作:妖緋
「彷徨くん、もうおわかりになっていますよね?」
クリスが尋ねると、彷徨はこくりと頷いた。
「昨日・・・俺が後輩に言った言葉・・・だな」
「そうですわ」
「西遠寺君、知ってた?昨日未夢ちゃんがあそこにいたこと」
「未夢ちゃん、西遠寺君の言葉を聞いて泣いていたの」
口々にそのときの様子を話されるたびに、彷徨のショックは大きくなっていった。
それはさっきまでの、未夢に嫌いと言われたショックではない。
自分が言った、自分ではほんの照れ隠しのつもりだった言葉が、未夢を傷つけたという事実に対するショックだ。
「わたくし、彷徨くんが好きです・・・けれど、彷徨くんの隣にいるべきなのは未夢ちゃんだけだと思いますわ」
だから、あとは何をすればいいか分かるでしょう?
クリスはそう、目で言っていた。
「花小町・・・」
「未夢ちゃんがああ言った本心は・・・分かりません。でも、彷徨くんだけでもそうでないなら!」
「サンキューな、花小町、みんなも」
彷徨は真剣に自分を見つめるみんなに、微笑んで見せた。
そしてすぐに未夢が走り去ったほうへ、自分も走っていった。
「彷徨君・・・うまくいくことを、祈ってますわ・・・」
未夢とななみと綾はつきあたりだった廊下の近くの階段に並んで座っていた。
ななみと綾が左右から未夢をはさむようにして、2人で手を握ったり、背中をさすったりしている。
「ありがとう、ななみちゃん、綾ちゃん・・・・・・ごめんね・・・」
「謝らないでよ〜私たちは未夢についてたいんだから」
「そうだよ、未夢ちゃんが大好きだから」
綾がそういって未夢の頭を優しくなでると、未夢の瞳からは再び涙がこぼれおちた。
「み、未夢ちゃんっっ」
「未夢っ」
「だっ大丈夫!2人の優しさが、ちょっと嬉しくって・・・・・・」
2人に向かって笑ってみせる未夢が愛しくて、ななみと綾は左右の未夢の手をしっかりと握りなおした。
「・・・大丈夫だよ、未夢ちゃん。出口はきっと、見つかるよ」
綾がぽつり、呟いた。
それに応えるようにななみも口を開く。
「そうだよ、未夢は今、いきどまりにいるかもしれない・・・でもね、私には見えるんだ〜
未夢を出口に連れてってくれる人が」
「綾ちゃん・・・ななみちゃん・・・・・・・・・」
ななみは立ち上がると、ほら、と未夢に手を差し出す。
未夢がその手につかまりながら立ち上がると、ちょうど彷徨が来るのが見えた。
ほぼ反射的に顔を背けて逃げようとする未夢の手を、2人がしっかりと握り締めた。
「未夢、私たちがついてるからさ」
「逃げたら始まらないよ?未夢ちゃん」
再び震える未夢を支えるようにしながら、2人は彷徨がこちらにくるのを見ていた。
「・・・・・・未夢っ・・・!!・・・」
お久しぶりでございます。
途中で止まったままだった作品を完結させるべく、昔の話を見直しながら・・・書きました。
Web拍手くださった方、ありがとうございました。
話のつながりが上手くいくか分かりませんが・・・とりあえず、あと5、6、7まで続きます。
ひとまず書き上げてありますので、ところどころ直しつつ近日中に全てアップします〜。
全体を見渡すと矛盾がぽろぽろ出てきそう〜(・ω・;;;)