彷徨は少し意地悪そうな言い方をする。
「あのときは私も必死だったんだからね。」
未夢は少し膨れた顔を見せる。
「分かってるよ。俺も必死だったからな。」
未夢は思わずくすっと笑ってしまった。
(何だか、彷徨らしくない・・・・彷徨が”必死”だなんて・・)
「何だよ〜」
「ううん、何でもないの。」
結局、それから二日後、彷徨と未夢は、中学校時代の友人で、今をときめく漫才コンビ、世界一周旅行から帰ってきたばかりの三太と望が以前使っていたマンションを借りた。(これも2人の”コネ”が、功を奏してのことだった。)そして、両親に場所も告げずに引っ越しを完了させたのだった。まさに、ドタバタの一週間だった。
「・・・・もうすぐ、クリスマスだね。」
「そうだな。」
「何だか緊張するね。。」
「・・・・俺も。」
実は、2人はまだ籍を入れていなかった。クリスマス=彷徨の誕生日に入れるつもりだからだ。2人にとって、結婚とクリスマスの二文字が同時に近づいてきているようで、気が気じゃなかった。
「とりあえず、残りを片づけちまうか。」
「うん。」
マンションには、殆ど必要なものが揃っていた。だから、引っ越しと言っても、自分達が持ってきた家具を運び入れるくらいで済んでしまったので、引っ越し屋はとっくに帰ってしまっていた。ただ、部屋の中には片づいていない小物が散乱していた。
「おい、未夢、お前の荷物、お前の部屋のクローゼットのところに置いとくからな。」
「うん、ありがと。そうそう、ついでにクローゼットにものが入ったままになっていないかどうか、確認しといて。」
「了解。」
そう答えたと同時に、クローゼットのふたを、手前に引いた。すると、部屋の空間全体が異様な雰囲気に包まれた。
「・・・・これは一体??」
彷徨は思わず後ずさりした。
「彷徨〜どうだった?何か入ってた?その部屋、衣装部屋だったんけど、三太くんに詳しくきいてなかったから。」
彷徨からの返事がないのに気が付くと、未夢は何かあったんだろうかと思い、部屋に向かった。そして、ドアを開けると、部屋全体が、何かに支配されているように感じた。
「彷徨?」
自分の腕が、何かに捕まれた。思わず、振り向くと、彷徨が真剣な顔をして自分の腕を掴んでいる。
「未夢、この雰囲気、前にも感じたことないか?」
「ルゥのUFOが本道に出現したときみたいな。。。」
「・・・・・」
「「時空の歪み!!」」
2人は思いついたように声を揃えた。
「ピンポーン。正解で〜す。」
どこからか、声がする。と同時に部屋を包み込んでいた、異様な雰囲気がしだいに無くなりつつあった。まるで、自分達を吸い込むばかりの強い風もしだいに弱まってきた。
「パパ、ママ、ただいま。」
2人の前に、8歳くらいの金髪の男の子が顔を出して、ニッコリ笑っている。胸には見覚えのあるバッチを付けている。
「パパぁ???」
「ママぁ???」
「「何だって???」」
2人は思わず、その場に立ち尽くすしかなかった。突然の訪問者が、何だか、これからスタートする、ドタバタ生活の始まりを前兆しているようだった。
("銀の指輪を好きな男の子から貰えると幸せになれるジンクス”)
もう少しであなたと一歩が踏み出せる。
私とあなたの空と星が見つけられる。
私とあなたの夢が見つけられる。
この空に、この星に、
あなたと巡り会えた奇跡、大切にしたい。
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