作:西光ゆな
狂っていくオレらの人生。
なぜ1人の女の嫉妬によって壊されなければならないのか・・・?
Wander each love ★Play FIVE★
2週間後。
彷徨はこれを最後の日と決めて未夢を呼び出した。
付き合い始めたときはいやいやだった彼女も、最近は素直に応答するようになっていた。
それがどういうことなのか、彷徨には分からない。
でも、だんだん自分に対して素直になっていることだけは分かっていた。
「彷徨?話って何?」
「ん、後で」
まだ話したくなかった。
今日という日を大事にしたかった。
たぶん、今日限りで顔も合わせなくなると思われる未夢。
束縛を倒すまではずっと・・・、きっと永遠に・・・。
それから、他愛も無い話ばかり。
いつもはつまらないと思われる話も、今日はずっと聞いていたいと思った。
未夢の高くて妙に和む声をずっと聞いていたかった。
自分が最初に惚れたのは声だったなとふいに中学生のころを思い出した。
けれど、今日で終わるオレの初恋。
幼馴染に恋してからおよそ5年。
それも今日で終止符を打つ。
オレを犠牲にしなければ未夢は危ない。
「未夢、いいか?話」
「え?うん。いいよ」
いよいよだ。
「未夢・・・・、ごめん。オレの勝手な都合で振り回した・・・」
「な、なに・・・が?」
鈍感な未夢は彷徨が何の話をしているか全く分かってない。
でも、彷徨の声のトーンが低いことに気がついた。
自分にとっては嫌なことだろうと。
「あの、交換条件・・・。今日で終わりにしよう・・・」
「え・・・?」
彷徨は一呼吸おいて言った。
「別れよう、未夢」
「・・・っ・・・、何で?」
「他に・・・好きな人ができたんだ。交換条件とかじゃなくて・・・。それに、前の学校に戻ろうと思う」
他に好きな人なんかできない。
自分の中には未夢だけ。
でも、こういわなければ、自分の気持ちに整理がつかなかった。
「・・・、よかったね。本命の人作れて。・・・その人、美人で彷徨にお似合いだよ。
じゃあ、私、帰るね」
「・・・」
涙目になりながら早口で言って、その場を去った。
好きだったのに。
最初は嫌だったけど、今はなんとも思ってなかった。
私の気持ち、結局分かってくれなかった。
何で?
どうして?
トランシーバーの時、必死だったんじゃない・・・。
あれはすべて、嘘だったの?
未夢の心はぼろぼろだった。
好きだった彼との楽しい日々は、ここで終止符を打ってしまった。
とにかく走り続けた。
わき目も振らず走り続けた。
川に来たと思ったら、未夢は・・・
「もう・・・・こんなトランシーバー、要らない・・・」
彷徨からもらったトランシーバーを投げ捨ててしまった。
彼との関係を絶つにはこれしかなかった。
そして自らも川に飛び込もうとしたそのとき・・・
「未夢ちゃん!だめだ!そんなことしたら!」
声がした。
後ろを振り向くと帽子を深くかぶった青年がいた。
「あなたは・・・?」
「覚えてないかい?あの、ダンスパーティーの日を・・・」
ダンスパーティー?
金髪の髪に碧い瞳・・・この人は・・・・
「光ヶ丘・・・くん・・・・?」
光ヶ丘望だった。
未夢の敵なはずなのに・・・一体なぜ、未夢の行動を止めたのか?
未夢ちーが・・・壊れてる・・・。
どーしよう。
当初の予定じゃ、未夢と彷徨は別れさせるつもりなってなかったのにさ。
なんで私って狂うのだろう?
光ヶ丘くんはユリナと由香を裏切ったのであります。
勇者だ・・・!
君は・・・。