作:妖緋
2人が鞄を取りに教室に戻ると、そこにはほぼクラス全員と担任の水野先生がいた。
扉を開けたとたん、キャー!だとか、おめでとー!だとか、
あるいはヒューヒュー♪だとかの声が聞こえてくる。
未夢は思わず赤面して固まり、彷徨も同じく赤面して、ふいとそっぽを向いた。
なんで放課後なのにこんなに人が・・・と彷徨は思うが、仕方がない。
クリスたちが未夢を呼び出したのは、さよならの挨拶をした直後である。
女子たちはみんなクリスたちと未夢についていってしまったし、
男子は近づかないほうがいいかな、と思っていながらも
何かあるのでは、と離れたところから様子を伺っていたのだ。
そして案の定、ほぼクラス全員の予想通りのことが起こって、今に至る。
2人が教室に入るのをためらっていると、水野先生がだれよりもウキウキとした様子で近づいてきた。
「おめでとう!西遠寺君、光月さん、ついに恋人同士になったのね♪」
「みっ水野先生っ」
「2人とも随分と奥手だし、今回のことを聞いたときはどうなるかと思ったけど・・・
お互いにちゃんと本当の気持ちを伝え合って、・・・先生見ながらドキドキしちゃった☆」
「「はいぃ!?」」
水野先生のその言葉に、未夢と彷徨が同時に反応する。
あの告白を、見られていた・・・!?
水野先生はそんな2人の様子など関係なく、両手を頬に添えながら、若いっていいわね〜、と自分の世界に入ってしまった。
それから、おそるおそる2人が教室を見回すと、全員がにっこりと笑う。
普段、とても鈍い未夢にも分かった。
顔に、自分たちも見てました、とはっきりと書かれていた。
「あ・・・うぅ・・・・・・彷徨ぁ」
「う、うーん・・・まさかな、見られていたとは」
「そりゃあ、見るっしょ。みんな気になってたんだからさ」
悪びれる様子もなく言ったのは三太だ。
そして三太の言葉に、クラスメートがそうそうと頷いてみせる。
彷徨は頭を抱え、未夢は手をほっぺたにつけて下を向いて、ようやく教室に足を踏み入れた。
「よかったね、未夢」
「ななみちゃん」
「出口、見つかったじゃん」
「・・・・・・うん」
「でも・・・」
ななみが視線を向けた先では、綾が机に向かって何かを必死に書いている。
クラスの誰もが見慣れたこの光景・・・。
「綾ちゃん、プチみかんさんになっちゃってる・・・」
「こりゃあ、演劇大会でもっかいやることになりそうだね」
「え、えぇぇええ〜!?」
しかし彷徨は一足先に諦めたようで、未夢の頭をポンポンと叩く。
「未夢も知ってるだろ?あいつを止めるのは・・・至難のわざすぎる」
「おっ、西遠寺君諦めが早いね〜」
「なんかな・・・告白まで見られてたみたいだし・・・色々ふっきれた」
彷徨は肩をすくめてそういうと、未夢を抱き寄せた。
途端、周りから変な歓声がもれる。
「おいおい、変な風に騒ぐなって」
言いながらも彷徨は未夢を離そうとはしなかった。
「・・・未夢ちゃん、彷徨くん」
「花小町」
「クリス・・・ちゃん」
クリスは微笑んでいた。
その微笑みは、いつにもまして、綺麗だと未夢は思った。
「良かったですわ・・・やっぱり2人が一緒にいるのが、幸せですわ」
「ありがとな、花小町・・・花小町たちの後押しがあったから、俺は・・・」
彷徨がクリスに笑顔を向けた。
今までだったら、クリスはそれだけでテンションがあがりきってしまっていただろう。
しかし、決してそうなるわけでもなく、クリスは首を振った。
「わたくしは、未夢ちゃんが好きなだけですわ」
ね、未夢ちゃん、とクリスは未夢を見やる。
未夢はそんなクリスの言葉が嬉しくて、頬を赤らめながら微笑んだ。
こうして未夢と彷徨は、市立第四中学校2年1組公認のカップルに、
いや、放課後だったというのに第四中学校全体の公認になるのさえ、
たいして時間はかからなかった。
翌日、2人が登校したときに、クリスが「未夢ちゃんと彷徨くんの仲を守る会」の会長になっていたのは、また別のお話―――
未完成のまま足掛け何年になるのでしょうか・・・。
なんとか書き上げてみました。
自分の書き方とかが大分変わってしまったと思うんですけど
かといって上達しているわけでもなく(^^;)
特に最後はどうやって締めようかとか悩みに悩んで・・・どんな終わりなんだろう;;
また別のお話、とか書いてますけど、書きません。
とにかく、1話をアップしてからものすごい時間がたっていますが
ここまで読んでくださったみなさま、本当にありがとうございましたm(__*)m
全体的に未夢も彷徨もみんなも、微笑みすぎだと思います。
まだまだ勉強が必要ですね(・ω・`)