作:妖緋
やっと未夢に言えた
そして今は 未夢が伝えようとしている
言葉を聞くのは やっぱり怖い
都合の良い考えなんて
していたらいけないのに―――
自分の気持ちを伝えたときの達成感はどこにいったのだろうか・・・
何かを言おうとしている未夢の口を塞ぎたい。
いつもの自信たっぷりの自分なんて、とっくにどっかに言ってしまった。
"確信"に近かったそれは、今は本当に"期待"の域を超えないでいる。
「彷徨」
ああ、今俺はどんな顔を未夢に向けているのだろうか。
裁判の判決を待つ被告人も、こんな気持ちで裁判官の言葉を待っているのだろうか。
ごくりと唾を飲み込んだ。
「・・・みゆ」
「彷徨、ありがとう・・・それから・・・・・・・・・ごめんね」
「・・・未夢?」
未夢は両手を胸の前にやって、ぎゅうっと握り締めた。
謝罪の言葉の真意はまだ分からない・・・けれど、
なぜか悪いようには聞こえない
「彷徨・・・私、私も、彷徨にひどいこと言った。
彷徨なんか・・・彷徨なんか、大・・・嫌い、・・・・って・・・・・・」
「未夢・・・」
「私のも、うそ・・・嘘なのっ・・・大嫌いなんて、全っ然ウソ!・・・
わたし、私はっ・・・」
このとき、俺と未夢の気づかない場所でものすごい人だかりが出来ていたなんて
俺がそれを三太に知らされたのはもっと後になってからだった。
俺はただ、未夢から溢れ出てくる何もかもを、とにかく全部受け止めようと、未夢だけに神経を傾けていた。
「私は、彷徨のことが、好きなの・・・っ・・・・・・・・・」
未夢の言葉が信じられなくて。
信じられないけど、でも知っていた気もして。
再び崩れた未夢の身体を、今度はしっかりと抱きしめた。
「2回も崩れるなよ、未夢」
「ごめん・・・」
言いながら、俺はニヤけてしまう顔を隠すことができない。
未夢も謝りながらも微笑んでいるのが分かって、俺は抱きしめる腕に力をこめた。
温かく柔らかいその身体はすっぽりと俺の腕におさまっていて
まるで俺の腕は最初から未夢のためにあったみたいで――
思ったままを未夢に囁いたら、バカ、と胸を叩かれた。
そうだ、きっと俺はバカだ。
幸せすぎて、バカになってる―――
彷徨視線で未夢の告白シーンでした(・ω・`)
一応未夢視線と韻をふんでいるというか・・・似た運びにしてみました。
同じシーンではないので多少違いますけど〜。
次で最後になります、あと少し、お付き合いをm(__)m