作:あゆみ
翌朝ベットから置きだした未夢は制服に着替えて階下に降りた。
『今日』が『いつ』なのかを確かめなければならない。
台所に入ると珍しく未来が朝食の支度をしており、優は朝刊を読んでいた。
「おはよ」
朝の挨拶をしながら未夢は優の肩越しから朝刊を覗き込んだ。
金曜日だった。
また一日『飛んだ』わけね・・・。
しかし今回は自分でも意外なほど驚きは少なかった。
こんな異常な現象も三度目となれば少しは慣れてしまうらしい。
「未夢。今日は体大丈夫なの?」
そう未来が問いかけてきたのは、木曜日の朝の事があったからだろう。
優も訝しげなし線を未夢に向けていた。
「うん。平気よ。」
未夢が明るく答えて見せると、何も言わずに新聞に目を戻した。
なんとなく不機嫌な感じがするのは気のせいだろうか?
「今朝はトーストにしたけど、いいかしら?」
「うん。」
未来に答えながら、未夢は冷蔵庫から紙パックのオレンジジュースを取り出した。
コップについで一口飲む。
「ところで西遠寺くんって結構素敵ね。」
いきなり妙なことを言われて未夢はむせた。
「あらあら」
未来が面白げに笑う。
「な、なんでママが西遠寺君のこと知ってるのよ。」
気管に逆流した牛乳に苦しむ未夢に未来は妙な目を向けた。
「なんでって、昨日、家に連れてきたじゃないの。あなたが。」
なによ、それ?
口に出てしまいそうになったその言葉を未夢は押さえ込んだ。
『昨日』つまり木曜日はその後半を未夢はまだやっていない。
その間にそういうことがあったのだろうと気づいたからだ。
「あ、そうか、へへ、そうだったね。」
慌てて言いつくろう未夢を未来は不審そうに見つめた。
「本当にこのごろ未夢変よ。頭痛やら、貧血やら・・・」
「ごめんなさい、・・・でも何でもないの、心配しないで」
タイムトラベラーになったなどということは幾らなんでもいえるわけがなかった。
かえって両親に別の意味での心配が増えてしまうだけだからだ。
「それとも・・・」
未来はからかうような表情になって続けた。
「それも西遠寺君のせいだったのかしら。」
「ママ!コーヒーもう一杯入れてくれ。」
優が不機嫌な口調で言った。
「はいはい。」
未来は答えクスクス笑いながら、未夢につぶやいた。
「未夢がボーイフレンド連れてきたから動揺してるのよパパ。『未夢はパパが一番だって言ってたじゃないか〜』ってね昨日の夜大変だったのよ。」
「・・・・」
「安心しなさい。ママは未夢の見方よ!」
「全く、なに変な気を回してるのかしら・・・」
未夢は大きくため息をついて玄関からでた。
確かに西遠寺彷徨は理性的な顔立ちをしているし、スタイルもいい。
なにより、いつも堂々としていて、頼りがいがあるように見える。
未来が『結構素敵ね』というのもわからなくはない。
しかし、西遠寺彷徨には性格に難点があった。
言っている事は知的で、的を得ているのだがひどく冷たい。
あれでもっと優しかったらいうことないんだけどなぁ・・・
などど考えつつ門を出た未夢は
「おはよう、光月」
突然の西遠寺彷徨の声に文字通り飛び上がってしまった。
門柱に背中を持たせかけるようにして、学生服姿の西遠寺彷徨が立っていたのである。
「な、ななななんで、こんなところにいるの!?」
「なぜって」
西遠寺彷徨は未夢の驚き振りを面白そうに眺めている。
「この一件の片がつくまで、君から目を離さないと決めたからさ。学校内ではもちろん、登下校のときもな」
「ボディーガードって事・・・?」
「それもあるし、データ―収集の意味もある。例の現象はなるべく、俺が見ているところでしてほしいんでね。さて、いこうか。」
西遠寺彷徨は未夢を促して歩き出した。
「・・・今日は『いつ』から来たか訊かないの?」
小走りに西遠寺彷徨の元へ駆けつけ、左肩に並ぶと、未夢はそう訊いてみた。
「水曜日からだろ?」
未夢は目を丸くした。
「・・・なんで知ってるのよ。」
「昨日聞いたよ君に。」
「昨日の私に・・・?」
「そう。光月、君は今日これから金曜日を過ごしたあと、木曜日の掃除の時間に戻る。」
「掃除時間・・・階段から落ちたとき?」
「そうだ。・・・心配しなくてもいい。ちゃんと俺が受けとめたから。」
「西遠寺君が?だって・・・」
「光月が木曜日の掃除の時間に階段から落ちたってのは水曜日の昼休みに聞いてたからな。一応待機していたのさ。その証拠に怪我なんかしてないだろう?」
「・・・ありがとう」
未夢は一応お礼を言ったがこれから起こることに関して礼を言うのも妙なものである。
「・・・ところで、その・・・昨日の放課後?西遠寺君私のうちにきた?」
「ああ。落ち着いて話したかったし、調べたいものあったからな」
「どんな話をするの?」
「それを訊いてどうするんだ?」
西遠寺彷徨はからかうような笑みと共に未夢を見た。
「だって・・・気になるんだもん」
「別に今聞かなくても、『昨日』になればわかるさ。ここで繰り返すのは俺にとっても、君にとっても二度手間だ」
「でも。」
「それに必要ないときにいらない情報を聞くと有害だかね。聞かないほうがいい。あぁそっちじゃなくて右曲がってくれ」
と西遠寺彷徨は道を指示した。
「だって学校行くんでしょ?」
未夢は首をかしげた。
「知り合いに会うとまずい」
「・・・私と噂になるから?」
「噂?」
西遠寺彷徨は、未夢を見てそして笑った。
「そうじゃない、俺も光月も午前中の授業に出ないからだ。」
「・・・どういうこと?」
「いいから右だ。裏門へまわる。」
〜注意〜
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だぁ!だぁ!だぁ!設定ではどうなるか考えて書いたものとなります。
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「タイム・リープ・・・あしたはきのう」
著者 高畑京一郎