ちいさな診療所。より

Santa Claus Is Comin' To Town

作:ちーこ

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ねぇ、聞こえてくるでしょ。
私からメリークリスマス
Santa Claus Is Comin' To Town!






「ねぇねぇ、そっちは準備できた?」
「ばっちりOK!」

西遠寺の庭から未夢さんと彷徨さんの声が聞こえてきます。
いったい、こんな夜中に何をしているのでしょう?

「じゃぁ、あとは…この荷物を積んだら終わりだね。」
「その辺、すべるからこけるなよ。」
「わかってるってば。そんなことでみんなのプレゼントつぶすわけにいかないじゃない。」

プレゼント?

明日は…何の日だったでしょうか…。
あぁ…彷徨さんの誕生日!
それでパーティーの準備を………しているわけじゃないみたいです。

「雪、降ってるね」
「今年もホワイトクリスマスじゃん。」

クリスマス!
そうそう、忘れるところでした。
明日はクリスマスじゃないですか。
わたくしも何かお手伝いを…ん?
そっと窓の外を覗いてみるとおふたりとも真っ赤な服を着て…
もしかして…もしかして…あれはサンタクロースじゃないですか!

「そりの調子はどう?」
「良好!それより…そろそろ出発しないと…間に合わないんじゃないか?」
「そうだね。んじゃぁ…行こうか。」

ひょいと彷徨さんが大きなそりに飛び乗りました。
後ろには荷物がたくさん積んであります。

「ほら。」
「ありがと。」

未夢さんに手を伸ばして、ひっぱり上げてそりにのせると彷徨さんは手綱を握りました。
…手綱…?
前には…あっ、あれがトナカイというものなのでしょうか!?
鼻が光っています。

「んじゃ、行くぞ。出発ーっ!」

そりがふわぁっと空に浮かび上がりました。

「あっ、彷徨ちょっとまって。西遠寺にだってちゃんとおいていかなきゃ。」
「あぁ、そうだな。」

そりがどんどんと近づいてきます。
わたくしの目の前の窓ががらっと開きました。

「こーら、夜更かししてないで早く寝ろよ。」
「サンタさんは、いいこのところにしかこないんだからね。」

そういうと未夢さんはぽんとわたくしの手に四角い箱を乗せました。

「そろそろ、ホントに間に合わなくなるぞ!」
「るぅくんのところにもおいてあるからね。じゃぁ、行ってきます。…これは、おまけ。」

そういうと未夢さんはわたくしのほほにちゅっと口付けました。
ぼんっ!
ななな…そ、そんな…おっと星では…

「じゃぁ〜ね〜。」

空に浮かんだそりの上から未夢さんが手を振っています。
降り積もる雪に乗って彷徨さんたちの会話がちいさく聞こえてきます。

「オレにはくれないの?」
「ばかっ!何言ってんのよ」
「いーじゃん。サンタさん?」
「彷徨だってサンタさんでしょ。」
「んじゃ…オレから。」

しゃんしゃんしゃんしゃんしゃん

鈴の音が鳴りそりは夜空を滑り出しました。

ふぁぁぁぁ

そろそろ眠くなってきました。
わたくしはもぞもぞと布団の中にもぐりこみました。
どこかからかすかにしゃんしゃんと聞こえるのがなんだかとてもいい気分です。





朝、目が覚めると枕もとには昨夜の四角い箱とメッセージがありました。
はて…こんなメッセージついていたでしょうか…?

Merry Christmas!!
あなたにとって楽しいクリスマスでありますように






「おはよ〜わんにゃー。」
「今日はずいぶん遅かったんだな。朝ご飯できてるぞ。」
「あっ、すみませんです〜。」

…未夢さんも彷徨さんも…普通ですよね…

昨日のは夢…だったのでしょうか…

You better watch out you better not cry you better not pout
I'm telling you why, Santa Claus is comin' to town
Santa Claus is comin' to town, Santa Claus is comin' to town


未夢さんが英語の歌を歌っています。
どうやらサンタクロースがこの街にも来たみたいです。



(初出:2002.12)

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