『偽りの想い。入れ替わった心。』【基本 クリス→彷徨×未夢】

vol.T 【クリス→彷徨×未夢】

作:聖 叶都

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連載・第1話。ちょっぴりシリアス? 
クリス主人公っぽい。




暦の上では、もう夏も終り。
うだるような暑さも、心なしか和らいできたように感じる時分。
最後の思い出作りということで、いつもの面々は西園寺近くの丘の上で天体観測をしていた。

「うわぁ。綺麗だねぇ。」
「そうですわね…。」

一筋の流れ星。
満点の夜空の下で未夢とクリスはほうっと吐息を漏らす。
ななみや綾も同じように、美しい星空を見上げていた。

「うわっ。なんだあれ。」

彷徨の声。彷徨や望は、この日のために準備したという、三太の望遠鏡の準備の手伝いをしていたのだ。ようやく、準備万端整った手の掛かる大層なレンズを覗き込んだ、彷徨の眉はひそめられている。

「どうしたの?彷徨?」
「ん?なんか、変な光が一瞬見えたんだ。」
「光?」

そんな会話をしたかと思うと辺りを鋭い先行が覆った。
その数コンマ後に響いた、ものすごい雷鳴。

「きゃーーー!」
「いやぁ。」
「なんだ!」

それぞれの悲鳴が響く。
最もその光と音の傍に居たのは、未夢とクリスだった。
しかし、未夢はとっさに彷徨に抱き込まれ、クリスはその場にしゃがみこむ。

光がクリスを覆いこみ、彼女の意識も途切れた…。


頭がぼうっとする。身体がふわふわ浮いているようだ。
まぶだに柔らかい光を感じて、クリスは意識を取り戻した。
でも身体がだるくて、目を開くことはできない。
死んでしまったのだろうか。
彼女の頭に甦るのは、未夢を抱き込んだ彷徨の姿。
彷徨くん……。
分かっていた。彼の瞳に映っているのが誰なのか…。
未夢に対する彷徨の態度は他の誰とも違っていたから。
せつなさに胸がいっぱいになる。
その時、声が聞こえた。

『そんなにその子が欲しいのかい?』
え?
『その彷徨って子。好きなんだろ?』
あなたは?
『誰だっていいじゃないか。その彷徨って子が好きなんだろ?でも彼には好きな女の子がいる。簡単じゃないか。』
なにを言っていますの?
『その女の子――未夢っていうその子への気持ちを、君への気持ちに変えてしまえばいい。』
そんなことが…できますの?
『あぁ。』
でも…それじゃ、未夢ちゃんが…。
『かまわないさ。2人は付き合ってるわけじゃいんだろ?君の方がその彷徨くんを好きなら。彼だって君と結ばれたほうが幸せだし、その未夢ちゃんも他の相手が見つかるよ。』
…そうかしら…。
『きっとね。さぁ、契約は成立だね?』

パチン…そうクリスの頭の中で何かがはじける音がした。

クリスの耳に声が響く。
「クリス…!クリス!」

誰?

「目が覚めたか?」

目の前には…。

「か…なたくん…?」

うそ……。

目を開けるとそこには、クリスの身体を抱きかかえ、心配そうに顔を覗かせる彷徨がいた。

クリスの顔がまっかに染まる。

「わ…私ったら…!」

「良かった。どっか痛いとこないか?」
「は…はい。」

「そうか。」

安心したような彷徨の顔。

一度で良いから、そんな笑顔を自分に向けてくれれば良いと思っていた。

クリスの瞳が涙で潤む。

そして…一言。

「私…彷徨君が好きです。」


流れ星が妖しげに煌いた…。

                   続く。





きゃー!石投げないでー!
クリス好きな人には、完全嫌われたな…。
すいません。別に彼女は一切悪く有りませんから!
ってか、怒らないでぇ。
私、クリスちゃん大好きですからね!

連載とかほぼ初めてなので、完結するのか心底心配………。



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