明日は昨日

そして日曜日 3

作:あゆみ

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「ごほん」

わざとらしい空咳が聞こえた。

「仲がよいのは結構ですがね。ここにも一人いることを忘れちゃいませんか?」

慌てて西遠寺彷徨から離れると南がニヤニヤと笑っていた。
未夢は真っ赤になった。

「とにかく、涙をふきなよ。かわいい顔が台無しだぜ。」

「ん・・・」

未夢がハンカチを取り出すと、南は西遠寺彷徨にいった。

「立てるか?」

「ああ」

西遠寺彷徨はうなずいたが、立ち上がろうとして、顔をゆがめた。
右手で脇腹を押さえている。
刺されはしなかったものの、やはり何かしらのダメージはあったのだ。

「西遠寺君!」

「大丈夫だ。」

慌てて支えようとする未夢に西遠寺彷徨はうなずいて見せたが、その表情は
苦しげだった。
南は鋭い目つきで西遠寺彷徨の様子を観察していたが、別にたいしたことはないだろうと判断したのだろう。表情を緩めた。

「あんなんで気絶するなんて、ちょっとだらしないんじゃない。腹筋がさ。」

「鍛えておくよ。」

西遠寺彷徨は苦笑いした。

「気絶といえば・・・あれも気絶してるのか?」

蒼井のことである。

「あぁ。もうしばらく、あのままにしておく。後は上の指示を仰がないとな。」

「上の指示?」

西遠寺彷徨は不審な顔で南を見た。

「南くん、時間・・だっけ?時代・・・警察なんだって。」

未夢が間に入って説明した。

「なんだそりゃ。」

彷徨はさらに不審な顔をする。

「時空警察だよ。光月さん。」

南は苦笑した。





****






それから、南は今回の事件の経緯と、自分の素性をかいつまんで
二人に説明した。
まだ、先であろう未来の技術の話をされてもチンぷんかんぷんの未夢と。
黙って最後まで聞いていた彷徨はやっとのことで口をあけた。

「まぁ、未来がどうこう言われてもぴんとこないが、
 その蒼井の変えたいストーリーとやらは教えてはもらえないのか」

「残念ながら守秘義務」

南は両手を宙に仰いだ。

「まぁ、そういう法律がある。正しくはできる。かな?なら仕方ないけど、
 それより、そういう先(未来)の話やお前の素性は話してもいいのか?」

言われてみればそうだと未夢も思った。
時空のひずみだの、警察だの、ストーリーだのというのは
守秘義務に反さないのだろうか?

「まぁね、そりゃ反するさ。だから、蒼井の犯行を防いだときにも宣言したけど
 『関係者の記憶操作』はさせてもらう。」

「そうか・・・」

「えっ?なにがそうなの?」

「まぁ、ちょちょっとお二人の記憶をいじらせてもらうってことだね。
 そういう技術があるんだ、その先の時代はさ・・・」

「だから、そんなにぺらぺらしゃべってるんだな。」

「・・・。」

「まぁ、操作といっても時空警察と蒼井に関する記憶だけね。
 後はそのまま、申し訳ないけど、あらかじめ予定されていたストーリーではあるんだ。
 今回のことは。」

「そうか・・・ではあるべくしてなったわけか。」

「まぁ、僕はこのまま、そ知らぬふりをしてこの時代のパトロールはするから安心してよ。
 彷徨の幼馴染の南としてね。」

南は二人に向かってにっこりと笑った。

「ありがとう、南くん。あなたのお影で、助かった。」

「いいや、光月さんはこんなこと起こる前に防げればよかったんだけど
 そうしないと二人は出会わなかったわけだからね・・・」





*****







「えっ?」




最後の方は聞き取れなかった。

「じゃぁ、申し訳ないけど、記憶のほうを操作させてもらうよ。」

「あぁ。」

「うん。」

「蒼井のように下手じゃないから安心して。」

「どんな感じになるんだ?」

「そうだな。蒼井関係の記憶は白紙にさせてもらう。
 そして、今回のことは別の・・・うん光月さん目当てのストーカー未遂として処理する。
 彷徨はもみ合って、怪我をした。犯人は代理人をたてる。」

「ずいぶんいい加減だな。」

「まぁ、そんなもんだろ。蒼井のことは少しでも記憶に残さないほうが懸命だ。
 君達の未来を考えるとな。」

「まぁそうかも知れないが・・・」

「なんだ?」

「いい気分ではないな。」

「まぁね。」

そういって取り出したのは葵の持っていた短刀のようなものだった。
南はまずそれを彷徨の頭になでた。
彷徨はされるがままおとなしくしており、短刀が触れた瞬間軽く目を閉じた。
するとしばらくすると、その短刀は金色の光を放ち、消光した。

「彷徨の分は完了。」

と南が言うと、彷徨はその場で気絶したように倒れた。

「10分くらいで目覚めるよ。次は光月さんだ。」

「えぇ、でも・・・その前にひとついい?」

「なに?」

「その・・・南くんは、西遠寺君のことをどう思っているの?」

「え?」

「その・・・ね・・・」

「あぁ!心配しないでいいよ。幼馴染さ。ずっとね。いい友人関係でいたいと思う。」

「そう・・・」

でも辛そうだわ。
未夢は思った。



「彷徨をよろしく。光月さん。」

「えぇ、南くん・・。記憶がなくなっても友達になってね。」

「勿論。」

南は未夢に飛び切りの笑顔を見せた。
これまでで一番の素敵な表情だった。

「南くん。笑っているほうが素敵よ。」

「そう?」

「うん。かわいい。というかきれい。」

そういわれると南は少し頬を赤らめた。

「西遠寺君も、バカね。南くんみたいな素敵な人がいるのに
 A子ちゃんにだまされるなんて」

未夢は笑った。
南は驚いた表情を見せたが、すぐに微笑み返す。

「まったくだわ。・・・おっといけない。」

「そのほうが素敵なのに。」

「男言葉は癖でね。」

「ふふふ。」

「あはは。」


未夢と南は笑いあった。




「ありがと。晶ちゃん。」

「こちらこそ、彷徨をよろしく未夢ちゃん。」

言うと同時に南の記憶処置が施さされた。






未夢と、彷徨と、しばらくその場で気を失う形になった。
空が・・・ゆっくりと夜へと向かっていた。








つづく・・・






〜注意〜
この作品は以下の作品をリスペクトし
だぁ!だぁ!だぁ!設定ではどうなるか考えて書いたものとなります。
メディアワークス 
「タイム・リープ・・・あしたはきのう」
著者 高畑京一郎

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