作:あゆみ
「ところで…月曜日の朝、頭が痛かったって、言ってたな?」
「うん。タンコブもできてたみたいだったけど…。月曜日が空白になってたのは、そのせいだったのかな?」
「かもしれないな…。ところで、どこで、ぶつけた?」
「…わからない。」
未夢は首を振った。
「じゃぁ、どこでぶつけたんだ?」
「それも・・・わからない…覚えてない・・・。」
「…月曜日の朝は、ちゃんとベットにいるところから始めたんだろうな?」
「うん・・・。」
「すると…その前の日か。日曜日だ。日曜日、君は何をしていた?」
「え?」
未夢は戸惑った。これまで、月曜日からこっちのことしか考えていなかったからである。
「・・・家に…いたわよ?」
「ずっとか? 一日中家にこもっていたのか?」
「えっと・・・昼間は掃除したりしてたのよね…。あっ、夕方になってから出かけたわ!
・・・たしか、公園に行って。。。」
「・・・どこの公園だ?」
「風立第一公園。 スーパーたらふくの前の道を」
位置を教えようとする未夢を西遠寺彷徨はさえぎった。
「知っているよ。うちの近くだからな」
「ふうん。西遠寺君ちってあっちのほうだったの。どの辺?」
「そんなことはいいから、教えてくれ。何時ごろのだ?」
「だから夕方よ。もう、暗くなっていたし・・・5時半くらい・・・かな?」
「それで、どうやって帰ってきた?」
「歩いて。」
「道筋を聞いているんだ。」
「だから、スーパーたらふくを回って、こっちへ来るでしょ?
それから本屋を裏に抜けると土手のほうに出るから・・・。」
「日曜日も、そうやって帰ってきたのか?」
「うん。」
「間違いないか?」
「・・・だって、それが近道だもの。いつもそうやってるもん。」
「『いつも』はどうでもいいんだ。日曜日にどうだったかをきいている。
…帰り道になにがあったか教えてくれ。どんな細かいことでもいい。」
「えっと・・・」
未夢は思い返した。
「本屋をとおって・・・スーパーたらたらふくを横切ったでしょ・・・荷物は
何も持っていなくて。」
「それから?」
「ずっと、こう来て・・・それで・・・公園よね。階段を上って・・・。」
「上がって?」
「上がって…それから・・・」
未夢は口をつぐんだ。
思い出せない。
必死で考えてみたが、その先がどうしても思い出せなかった。
「記憶が無いのか?」
「うん・・・タイムリープが始まったのは月曜日からだと思ってたけど。。。
日曜日からだったのね?」
「多分な。だけどおかしいぞ。」
西遠寺彷徨は未夢の目から視線を動かさない。
「…なにが?」
「それ以前。つまりスーパーたらふくを通る前は、切れ目無く覚えているんだろう?
日曜日の昼間も、その前の土曜日も、金曜日も」
「うん。」
未夢はうなずいた。そうでなければ、一番最初に『今日は月曜日だ』と思わなかったはずだ。
日曜日までの記憶があったからこそ、そう勘違いしたのだから。
「だとすると、君はそこでなにかあったか、覚えているはずだ。」
「え?だけどタイムリープしたんだから記憶が無いのも当然じゃないの?」
「違う。」
西遠寺彷徨は首を振った。
「まだ『やってない』から記憶が無いのはタイムリープ現象が始まってからこっちなら考えられる。
だが、今聞いているのはその前のことだ。タイムリープ現象が始まった、そもそもの原因を聞いているんだぜ?」
「…だけど・・・」
「君はそれを知っているはずだ。」
西遠寺彷徨はじっと、未夢の目を見つめた。
じっと目を見る癖を知っているはずなのに思わず未夢はドキリとしてしまう。
「忘れているだけだ。思い出せ、光月。思いだすんだ。」
「……ダメよ…」
未夢は両手で頭を抱えた。
「思い出せない…自分のことなのに思い出せないよ!!」
未夢は自分でもなぜかわからずに叫んでいた。
続く・・・
2007/2/24
〜注意〜
この作品は以下の作品をリスペクトし
だぁ!だぁ!だぁ!設定ではどうなるか考えて書いたものとなります。
メディアワークス
「タイム・リープ・・・あしたはきのう」
著者 高畑京一郎