西遠寺 再び

作:とっちゃん

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これは未夢がもとの家に帰って、
数ヶ月過ぎた、夏休みのお話デス。



 



俺はカボチャが好きだ。




俺はカボチャが大好きだ。







でも、いま俺にはもっと大好きなものがある


いや『人』の方がいいのだろう。


でもその人は、きっと俺のことなんてどうとも思ってないだろう。

だって『あいつ』はものすごい鈍感だから。

俺は『あいつ』を傷つけることだけはしたくない。

だから、『あいつ』には何も言わずにさよならをした。

『あいつ』にはこれがいちばんいいんだ。

そう俺は自分に言い聞かせて。

『あいつ』とわかれた。




でも





『あいつ』とはなれたら、気になって気になって勉強や読書が手につかなくなってしまった。

ー未夢は、今親と一緒に仲良く暮らせてるかな?
また一人なんてことはないよな?−


ー今はめしの時間かな?あいつなに食ってんのかな?冷凍食品なんかじゃないよなぁー

ー未夢はどこの高校行くんだろう?一緒のとこにいきたいなー




きがつくとそんなことばかり考えていた。


未夢・・・・未夢・・・・未夢・・・・・。


ー未夢に会いたい。やっぱりあいたい。
   この気持ちを俺はこれ以上抑えられない。
せめて伝えたい。《好きだ》って、たった三文字なのだから。










ーああ彷徨は今なにしてるだろう?おじさんと仲良くしてるかな?
三太くんや望くんといまごろはしゃべってるかな?
彷徨はどこの高校に行くんだろう。ー

『近すぎると気づかない』そんなことを昔みずきさんにいわれたな。

彷徨の存在。いつも彷徨がそばにいた。そばにいてくれた。

うれしい時も、悲しい時も。いつもいつも・・・・・・

彷徨は私の隣にいてくれた。それが当たり前だった。

ー彷徨にあいたい。会いたいよぉ。ー
  気づかなかった。こんな気持ち離れて初めて気がついた。



彷徨と離れたくないって気持ち。
それが《好き》ってことなのかはまだ分からないけど。



でも・・・・・・・これだけはわかる


ー彷徨のそばにいたいー



そう思ったら、未夢の行動は早かった。

今は夏休み目前。夏休み、西園寺に泊まりに行こう!!

ーそうと決めたらっー

未夢は台所まで走っていく。

purururu。purururu。

《はい?》

ー彷徨のこえだぁー

未夢は彷徨の声を聞いたとたん、とてもうれしくなった。

「か・・なた。あたし・・・。」

《?!未夢??》

彷徨は未夢に驚いている様子だった。

「うん。ね、彷徨。夏休みに入ったら、そっちに行ってもいい?」

《あ、おう、どうせ親父いないし。》

彷徨はドキドキしていることを悟られぬようにひっしに冷静を装っていた。

「おじさん、いないの?また修行??」

《あっ、そう。今度はえーっとどこだっけ?まあ、アフリカのどっかかな?》

とゆうよりも、聞いていないのだった。

彷徨の父:宝生は、いつのまにかいなかったのだ。

ーってことは彷徨と2人っきり・・・・・ー

未夢は急に恥ずかしくなった。

まえは普通だったのに、いまは《彷徨と2人っきり》

という言葉が、突然、特別に聞こえる。


「そうなんだ。じゃあさ、夏休みに入ったら、すぐそっち行っていい?」

《いいぜ。そっちってこっちより二日遅いんだよな?。あとお前が家に来る時は、「おじゃまします」じゃなくて「ただいま」だからな》


「・・・。うん!!!!!ありがとう彷徨!!!」

そういって未夢は受話器を下ろした。

チンという音が家全体に響きわたった。


夏休みまで彷徨は五日、未夢は一週間だった。

ーやったぁ!!久しぶりに西園寺に行けるっ。
  
三太君や望君、綾ちゃんにななみちゃんにくりすちゃん


そして・・・・・彷徨に会えるんだ!!



       あと一週間早くたたないかなぁー











      






  ーまさか未夢が家に来てくれるなんて。
       思いっきりもてなしてやろう。
この時にルゥとワンニャーもいればもっと最高なんだけどな。
                こればっかりはしょうがないか・・・・。ー




  「さてとっ」ーあと一週間もあんのかよ。待ちきれないなぁ。ー













     ☆一週間後☆








   「 やったぁ!!一学期おわったぁ!!!」


    両手を広げて喜ぶ未夢。


   「よぉ〜し!!早く西園寺にいこうっ!!!!」


   未夢は急いで家へ帰り、私服に着替え、


   何日か前から準備していた荷物を持ち、出発した。




   電車の中でも

   「まだかな?まだかな?早く彷徨にあいたいな。早く西園寺に行きたいな。まだかな?まだかな?」


   未夢のところから、平尾町までは1時間程度かかる。







   《えーっ次は平尾町前ー平尾町前ー》





     −次だっ−




   そう思った未夢はそそくさと上に上げておいた荷物を降ろした。
      
    

     プシューっと電車のドアが開いた。




    「う〜ん!!!やっぱり平尾町はいいいなぁ!!」


    そういうと荷物を持って改札口を通った。


    そして、西園寺に一直線に進んでいったのだった。


  西園寺の石段の前まで着くと
   未夢はその懐かしい長い石段をながめた。

    
    そして一歩、また一歩と
 西園寺の懐かしい思い出を振り返りながらその石段を登り始めた。


  彷徨のいえに来たこと、ルゥ君が来たこと、ワンニャーが来たこと。
 

  ルゥ君が学校に来ちゃったこと・・・・・・・。


  
すべての思い出を振り返る前にその西園寺へと続く石段は終わった。



   未夢は大きく息を吸うと、大声でこういった。



   「ただいまっ!!!西園寺!!!!」


   そして、西園寺の門をくぐり、玄関へと向かった。

玄関を開け、今度は



   「彷徨!!!ただいまぁ!!!!!!!!」

  さっきよりももっと大きな声でいった。

  西園寺は未夢がいたころとあまり変わらなかった。

  変わったところと言えば、ルゥとワンニャーがいなくなったため、

   家の中が静かだということ。










   




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