全ては黄昏となりて外伝 (別エンド)

彷徨

作:しーば

 →(n)


9周年と知りまして、何かやらないと!と慌てて構想しだした物です。


「未夢」


俺は未夢にとってどんな存在だったのだろう?
一緒にいた同居人、ただのおせっかい、五月蝿い奴だったのかな?

最近になって俺の感情がおかしくなってきて、未夢と一緒に過ごしたはずの記憶が段々と薄れてきている。

ワンニャーとルゥの記憶ははっきりと覚えているけど、そこに一緒に居たはずの未夢の姿を思い浮かべる事が出来ない。


あの時、俺は未夢に持っていた感情を全て伝えたつもりだった。
「俺は未夢が好きだ」と。
だけど、結局は変にはぐらかされて未夢は未夢の実家に戻ってしまい、返事という返事は貰っていない。

ショックのせいなのか・・・?

それとも、俺が無意識の内に未夢を忘れようとしているのか・・・?


でも、未夢は今までと何の変わりも無く、この街に遊びに来る事もある。
俺からの告白があってから、未夢がこの平尾町に来る事はあっても、俺とは一度も会って無い。

どうやら、花小町達と集まってお泊り会と言うのをやっているらしい。






「ねぇ、知ってる?未夢ちゃんに初めての恋人ができたんだって。」

「ええー!本当に!未夢ちゃん最近急に大人っぽくなったな〜て思ってたんだけど、それが原因だったのかな」

「うん、でも・・・私てっきり、未夢ちゃんの恋人って西遠寺君だと思ってたのに」

「・・・そうだよね〜、どうしたんだろうね」


委員会が遅くなり夕暮れの教室に戻って来た時、「未夢」と言う言葉を聞いた。
俺は入り口前で停まり、扉を背にして教室の中の会話に聞き耳を立てた。


未夢に恋人。


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥が熱くなる感覚に襲われた。

教室の2人が「もう帰ろう」と話を変えたのを聞いて、俺は逃げるように隣の教室に飛び込んだ。

夕方7時になっても、オレンジ色の光りが外から教室に入り込こみ、黒板には光りと影の境目が斜めに走っていた。

俺はその部分を眺めながら、未夢の事を考えた。

2人で過ごした思い出の場面を思い出そうとしても、なかなか浮かんで来ない。

隣に居た未夢の本物の笑顔、何かを我慢して辛そうな顔、今にも泣きそうな顔。

もっともっと沢山の事があって。

そんな未夢と一緒に居たいと俺の中だけで出来上がった感情。


胸が苦しくなって、無理に深呼吸を繰り返す。



無理矢理自分自身に
「未夢にはもう恋人が出来たんだから良かったじゃないか」
「諦めが付くだろう」
と何度も言い聞かせた。


未夢を一方的に思っているだけのこの気持ち、どうにかしないと駄目だよな。


今まで投稿した「全ては黄昏となりて」とはちょっと違う物です。
まだまだ続きますよφ(・ω・ )かきかき

 →(n)


[戻る(r)]