作:あゆみ
掃除を済ませて、校舎をでると五時を回っていた。
西遠寺彷徨はやはり姿を見せない。
「まったく、どこで何をやってるのかしら」
ふうっとため息をつき、未夢は家路に着いた。
冬も間近な空は暗くなるのもはやい。
住宅街を抜けるころには完全な夜空となっていた。
未夢は舗装された土手の上の道路にでた。
このまま川沿いにすすみ、橋を渡れば我が家はもうすぐである。
なんか怖いな。
未夢はふと思った。
この川沿いの道には、街頭がない。
あるのは星明りと付近の住宅の窓の明かりだけなのだ。
女子中学生が一人で歩くには物騒な道であるのは確かだが、この道を行くのが一番の近道だし
第一今までは、平気で通っていた道である。
今日に限って妙に不安になってしまうのはやはり
西遠寺彷徨ががいないからだろうか。
知らないうちに、自分はずいぶん西遠寺彷徨に頼りきってしまっているらしい。
「だめ!こんなことじゃ」
自分を叱り付けてはみても、不安はなくならない。かえってどんどん膨らんで聞く。
気のせいか、つけてくるような足音が聞こえ、未夢は背後を振り返った。
闇を透かしてみるがよくわからない。
やっぱり気のせいかしら。
思い直す、というより、そう自分に言い聞かせて、未夢は再び歩き出した。
ざっ!ざっ。
わずかな足音
確かに聞こえる。
気のせいではなかった。
「誰?!」
未夢は振り返り、声を張り上げた。
返答は無い。
「・・・ひょっとして西遠寺君?」
やはり返答は無かった。
だが、確かに誰かいる。
息を潜めるようにして未夢の後を追いかける者が、確かにいるのだ。
未夢は未を翻し
一目散に駆け出した。
すると、背後の足音も駆け足に変わった。
もう間違いない。
未夢を追いかけているのだ。
もう、なにが、
『なにかあるときはすっ飛んでいく』よ!
ボディーガード失格だわ!
肝心なときにいない西遠寺彷徨をののしりながら未夢は息を切らせて走った。
そのとき。
目がくらんだ。
前方に、眩い光が出現したのだ。
バイクのライトだった。
助かった・・・
そう思ったとき、ぶおんとエンジン音が高まり、白光が輝きを増した。
「えっ・・・?」
事態の把握ができず、立ちすくむ未夢に、その光は突進してきた。
轢かれる!!!!
そう思った瞬間未夢は体に激しい衝撃を受けた。