全ては黄昏となりて外伝 (別エンド)

彷徨3

作:しーば

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彷徨2の続編です。



23時30分に彷徨は未夢実家のある町の駅に着いた。

すぐにでも未夢の所に行きたい。
彷徨は、駅を出て走り出す。長い坂道を登り、高い丘の上に未夢の家は有る。

道路には街灯が照らした明かりが、上の方へと連なるように続いている。
あの頂上まで行けば未夢の家はすぐだ・・・。

坂道を一気に登り切り、未夢の家の前に辿り着く。
荒れた息を整える事も無く、インターホンも鳴らさず、彷徨は持っていた鍵で玄関を開けた。

中に入った同時に「未夢ー!」と想い人の名前を呼ぶ。
だけど、家の中から返事は来ない。

彷徨は階段を登り未夢の部屋の前に立った。
「未夢・・・、居るか?」
しばらく経っても返事が来ない、彷徨は恐る恐るドアノブを回し、ゆっくりと扉を開けた。

明かりが消えている為、部屋の中はよく見えない。
ベットを見ると、枕に頬を摺り寄せ、緩んだ口からは笑顔の表情の未夢が寝ていた。


未来から来た幽霊の未夢と俺と同じ歳の未夢・・・。
今目の前で寝ている未夢は、どちらの未夢なんだろうか?
手紙の内容・・・本当は嘘だったとか・・・?

未夢との記憶が奪われる事と、今までと違う未夢を実感した彷徨は迷っていた。
目の前で、寝ている未夢が幽霊の未夢だとして、俺は何が出来るのだろう?
俺に手紙を書いた未夢は、今何処に居るのか・・・。

だけど、今俺の前で寝ているのは未夢にしか見えない。
実際に話して見ないと、どちらかかは分らない・・・。

未来の未夢であれば俺の事を拒否するだろう・・・。

「う〜ん、彷徨ぁ・・・いちごタルトちょっとちょうらい・・・。」
目を閉じたまま、寝言?を言う未夢、顔を見ると口元からよだれが落ちかかっている・・・。

落ち着いてきた彷徨が少し考え込んだ。
夜中に、1人で住んでいる女の子の家に勝手に上がり込み・・・寝込みを見ている・・・
だけに留まっている。

枕に落ちそうな未夢のよだれをティッシュで拭く為に頬に触れた時
普通に犯罪だよ・・・な、と考え込んだ。

「んっ・・・」と枕の下に潜っていた未夢の手が動き、未夢の口元にある彷徨の手を握った。
一瞬起きたのか?と思って手を引こうと思ったが、未夢の頬と、掌に俺の手が挟まれて抜け出すことが出来なかった。

彷徨は手に未夢の温度を感じながら、スヤスヤと眠り続ける寝顔を見つめていた。
部屋では、時計が秒針を刻む音だけが響く・・・。

彷徨は未夢の寝顔を見つめていると、段々と吸い寄せられるような錯覚を覚えた。
閉じられたまぶたのまつげ、軽く閉じられた唇、パジャマの隙間から見える首筋。

無意識のうちに、彷徨は未夢へと近づいて行く。


「彷徨・・・だめ・・・」


寝ている未夢が発した言葉と同時に、未夢のまぶたから水滴が溢れ、頬と未夢の手で拘束されている彷徨の手まで辿り着いた。

気付かれた?と彷徨は焦ったが、未夢のまぶたは開かない。
言葉はまだ終わっては居なかった。


「しんじゃ・・・だめ・・・」


えっ?
彷徨は、未夢の言葉を聞いて、一瞬息が止まった。

「おねがい・・・しなないで・・・」


彷徨の手に伝わる涙の量が増えている事に気付いた。
さっきまでいちごタルトと幸せそうに言っていた表情が、苦しむ様な表情へと変わっていった。

耐えられなかった彷徨は言葉を発してしまった。

「大丈夫だ・・・未夢、俺は死んでなんかいないよ・・・」

その言葉に反応するように涙で溢れた未夢のまぶたが開き、潤んだ瞳で彷徨は見つめられた。
彷徨を認識した瞳は一度大きく開いた後に、閉じるぐらいに細くなり、涙が溢れ出した。
握られた手を、強く未夢の頬に押し付けられる。

「かな・・・た・・・彷徨っ・・・彷徨!!」
かすた声で、未夢が彷徨の名前を何度も呼び、彷徨の手の感触を頬で確かめる。

「私、怖い夢見てた・・・」
彷徨の手にすがって泣く未夢に「大丈夫、俺はここに居るよ」と、未夢の顔を包む様に抱きしめた。

嗚咽をあげ泣き続ける未夢を力強く抱きしめる。

「私が死んじゃって、幽霊になった私が時空の歪で過去をさまよって・・・彷徨を・・・」
彷徨の胸から顔を上げ、上目遣いで彷徨を見る未夢。

彷徨が腕の中に居る未夢は俺と同じ歳の未夢じゃない。と思った瞬間。
腕の中から未夢の顔が迫り、彷徨の唇が未夢の唇で塞がれた。

すると、彷徨の意識が段々と薄れ、未夢を抱きしめていた腕の力が無くなり、代わりに背中に腕を回されて、抱きしめられた感覚だけが最後に残り。

「ごめん・・・夢なんかじゃないよね・・・」
唇を塞がれたまま、頭の中で未夢の声が伝わって来た。


まだまだ終わりません。( (ミ´ω`ミ))
くっ、背景描写が全然書けないφ(((('A`)))

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