メッセージは風にのって 作:坂下あみ
  〜The post office of the heart〜  →

――――――――貴方からのメッセージは、風にのってきっと届くはず・・・。
       たとえ、宇宙の果てからの便りでも。――――――――





「ふゎ〜ぁ・・・・・」
「ルーナ様。大丈夫ですか?」
オット星。ルゥの家では、ワンニャーとルゥの姉が何か話し合っていた。
「大丈夫よ。やるって決めたからには、ルゥに最高の誕生日プレゼントを用意しなきゃ!」
そう言って、ルーナは、ルゥの誕生日プレゼントの用意をしていた。

すると、二人がいる倉庫の外で何か物音がした。
〈ガタン〉
「あれ?おかしいなぁ・・・どうして開かないんだろ?」
どうやら、音をたてた主はルゥの様だ。
「ワンニャー!お姉ちゃん!居ないの?」
外からは、ルゥの声。中では、あわてて倉庫の中を片付ける、ルーナとワンニャー。

しばらくして・・・―――――
「はぁ、はぁはぁ・・・ご、ゴメン。ルゥ・・私、自分で鍵かけたのに、開けるのに手間取っちゃって・・・。」
必死に誤る〈誤魔化す〉ルーナに向かって、ルゥは、ポツリ・・と、
「何のために、魔術学校に通ってるわけ?」
そうだった。ルーナは何年も魔術の勉強をしていた。
「お姉ちゃんって、重要な所がいつも抜けてるよね〜・・・。で、ワンニャー!ちょっと聞いてもいい?」
ルゥの顔が、少しからかうような笑い顔から、急に真顔に戻った。
「何でしょう?ルゥちゃま。」
「子供が育つスピードって地球とオット星とでは違うんだよね?どれくらい違うの?」
「それは、私にもわかりません。」
「ルゥの場合は、普通の地球人と比べると二倍のスピードで育って来たのよ。」
横から、ワンニャーに代わってルーナが答えた。

そう、地球とオット星では、子供が成長するスピードは違うのだ。
「この本を参考にしなさい。」
そう言って、ルーナは、一冊の分厚い本をルゥの手に持たせて、倉庫を出て行った。
「あっっ!!!待ってください!ルーナ様〜。」
慌ててそれを追いかけるワンニャー。

その姿を見て、ルゥは、少し寂しそうな笑みを見せた。

★☆★
その頃の地球――――

「ふわぁ〜ん・・・わぁ〜ん!」
西遠寺の居間、泣きつづける愛娘を前にして、父・西遠寺彷徨は困っていた。
「未宇〜・・いい加減泣き止んでくれよぉ・・」
一方、娘である未宇は、
〈パパとママが仲直りするまで、絶対に泣き止みやしないんだからっっ!!!〉
と思って泣いていた。もちろん、彷徨はそんな事に気付くはずもなく・・
ふと、横から彷徨の永遠のライバル?である、光ヶ丘望と親友&幼なじみである黒須三太が、
『ねぇ、未宇ちゃんは、もしかすると夫婦ゲンカ終了まで泣き止まないのかもしれないゼ〈よ〉?』
と言ってきた。

その言葉で、”はっ”とした。
あの時と同じだ・・・。
ルゥも今の未宇と同じ様にして、自分と未夢を仲直りさせてくれた・・・。
そうか!そう思うと、娘にまで心配をかけていた、自分が情けなくなってきた。
そして、気付いた時には、素直に未夢に頭を下げていて・・・。


その夜、縁側で・・・
「ねぇ、彷徨!今日、何であんなに素直に謝ったの?」
そう訊ねてくる未夢のひざの上には、泣き疲れて眠ってしまった未宇が居た。
「ルゥの事・・思い出してた・・・」
ぽつり・・・ぽつり・・・と喋る彷徨に未夢は、目を見開いた。
普通にしていても、人目を引き付けるほどの整った顔の持ち主である彷徨。
その整った顔が、月の光をあびてきれいに光っていたから・・・・。



★☆★☆★☆
「トントン。」
今、ルーナは、ルゥの部屋のドアをノックしていた。
「ルゥ?居るの?ルゥ!晩御飯だって、ワンニャーが呼んでるよ。
るぅ?入るよ。」
そう言って、ルーナは、部屋の中に入ろうとした。が、ルゥの部屋には、鍵が掛かっていて入れそうにもない。
「しょうがないわね・・・」
ルーナは、諦めて、着ていたマントのポケットから、杖を取り出した。
「本当は、家では、魔法を使うことは禁止なんだけど、もうすぐ卒業だし、少しなら大丈夫よね・・。」
そう呟いてから、

「アロ○モラ!」
とドアの取っ手を杖で”コツコツ”と2回叩き、唱えた。

すると、ドアは抵抗もせずに開いた。
ルゥの部屋。ルーナは部屋の中をグルリと見渡した。
そして、机の上でさっきルーナが渡した本を読んでいる途中で眠ってしまったのだろうと思われる、ルゥを見て、優しく微笑んでから、
「ルゥったら、ぐっすり寝てる・・」
毛布を持ってきて、ルゥにかけてやると、寝言が少し聞こえた。

「未夢ママ・・彷徨パパ・・・未宇・・・」

くすっ。またあの子、地球の夢を見ているのね。
そう思うと、ルーナは、誕生日プレゼント作りのやる気が出て来た。

「ルゥちゃま、お休みになられていたのですか?」
その声に、ルーナが振り向くと、ワンニャーが立っていた。
「うん、どうやら、彷徨さんと未夢さんの夢を見ているみたい・・・」
「そうですか。良い夢を見ていらっしゃると良いですね。」

現在PM;7:13。
ルゥは、今13歳。あの頃の彷徨と未夢と同じ年齢。
その時はまだ、ルーナとワンニャーは知らなかった。
夢に出てきていたのは、彷徨と未夢だけじゃない・・・
未宇も出て来ていたということに・・・。




★☆★☆★
「す〜っ。」

西遠寺の居間。
そこには、彷徨とその腕の中に抱かれた未宇が眠っていた。
その隣には、そんな親子を優しく見守る未夢の姿があった。

そう、オット星でルゥが見た夢は、居間の西遠寺の様子。

「未宇・・・あの頃のルゥ君に似てるな・・・不思議、ルゥ君は男の子で未宇は女の子なのに・・
なんで・・・なんでこんなに・・・っ。」
未夢の新緑色からポタリと涙が落ちた。

「ん?未夢っ・・・!?どうした・・?何かあったのか?」
未夢の泣き声で目が覚めた彷徨は、自分のすぐ隣にいる未夢が、きれいな瞳に涙を溜めて泣いている光景を目の前にして、
驚いた。
ついさっきまで、にっこりと優しい笑みを浮かべていたのに・・。
「おい、未夢っ!どうしたんだよっ??」
彷徨は、抱いていた未宇を隣に寝かせて、毛布をかけた。

「――っっ、だって・・・今の未宇の寝顔を見てたら、ルゥ君の事、また思い出しちゃってっ・・・。
それに、未宇とルゥ君、すごく似てて・・だからっ・・ひっく・・」
彷徨は、少し考えてから、にっこりと微笑み、
「しょうがないだろ?ルゥと未宇は、一応、義理だけど兄弟なんだぞ?」

確かに、彷徨の言うとおりだ。
未夢と彷徨は、ルゥの地球でのパパとママだったのだから。
「でもでもっ。
義理の兄弟が似てるってちょっとおかしいよぉ・・・。」

未夢はまだ泣き止まない。
すると・・
「彷徨パパ、未夢ママを泣かせないようにねっ!
それと、未宇は、二人の心が読めるからご用心を。
オット星から三人を見守っています。
僕は、今13歳になったよ。ありがとう。」

空耳だろうか?どこからか、ルゥの声が聞こえた。
「ねぇ、彷徨!今、ルゥ君の声・・。」
未夢が泣いて掠れてしまった声でそう言った。
「あぁ、俺にも聞こえた。けど、なんか、未宇の辺りから声が聞えたような・・・」

未宇は二人の心が読める。
それは、未宇とルゥの心が繋がっているから。
今さっきのルゥからのメッセージ。
それは、たった今、未宇の心の中の郵便ポストに届いた、
素敵な贈り物だったのだ。





                          〜第二話へ続く〜






あわぁわぁ〜。
変な文になってしまったぁ〜(涙

ここまで読んでくださった皆さん、ありがとう&申し訳ございません・・。
でももし、神様のようにお優しい方は、続きも読んでやって下さいマシ。


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