作:朴 ひとみ
---世界が真っ白に見えた。
覚悟をした。
しかし、十秒たってもまだ斬られない。
彷徨は目を開けた。
そこには----
「リ・・・ンネ?」
目の前にリンネがいた。
鎌を持って、クリスの剣を受け止めていた。
「なんで・・・・・・・・・」
彷徨が驚いていると、リンネの罵声がとんできた。
「馬鹿者!!突っ立っているな!!」
クリスの力が強いのか、手は微かに震え、大粒の汗をかいている。
「生きることをあきらめる奴なんか・・・・大嫌いだ・・・!!」
「リンネ・・・・」
彷徨はそれを聞くとフッと笑い、言った。
「まだあきらめてなんかいねーよ!!」
彷徨はクリスの方へ回った。
「・・・そうはさせない!!」
クリスはもう一度彷徨にむかって「金縛不自」と叫んだ。
「綾!!ななみ!!」
リンネも叫んだ。
「な・・・何?」
「クリスには手を出すな!!」
「・・・は?」
綾とななみはポカンとした。
「これは・・・私の獲物だ!」
聞くと、綾とななみはフッと笑った。
「いいわよ、リンネ」
綾が言い、ななみが次に言った。
「負けたら承知しないからね!!」
それを聞いたとき、リンネのオーラが変わった。
「負ける・・・?この私が・・・?」
リンネがキッとクリスを睨んだ。
「絶対勝つに決まっているだろう!!」
「・・・それでこそ、リンネね。」
綾が傍にいる、ななみにしか聞こえない小さい声で呟いた。
「うん。・・・それにしても、リンネがあの術を使えるなんて・・・」
あの術。・・・つまり、さっきリンネが生き返ったときに使われたと思われる術。
できる者はたった数人しかいないと言われている、難易度一級。
・・・いや、それ以上。
この術を使う為には、すごい天使の力、そして才能がいる。
---それを、まさかリンネが使えるだなんて。
そんなことを思っていると、リンネが「水輪縛抑」と言った。
するとクリスは水のリングで縛られた。
クリスが剣を落としたのを見て、急いで拾った。
「金縛不自、解除」と言うと、彷徨の術が解けた。
「彷徨!剣だ!」
「あ、あぁ・・・って剣を投げるなよ!!」
彷徨はツッコミを入れながらも剣を受け取った。
ってか、早く全部解けよな。
彷徨がブツブツ呟いていると、リンネが激しく言った。
「解除できる術は限られているんだ!!しかも凄い集中しなきゃいけないのだから、そんなワガママ言うなっ!!」
「ちょっと・・・」
クリスが口を挟んだ。
「「何!!?」」
彷徨とリンネが一斉に口を揃えて言った。
すごい剣幕にクリスはビックリしながらも、言った。
「このままでいいの?」
「?・・・・あ」
クリスはとっくに水のリングを解いていた。
「反撃開始よ!幻想夢幻!!」
変な緑色の光線がリンネを自分の体を盾にして守った。
光線が彷徨に当たった。
「彷徨!!」
リンネが叫んだが、彷徨は睡眠薬を飲んでしまったみたいに、すぐ寝てしまった。
----------ここは・・・どこだ?
彷徨は白い部屋の中にいた。
ドアは、ない。
-----どうしてオレは・・・・?
彷徨が動こうとすると、頭痛がおきた。
すると、その痛さの波と同じリズムで頭の中にボヤけた残像が流れてきた。
----オレそっくりな奴が、女と仲良くしている・・・
残像には、その少女と彷徨そっくりの少年が話し合ってた。
彷徨がぼんやりしていると、残像の中に綾とななみが出てきた。
どうやら少女の友達らしい。
からかいあっている。
そして次は。
少女が泣いていた。
「私のせいで・・・・・・・・私のせいで・・・・・・・!!」
少女が叫んだ。
「彷徨ァァァァァァァッァァァァァァァッァ!!!!!!!」
それを聞いたとき、彷徨の頭痛が増した。
-------うわぁぁぁっぁぁ!!!
目の前が暗くなった。
気がつくと、リンネが彷徨を覗き込んでいた。
「彷徨!彷徨!」
「・・・・・・・リンネ?」
彷徨が気がついたと分かると、リンネはおもいっきり彷徨を殴った。
「とっとと目覚めろ!!馬鹿者がっ!!」
「痛えっ!!」
リンネがキッと彷徨を睨んだ。
目元が赤くなっている。
「リンネ・・・お前・・・・」
「ほら、クリスを倒すぞ!!」
彷徨はフッと笑い、立ち上がった。
「へぇ・・・あなた、平気なの。」
「・・・なんのことだ?」
クリスがニヤッと笑った。
「私が今かけた術はね・・・あなたが思い出したくない事を無理やり思い出させるものなのよ・・・」
「・・・・?思い出したくないこと・・・?」
彷徨はさっきの事を思い出したが、なにも辛いことは頭痛以外なかった。
「まぁ、いいわ・・・。どうせまた新しい術をかければいいのだから・・・」
クリスが「葉刀来風」と叫んだ。
それを聞いた瞬間、リンネの顔が青くなった。
「やばい!伏せろ!」
「え?」
彷徨は意味が分からず立っていたら、強い向かい風が吹いてきた。
「駄目だぁぁぁぁぁ!!」
リンネが叫びながらこっちに向かって走ってきた。
「リンネ、危ない!!!」
後ろから綾とななみの声が聞こえた。
気がつくと、リンネが自分を守るように立っていた。
何なんだ、と言おうとすると葉が風に乗って飛んできた。
「うわぁぁぁっぁぁぁっぁぁぁ!!!」
リンネが叫んだ。
彷徨の頬が赤くなった。
それだけではなく、頭も、服も。
----それは、血だった。
自分のではない、前からとんできた血。
目の前が真紅に染まった。
飛んでくる葉は赤い。
リンネが傷だらけで立っていた。
風はいつの間にか止まっていた。
「リンネ!?」
「馬鹿・・・者。」
リンネがか細い声で言った。
「自分の身ぐらい・・・自分で守れ・・・」
綾とななみも駆け寄ってきた。
「リンネ!!」
ななみが彷徨を見た。
「彷徨・・・ここは私達が回復術をかけておくから、あなたはクリスを・・・」
「リンネは・・・助かるか?」
藁にもすがる思いだった。
嘘でもいいから頷いてほしかった。
「・・・分からないわ。でも、最善を尽くす。だから・・・行って。」
彷徨は頷いて、クリスへ近寄った。
「・・・大丈夫かしらね?」
クリスが呟いた。
「さっきの術は、葉を刀みたいにして飛ばす術。・・・大出血よ。」
クリスがリンネ達の方を向いてクスッと笑った。
「正直、あなたはリンネよりも弱い・・・リンネも、あなたを助けるより自分を守ったほうが、まだ良かったのに・・・」
言い終わった時、彷徨は堪忍袋の緒が切れた状態になり、気がつけば剣でクリスを刺そうとしていた。
クリスは避けながらも、まだ喋っていく。
「これでリンネが死んだら誰のせいかしらね!?
これは・・・貴方が弱いから起こったことよ!」
------------オレノセイ?
彷徨は剣を落とした。
「気持ちなんて・・・こんなものよ。」
クリスは冷たく言い、剣を拾った。
「さようなら」
クリスが剣を振りかざした。
その瞬間、弓矢が飛んできてクリスの腕に刺さった。
「キャッッ!!」
クリスは思わず剣を落とした。
後ろを見ると、綾が立っていた。
「あ・・・や・・・?」
そう呟くと、綾が怒鳴った。
「バカ!なんで動かないのよ!!」
綾は彷徨の元へ駆け寄った。
「これは・・・彷徨のせいじゃない。
全て・・・クリスのせいよ!!」
クリスが「火導伝龍」と言った。
すると、火の龍が出てきて綾に噛み付こうとした。
「水中玉露!」
そう言いながら、矢を飛ばした。
すると、矢の先から水の玉がたくさん出てき、消化した。
「行きなさい!!」
綾が叫んだ。
「クリスが出す術はこっちで止めておくわ!!」
彷徨はコクンと頷き、前へ走っていった。
「無駄よ!私を倒せる訳がないわ!」
クリスが高笑いした。
「そうとは限らないだろ・・・!」
彷徨が剣を振ろうとしたとき、ピカッと剣が光った。
「・・・・!?」
「これは・・・・?」
剣から声がした。
-------大丈夫、あいつを倒せるわ。
剣の先から、うすぼけた光が出てきた。
最初はなんの形も無かったが、どんどん形成されていく。
その形は------------
「み・・・ゆ?」
彷徨は思わず口にした。
未夢はフッと微笑んだ。
そして、キッと前を向く。
------さぁ、行こう。私がついてる。
「あ・・・ああ。行くぜ!」
彷徨はクリスへ剣を振りかざした。
すると、いきなりクリスは叫んだ。
「キャアアアッッッ!!何よそに光・・・!!」
苦しみながら、へたりこんだ。
「な、何なんだ?」
その疑問に、駆け寄ってきた綾が答えた。
「この光はね・・・天使の力の源となる光なの。」
綾は光を触っていく。
「もちろん、これは悪魔にとっては毒だわ。」
彷徨は迷った。
この剣でトドメをさすべきなのか、それとも----
「封印、するか?」
後ろを振り返った。
そこには、ななみに支えられながらも歩いてくるリンネの姿が。
「リンネ!?大丈夫なの!?」
見ると、リンネは胸の上の部分から腰らへんまで包帯を巻いていた。
「大丈夫だ・・・いや、今そんなことは関係ない。
彷徨・・・封印するか?」
リンネはもう一度聞いた。
「オレは・・・-------------」
どうしたいのだろう。
自分でも分からなかった。
「封印すれば・・・封印具の中で死ぬことなく過ごすか、帝様の裁判を受けて・・・天使に生まれ変われるかもしれん。」
彷徨はそれを聞いて頷いた。
「・・・分かった。封印する。」
それを聞いたクリスは暴れた。
「いや!私はもっとあの方の元に・・・!!」
「・・・よし、彷徨。封印具のブレスレットを出せ。」
彷徨は手首に着けていたブレスレットを出した。
リンネはクリスに近寄ると、呪文を唱えた。
すると、クリスの身体は煙みたいになり、ブレスレットの中に入っていった。
「これで良し。・・・さぁ未夢、還れ。」
剣にいた未夢はコクンと頷き、リンネの心臓部分からスウッと入っていった。
「さぁ・・・皆、疲れただろう。ホテルに戻るぞ。」
そう言うと、リンネは返事を聞かずにホテルの中へと入っていった。
第十章 END
静けさが、戻ってきた。
世界は僕らを受け入れた。
こんにちわ、朴です。
upさせるの遅くなってすいません・・・!!
ブログと、親戚のいがみ合いに囚われていました(汗)
ブログはいいんですが、(むしろ囚われたい)親戚が・・・
遺産なんかどーでもいいじゃん!!
・・・愚痴ってしまい、すみません。
あ、なぜ未夢が剣に宿ったかなどは、おいおい説明すると思うので・・・