作:瑞穂
「うわっ!」
彷徨は、目を覚ますと白い馬の上にいた。
バランスを崩し、落ちそうになったが、何とかこらえた。
必死で手綱にしがみつき、バランスを取る。
(やっぱり、絵本の中に入っちまったみたいだな。)
彷徨はため息をついた。
その時。
「あ、彷徨さん。目が覚めたんですか?」
どこかからワンニャーの声がする。
「ワンニャー!?いるのか?」
「はい〜、ここに。」
(ワンニャーも何かに変身して走っていると言うことか?)
彷徨は辺りを見渡したがワンニャーの姿はない。
第一、彷徨は馬に乗っているのだ。
彷徨の乗っているその馬は走っているわけだし。
回りには彷徨が乗っている馬以外の足音は聞こえない。
鳥にでもなったのかと、空を見上げてみるがワンニャーらしき姿は何処にも見当たらない。
彷徨は眉をひそめて首をかしげた。
「どこにいるんだ?」
「ここですってば!彷徨さん!」
「!?」
その時、急に馬が止まった。
止まったままで動かない。
彷徨は訝しく思い馬を降り、馬の前に回った。
「お前、ワンニャーか!?」
「はい〜。」
馬の形をしていて後ろから見ただけではまったくわからなかったが、顔は確かにワンニャーだった。
よく考えてみれば、彷徨は今まで一度も馬に乗ったことがないのだ。
(いや、絵本の中だからと言えばそれまでなのだが。)
眠りながら乗れるようなものではない。
「何で、馬になんか変身してるんだよ?」
「それが、気が付いたら馬になっていて・・・」
「何処に向かってたんだ?」
「多分、あの建物ではないかと。」
そう言いながらワンニャーは遠くを指差す。
ワンニャーが指差す先には、小さく建物が見えた。
「なんだあの建物。なんであそこに行くんだ?」
「気付いたら、建物のある方向に走っていたんですよ〜。他に何も見えませんし、とりあえずそのまま走ってたんです。」
「・・・そうか。」
「それにしても、彷徨さんは、何を着てもお似合いですねぇ〜」
「え?」
彷徨は自分の服を見下ろして、ため息をついた。
前に入った、シンデレラや人魚姫のときに着ていた王子様ルックだったのだ。
ワンニャーは別に悪気はないのだろう。
だが、彷徨としては、こんな服似あっていると言われても嬉しくない。
「そんなことより、未夢やルゥとは会わなかったのか?」
「お会いしていませんよ?」
「そうか。とりあえず先に進もう。」
「そうですね!乗ってください!」
゜+.゜☆*。
二人は休憩していた。
ワンニャーが彷徨を乗せたまま走り通しだったため、少し休憩することになったのだ。
だが、どうやらワンニャーの変身が解けないらしい。
ワンニャーは馬のままだった。
そして、そろそろ出発しようと彷徨とワンニャーは立ち上がった。
「大丈夫か?ワンニャー。」
「はい!もう全然平気です〜。」
その時、二人の目の前に綺麗な小鳥が現れた。
その美しい小鳥は、まるで、自分の後を付いてくるようにと言っているかのように、二人の周りを飛び回る。
ワンニャーと彷徨は首を傾げたが、とりあえず小鳥についていくことにした。
゜+.゜☆*。
二人が綺麗な小鳥の後をついて行き、しばらくすると、目の前に村が見えてきた。
だが、その村は人もあまりいない静かな村だった。
彷徨は建物のほうを見た。
最初にその建物を見た位置からは、小さすぎて何かわからなかったが、今はお城だとわかる距離まで来ていた。
と、目の前に沢山の羊と、その世話をしているらしい人が見える。
「あの、すいません。」
彷徨が声をかけた。
羊飼いは、振り返り彷徨を見上げる。
「西遠寺君じゃないか!こんなところで何をしているんだい?」
「!?光ヶ丘!お前こそなんでこんなところに・・・」
そう。羊飼いに見えたの人は、光ヶ丘望。彷徨と未夢のクラスメートだ。
「気が付いたらここにいたのさ〜。それよりそんな格好をして何処へ行くんだい?」
「え?ああ。あのお城に。」
そういって彷徨はお城を指差す。
「それはやめたほうがいい!」
「え?」
大げさなくらい怖そうな顔をして止める望に、彷徨は首をかしげた。
「僕が聞いた話によると・・・」
と、望は深刻そうな顔をして話し出した。
「言い伝えでは、あのいばらお城の中に美しい眠り姫がいるそうなんだ。」
「眠り姫・・・」
「そして王子様のようなこの僕も、眠っているレイディを助けようと出発したんだよ。そのいばら城に。」
「!?」
「何人もの男があの森に入ろうとしたが、いばらの棘に傷ついて戻ってきたからやめろと言われたんだけどね。」
「・・・それで?」
「しばらく歩いていたら、オカメちゃんの調子が悪くなっちゃってね。」
「・・・」
「やむなくリタイアさ!コレは僕が思うに、お城の呪いのせいだね!」
そこで意味なくポーズを決める望を無視して、彷徨とワンニャーは出発した。
(眠り姫か・・・。ってことは、眠り姫は、やはり・・・)
今までのシンデレラも人魚姫も、未夢と彷徨が主人公だったのだ。
十分考えられる。
眠り姫は王子様のキスで目を覚ます。
(もし、未夢が眠り姫だとして)
(光ヶ丘が俺より先に、眠り姫かもしれない未夢に会っていたら・・・)
そう考えて、彷徨は渋面になった。
続く
さっき書いててふと思ったんですが、・・・この話ストーリーの先読みしやすいような・・・滝汗