作:聖 叶都
連載・第2話 未夢視点
ずっと…わかってたはずなの。
ルゥくんとか、ワンニャーがいるときから。
「パンパ」「マンマ」なんて言われて、ちょっと嬉しくなってたけど。
いつも彷徨の心にはあの子がいて…。
あの子も…とてもつらいだろうな…って…。
好きな人が、自分に秘密で、いきなり女の子と暮らしてるんだもん。
赤ちゃんから「パパ」「ママ」なんて言われてさ。
でも、もうその必要も無くなって…。私のパパとママも帰って来て。
そうだよね。もう私が傍に居ていい理由なんて無いんだよね?
分かってるの。
でも……。
夕暮れを歩く。平尾町は今日も平和だ。
西園寺までの階段。
いつも1人だったはずなのに、今日はなんだかとてもつらい。
彷徨はクリスちゃんとデートだ…。
ルゥくんたちが帰った日。
彷徨は、とうとうクリスちゃんに告白したんだって。
二人が両思いだったことなんか、とっくにわかってたのに。
「良かったね!」って、白々しく言うことしか出来なかった。
あの日から数日。
ママたちとも話し合って、私達家族が西園寺で暮らすっていう風に話はまとまってる。
ママとパパは、日本とアメリカを行き来するって言ってた。
私の我侭なのに。
本当なら、私ごとみんながアメリカに行けば良いだけ。
私が…離れたくないから…。
おかしいな…。ちょっと前までは、家族みんなでアメリカに行くことが私の望みだったのに。
そんなことを考えてると…。
西園寺に着いてしまった。
誰も居ない家。
パパもママも、おじさまも、ワンニャーもルゥくんも、そして彷徨も…。
誰もいない、がらんとした家。
あれ?西園寺ってこんなに寂しい場所だったっけ?
「あぁー。やだやだ。」
着替えようと部屋に向かう。
トゥルルルルル…。
電話のベルが鳴り響いた。
「はい。西園寺ですが。」
「あ?未夢ちゃん?」
「クリスちゃん?」
どうしたんだろう。
「今日、彷徨くん遅くなりそうなの。いいかしら?」
「あ…わかった。あははは!やだなぁ。もう!いちいち電話なんてしなくても良いよ。ありがとう。わざわざ。じゃぁ、また明日。」
そう一方的に電話を切った。
これ以上話していたら、声のトーンで気付かれそうだったから。
あぁ。涙でちゃった…。
ぽたぽたと零れ落ちる滴。
もう…あんな2人見たくないや。
携帯を取り出す。
『私、アメリカで暮らしたい。』
一言。多分、ママならそれで伝わるんじゃないかな。
今は電話とかで、誰かと話が出来ると思えない。
立ち上がって。ゆっくり本堂まで歩いた。
本堂の階段は、思い出の場所。
悩みがあるとここに座って色々と悩んだ。
彷徨と2人で励ましあったことも。
そして、ルゥくんとワンニャーと最後に語り合ったのもここ。
簡単に誇りを払って、座り込む。
あぁ。
涙…止まんないよ。
しばらく、泣いた。
泣いて。泣いて。泣いて。
辺りがいつの間にか暗くなってる。
あぁ、絶対明日はうさぎの目だよ。
ぐーんと伸びをした。
ちょっと落ち着いたかな。
「大丈夫?」
気付いたら、目の前に男の人が立っていた。
あいっかわらずの駄文。まっしぐら。
まぁ、とりあえず、完結に向かわせます。
こんなんでもまだ、見てやるぜって男気のある方。
見捨てないで下さいね!
一応補足。
彷徨の中では、未夢とクリスちゃんが入れ替わった認識です。
でも、一緒に暮らしているのは未夢。
未夢と彷徨がくっついた。ルゥくんだちが帰った日。
彷徨が告白した相手はクリスちゃんだということになってるわけです。
みんなの中では。