作:ちーこ
オカエリ、おそかったね。
一日の疲れもその一言でふっとんだ。
晩ご飯できてるよ。
今までさして空腹を感じていなかった腹の虫がぐーっとないた。
今日の晩ご飯はなんでしょう?
現金にも思わず笑みがこぼれる。
そんな質問をするときは必ずオレの好きなもの。
かぼちゃ。
ん〜かぼちゃのなんでしょう?
煮物?
ぶぶーっ。
…スープ?
ファイナルアンサー?
…ファイナルアンサー。
台所からいい匂いが漂ってくる。
まだ答えは教えてくれないらしい。
居間の襖を開けた。
正解!
食卓の上に並んだ料理の中。
湯気を立てたかぼちゃのスープ。
ご飯にしよ。
あぁ。
ちゃんと手洗ってうがいしてね。
…わかってるって。
いただきます。
やっぱり先に手が伸びたのはかぼちゃのスープ。
…んまい。
よかったぁ。
ほっとしたようにはにかんだ顔がかわいい。
みーゆ。ありがとな。
今度はぽっと顔が赤くなった。
あ〜も〜なんでこいつはこんなにかわいいかなぁ…
オカエリ。のひとことで
帰ってきたんだな、ここがオレの場所なんだなと思う。
それが毎日のことであったとしても。
たったひとことで
たったひとことで
ここまでオレをしあわせにする言葉を他に知らない。
オカエリ。
(初出:2003.03)