また絵本に入っちゃった!?

〜眠り姫〜part.6

作:瑞穂

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「ここか・・・。」

彷徨とワンニャーは、いばらに囲まれたお城の門の目の前にいた。
だが、そこはなんと言ってもお城である。
門からお城までは距離があった。
お城にたどり着くために、彷徨はこれから、
この棘だらけのいばらの森のような道を、通っていかなければならないらしい。

「・・・・・。」
「・・・・・。」


二人の間に沈黙が流れる。
彷徨は眉をひそめている。
ワンニャーにいたっては、蒼白な顔で今にも倒れてしまいそうだった。
それもそうだろう。
刺されば痛そうないばらだらけで、道もないのだ。
これからこのいばらの中に入らなければならない。


「で、では、わたくしはここでお待ちしてますね。」

逃げようとするワンニャー。

「何言ってるんだよ。ワンニャー、お前も来るんだぞ!」

そう言って、彷徨はワンニャーについている手綱を引っ張り、ひらりとワンニャーの上に飛び乗る。

「ええー!?今もし傷だらけになれば、起きた時も傷だらけなんですよ〜!?」
「・・・仕方ないだろ。それに・・・」

彷徨は腰からサーベルを抜いた。

「この剣で、いばらを切って道を作るから何とかなるだろ。」
「本当ですかぁ!?」
「・・・まぁ、たぶんな。」
「とほほ〜」

ワンニャーは情けない声を出しながら、彷徨を背に乗せて、二人はいばら城へと進んだ。




゜+.゜☆*。




いばらの森は、思っていたよりも棘が沢山生えており、なかなか前へ進めなかった。
彷徨は必死に剣を振るうのだが、切っても切っても目の前にはいばら。
横にも、前にも、頭上にも。
いばら。いばら。いばら。
いばらの匂いにむせ返りそうになる。
どこをを見ても緑。
世界の色が緑になってしまったかのよう。
隙間から入る光もわずかで薄暗く、まっすぐに進めているのかさえわからない。

ようやく庭のような拓けた場所に出たときは、空に輝く太陽がまぶしくて。
あのむせ返るようないばらの匂いから開放されて。
二人して空を見上げて目を細め、何度も大きく息を吸った。
時計がないので正確な時間はわからないが、
二人としてはかなり長い時間いばらの中にいたような気がする。
ワンニャーから降りた彷徨はその場に座り込んだ。
そんな彷徨を見て、ワンニャーは驚いたように声を上げた。

「彷徨さん!その怪我!」
「え?」

彷徨は自分の着ていた服が破れ、腕や足から血が出ているのを見て驚いたような顔をした。


「だ、だだだ・・大丈夫ですか!?彷徨さん」
「なめときゃ治る。」

そう。
先ほどまでは、進むのに必死で、痛みはあまり感じなかった。
だから、気が付かなかったのだが、彷徨の腕や足には数箇所の傷が出来ていた。
かすり傷がほとんどだが、中には深い傷ではないのだが血が流れてしまっている傷もある。
ワンニャーも怪我をしていたようだったが、かすり傷だけのようだ。

(これくらいの試練。乗り越えられなきゃ未夢は手に入らないって?)

(やってやろうじゃん)




゜+.゜☆*。




「これからどうするんですか?」

やっと落ち着いたとき、ワンニャーが彷徨を見て尋ねた。

「そりゃ、眠り姫を探すんだろ?」
「それで、その眠り姫さんはどこにいらっしゃるんでしょう?」
「・・・それは」

彷徨は静まり返ったお城を見つめる。

「この城の一番上の部屋のどこかに・・・」

そこまで言って絶句した。
何度も言うようだが、そこはなんと言ってもお城である。
大きさが半端ではない。

(おいおい〜ルゥのやつ・・・)

しばらくお城を見つめていた二人だったが、意を決してお城へと進み始めた。




゜+.゜☆*。




彷徨は上へと続く階段を登っていた。
この城で最上階まで続く階段は、これで最後。

彷徨はあれから最上階へ上がれそうな塔の場所を絞り、
ワンニャーと二人で手分けをして階段を五つ見つけたのだ。
だが、馬の姿のワンニャーでは、最上階へと続く細い階段は登れず。
彷徨が階段を一人で登っていたのだ。
他の四つの最上階の部屋に人はいなかった。

先ほど通り過ぎた広間では、一段高くなっている場所にある椅子に、腰掛けて眠る男の人。
隣の椅子に座り、男に寄り添うようにして眠る女の人。
二人は王様とお后様なのだろう。
他にも城のあちこちで眠っている、家来たち。

ほどなく、彷徨は最上階の部屋の扉の前にたどり着いた。
ひざに手を当て呼吸を整える。
額から流れる汗をうっとうしそうにぬぐった。

「未夢!」

名前を呼びながら勢いよく扉を開ける。

しかし、そこにも未夢はいなかった。
彷徨は愕然として、その場に座り込んだ。


「くそっ!!」

片ひざを立てて、額をのせる。

(未夢・・・一体何処にいるんだ・・・)




゜+.゜☆*。




薄暗い部屋。
ひざに額をのせたまま、床を睨みつけていた彷徨の足元に、光がさした。
彷徨が顔を上げると、窓からキラキラと太陽の光が差し込んでいた。

立ち上がり、窓辺に歩み寄る。
鍵を開けて、窓から顔を出した。
風は吹いていなかった。

部屋についている二箇所の窓からお城を眺めて確認したのだが。
上へと伸びていて、なおかつ上に部屋がありそうな塔は、今彷徨が登っているものも含めて五つだ。
何度も数えても五つしかない。


(・・・未夢)


彷徨は庭が見える窓から外を眺めて考えていた。
ふと、庭のはずれにある古い塔が目に入る。

(もしかして・・・あそこか?)


考えつくと同時に彷徨は駆け出した。
階段を下りたところで、ワンニャーが眠っていた。
疲れたのだろうか?
彷徨はそのままワンニャーの側を走り去る。
目的地は庭のはずれの古い塔。




続く


えっと、物語の中で出てきた【サーベル】なんですが、彷徨君も言っていた通り剣です。
間違ってはいないかと一応yahooで辞書を引きましたところ。

サーベル【(オランダ)sabel】
もと軍人や警官が腰に下げた、西洋風の細身で片刃の刀。洋剣。

と言うことでした^^

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