作:あゆみ
注)この作品は悲しみ多めのストーリーです。苦手な方は戻られることを望みます。
青琥珀 〜ブルー・アンバー〜
静かに燃える恋心
それから数日後――
いつものように授業を終えて、もう直ぐ西遠寺に着くという時、携帯がなった。
親友の三太からかな、なんかあったんだろう、そう思いながら出ようとすると、
着信画面は三太ではなく、この間アドレスを交換した未夢からの着信だった。
トクリとなる胸の鼓動を一瞬で落ち着かせ
俺は通話ボタンを押した。
「もしもし?未夢か?」
着信画面から未夢からであることは分かっているのに
俺は気を紛らわせるためにそんな事を聞いた。
すると、携帯の向こう側から泣いているような声が聞こえてきた。
「どうした?」
俺がいくら待っても、喋り出さない電話の相手の未夢に問いかけると、
小さな声が雑音と共に聞こえてきた。
「か……彷徨……?」
「どうした……未夢?」
俺はその声を聞いて先ほどの動揺が吹っ飛ぶくらい
未夢がなんで泣いてるのか心配になった。
「どうした?未夢。何かあった?」
俺がそう言うと、涙声で小さくこう聞こえてきたんだ。
「彷徨―――会いたい」
これは相当なんか大変なことが起きてるのかも、
俺はその小さな声を聞いてそう思った。
「――いいよ。今どこ?俺学校終わったし、迎えに行くよ」
俺がそう言うと、また小さく「ありがとう」 と声が聞こえてきた。
一体何があったんだろう。何年経ってもやっぱり未夢は未夢だ。
いつになっても悲しみを溜め込んで一気に爆発させてしまう。
俺は急いで制服を着替えて未夢が待っている場所に向かった。
多分、かなり飛ばしていたと思う。
それだけ、心配だった。
アクセルを踏んで、タイヤの擦り切る音が響く。
勢い良く飛び出し、全速力で駆けていく。
風を切って、宙を浮く身体が、とにかく未夢の側へ急がなければと、後押しする。
指定された場所はこの前俺達が再会した場所
喫茶店「ブルーアンバー」の前だった。
◇◇◇
俺が急いでその場に着くと、未夢の頬に涙の跡が筋のように残っているのを見て、
しばらくここで泣いていたんだろうと悟った。
「未夢、どうした?びっくりしたよ。急に電話なんか……」
「ごめんね……、でもどうしたらいいかわかんなくって」
細い肩を小刻みに揺らしながらないている未夢に
抱きしめたい……だけど、だめだ。そんなことをしていたら。
俺は、一瞬思った気持ちをかき消して、未夢の手を引っ張った。
「とにかく、入ろう。こんな手が冷たく……、いつからいたんだ?ここに」
触れた手がかなり冷たくて、俺はどうしようもなく可哀想に思った。
胸がキリキリする。なんでこんなに悲しんでるんだよ。
なんで泣いてるの?
「なんか……、ごめんね。忙しいのに……。ほんとごめん。ありがとう」
「いいよ、俺のことは。気にするな、慣れてる。」
俺がそう冗談混じりに言っても、何も返さずグッタリとしている。
「……とにかくあったまろう。冬だっていうのに、コートも着ないで
こんな薄着してたら風邪ひくよ。
しょうがないな……いつになってもやっぱり世話が焼ける」
未夢も学校帰りなのか・・・始めてみる知らないセーラー服だけで凍えていた。
俺はとりあえず、未夢に自分の着ていたブルゾン脱いで、背中からかけてやった。
体が小さく震えていて、凍えているようで、そのまま消えてしまいそうだった。
「ありがとう……」
「また、ありがとう?」
俺がそう言って、顔を覗き込むと、未夢はちょっとだけだけど笑顔になった。
それから、俺達は、とりあえず、目先にある「ブルーアンバー」に入った。
「まずはあったまろう。それから話を聞くよ」
俺が促すと、今度は何も言わずにただコクリと頷いた。
しばらくそうして、体が徐々に温まってきたという頃、未夢が言葉にした。
「ごめんね。」
「だからさ、いいよそれは・・・未夢の泣き虫には慣れてるよ」
俺はまた3年前のことを思い出して、つい笑ってしまった。
「………………」
いつもなら、というか昔なら、また顔を赤くして怒るくせに、今日は違った。
ずっと俯いたまま、何もしゃべらない。
「未夢、何があったの?ゆっくりでいいから聞かせて」
俺は未夢の様子を見ながら、そう聞いた。
しばらく時間が流れて、俺はじっと未夢が話し出すのを待っていた。
俺が出来ることがあれば何だってしてあげたい。
だけど何があったのか分からないと、どうしようもない。
俺が、黙り込んでいる未夢にもう一度声をかけようとした時、
未夢がようやく言葉にした。
「あたし、瑞樹さんと別れようと思う……」
「ちょっと……、待て。なんでそうなってるの?」
俺はまた大変なことが起きたんだろうとは思ったけれど、
まさかそんな言葉が出てくるとは思わず、驚いた。