作:瑞穂
この話は、『だぁ!だぁ!だぁ!』の原作の5巻・6巻を読まれていない方にはネタバレになってしまう可能性があります。
彷徨が居間で眠りにつき、ワンニャーがみたらし団子を食べるのに台所へ向かったちょうどその時。
ルゥとワンニャーが使っている部屋ではルゥとももかが、部屋にある、おもちゃが入った箱がしまわれていた押入れの中に、
もう一つ別のダンボールの箱を見つけていた。
「あら?ルゥ、こっちのは、なぁに?」
「る?」
「ルゥしらないの?あけてみまちょーか」
「あーい!」
「きっとワンニャーがなにかたからものをかくちてるのね!」
「きゃぁぃ−!わんにゃっ」
ももかは、よいしょっ!と掛け声をかけながら押入れの奥からダンボール箱を引っ張り出した。
ルゥは興味津々といった感じで目を輝かせながらダンボール箱を見つめている。
「ふぅ〜。これ、おもいわね〜」
「もんもっ」
「わかったわ。・・・あけてみまちょー」
「あい!」
ももかは、ダンボール箱のふたをとめていたガムテープを、ビリビリと外した。
中から出てきたのは、人魚姫や眠り姫、シンデレラなどの沢山の絵本だ。
その中の一つ、人魚姫はももかが少し前にルゥに読んで聞かせてあげたものだ。
「このえほん・・・?」
「っきゃぁー」
キラキラと目を輝かせてみているルゥの隣で、ももかは人魚姫の絵本を手にとって首をかしげた。
「どぉちてえほん、おちいれのおくの、はこのなかにはいってるの?」
「る?」
ももかはルゥが大好きな絵本が押入れの中にあるのが不思議だった。
そういえば、
(ルゥにあたちがえほんをよんであげてたら、おばたんとかなたおにーたんがあわててたっけ?)
と少し前ルゥに絵本を読んであげていた時のことを思い出す。
「ルゥ?」
ふと隣を見ると、ルゥが眠り姫の絵本を手にとって、もんも!と言いながらこっちを見ている。
「なぁに、ルゥ〜?それ、よんでほちいの?」
「あーい!」
首をかしげて聞いてみれば、ルゥが満面の笑みで元気よく返事をする。
ももかは、ちょーがないわね〜!と言いながらも、嬉しそうだ。
未夢と彷徨たちのことなどすっかり忘れて。
「じゃぁ、よんであげる。むかちむかち・・・」
と眠り姫の絵本を読み始めた。
゜+.゜☆*。
未夢はななみたちとは別れ、西遠寺の長い石段を登っていた。
「はぁ〜やっとついたぁ。今日も登ったよ〜」
言いながら、ん〜と伸びをする。
玄関の戸をあけて、ただいま〜。と声をかける。
座り込んで靴を脱いでいると、ワンニャーがひょこっと台所から顔を出した。
「あ、おかえりなさ〜い。未夢さん」
「ただいまぁ〜。ルゥくんとももかちゃんは?」
「お部屋で遊んでますよ〜」
「そっかぁ」
返事をしながら、台所を通り、居間へ向かった。
「あれ?ワンニャー、彷徨寝ちゃったの?」
「あ、はい。2時間ぐらい前にぐっすりと」
「じゃぁ、そろそろ起きないと夜眠れなくなっちゃうね。お〜い、彷徨ぁ〜。朝ですよ〜」
未夢が呼びかけると、彷徨は、ん゛〜と寝返った。
その時居間の反対側の入り口からルゥの声がした。
「マンマ!」
「ルゥくん〜、ただいまぁ」
そういって未夢は振り返り、飛んできたルゥをキャッチした。
「あら、おばたん。おかえりなたい。」
というももかのほうを見て、未夢が、ただいまぁと言おうとして下を向いた時、ももかが手に持っている絵本が見えて。
驚きで目を見開き一歩、ももかのほうへ足を踏み出した。
「!?ももかちゃん!その絵本!」
「?えほんがどうかちたの?おばたん」
「その絵本読んだの!?」
「なぁに、おばたん。えほんよんぢゃだめなの?」
「ダ・・ダメじゃないけど・・・。でもそれ何処から出してきたの?」
そう。この絵本は未夢がルゥのために買ってきたものだ。
だが、ルゥの新しい能力のために、夢で絵本の中に入ってしまい、未夢が泡になって消えかけたことがあってから、
絵本は全部ダンボールにしまい、少し前にワンニャーがどこかに隠したはずだった。
「ん゛〜・・・未夢?帰ってたのか?」
「あ、彷徨!ちょうど良かった!あのね・・・」
ちょうどよく目が覚めた彷徨に(周りがうるさくて目が覚めたのだが)、
ももかが、ルゥに絵本を読んだことを、未夢が伝えようとした時、ワンニャーが台所から顔を出した。
「ももかさ〜ん。もう6時になりますけど、帰らなくても大丈夫ですか?」
「もぉちょんなじかんなの?ももか、かえる」
そう言ってももかは絵本を畳の上に置き、彷徨と未夢は時計を見た。
「ルゥ、またくるわね。うわきしちゃだめよ!」
「あーい!」
意味がわかっているのかいないのか、ルゥは元気よく返事をした。
その返事を聞き満足そうに微笑んだももかは、玄関のほうへと歩いていった。
彷徨はいつものことながら、オマセなももかの言動に苦笑して。
「じゃぁ、俺はちょっとももかちゃんを送ってくるよ」
「いってらっしゃいませ。お気をつけて〜」
「あ・・・」
何か言いたそうな顔をして、こちらに軽く手を伸ばしている未夢に彷徨は軽く首をかしげた。
「なんだよ?」
「あ・・あのね、さっき・・・」
未夢が説明しようとしたその時、玄関から、かなたおにーたーん!というももかの声が聞こえてきた。
彷徨は、今行くよ〜。と玄関に向かって返事をしてから『なに?』というように未夢を見た。
「あ、帰って来てからでいいよ。ももかちゃん待ってるし」
「?そうか?」
「うん。いってらっしゃい」
「?いってきます」
そう言って彷徨はももかが待つ玄関へと向かった。
゜+.゜☆*。
「ただいまぁ〜」
ガラガラ〜という玄関の扉が開く音と彷徨の声が聞こえてきて、未夢は玄関へ走った。
おかえり〜と声をかけながらパタパタと彷徨のいる玄関まで走ると、靴を脱ぐのに座り込んでいた彷徨の隣に膝をついた。
彷徨が出かける前に話そうとしていたこと、ももかがルゥに絵本を読んで聞かせたことを説明した。
「!?・・・また絵本を読んだのか?」
「そうみたいなんだよ〜」
「でも、あれはダンボールにつめてワンニャーが隠したんじゃなかったか?」
「それが、押入れの奥から見つけて、引っ張り出しちゃったみたいで・・・」
未夢が焦っている隣で、彷徨は、む〜っと考え込んだ。
そのまま二人で居間のほうに歩いていき、ふと、彷徨が思いついたように未夢のほうを向き口を開いた。
「ももかちゃんは何の絵本を読んだんだ?」
「そ、それが・・・」
「?」
「さっき聞こうとしたんだけど、6時だからってももかちゃん帰っちゃったからわからなくて・・・」
「・・・」
「ももかちゃんが居間に持ってきたのは『眠り姫』だったんだけど、ルゥくんの部屋に行ってみたら他にも絵本が出てて・・・」
「・・・何読んだかわかんねーな」
不安そうな顔をしてうつむいている未夢の頭に、ポンと手をのせた。
未夢がふっと顔を上げて。
目が合った。
彷徨は軽く微笑んだ。
「ま、大丈夫だろ?なんとかなるさ」
「で、でもぉ〜」
「この間まで『物語の主人公になれるなんて素敵じゃな〜い』とか言ってたの誰だよ」
言って彷徨は、べっといつものように舌を出す。
泡になったりするなら話は別だよ〜。と言いながらてをジタバタさせている未夢を見て
「でも、もう読んじまったもんは仕方ねーだろ?」
「そうだけど・・・」
「何かあっても、また前みたいに何とかなるさ。気楽にいこうぜ」
「前みたいにって・・・」
立ち止まって真っ赤になる未夢。熱くなった頬を押さえる。
人魚姫になった時、未夢を助けるために、彷徨と結婚するフリをしたときのことを思い出したのだ。
一人で真っ赤になって立ち止まる未夢を置いて彷徨はスタスタと居間に入る。
「おかえりなさいませ〜。彷徨さん」
「ただいま」
「パンパ〜」
「お、ルゥ。いい子にしてたか?」
「あーい」
いつものように彷徨が頭をなでると、ルゥは嬉しそうにばんざいした。
そんなルゥに彷徨も微笑む。
「あれ?未夢さんは?」
首をかしげて彷徨にと問えば、さぁ?と言われて。
ワンニャーはますます首をかしげた。
犬みたいなみたいな猫姿のワンニャー独特の足音を立てて歩いていき、ひょこっと廊下に首を出した。
「未夢さん?何してるんですか?ご飯ですよ〜」
ワンニャーに声をかけれて、はっ!と我に返った未夢は急いで返事をする。
「い、今行く〜!」
パタパタと言う音が居間に消え、またいつものように西遠寺の夜は更けていった。
続く
これからも頑張って書きます☆