作:あゆみ
「っと!こんなもんかな!」
西遠寺から自分の家に帰ってきた。
パパもママも一緒に引越しもかねて今日は家の掃除をしている。
引越しといっても、家具はそのままだし、住人が帰ってくればそのまますむことはできる。
とは言っても、衣類は西遠寺にほとんど持っていったからすることといえば
たまったほこりの掃除と衣類の整理。
今日は土曜日ということもあって午前中授業だから学校へ行ってもすぐ帰宅だろう
ということで編入の日にちをずらして今日は休み。
一日中家と部屋の片付けになったのだ。
今、やっと片付けが一段落したところである。
「はぁ―――ずいぶんと西遠寺に洋服をもっていったのね。」
ポツリと未夢はため息混じりにこぼした。
彷徨ってば私が何を着てても無関心だったからなぁ…。
あ……でも。一回だけ…『似合ってるじゃん』って言ってくれたことがあったっけ……
持ってきちゃった……
それは彷徨の母親、瞳の着ていた浴衣だった。
夏の西遠寺での花火で自分の浴衣を忘れてしまった未夢に
彷徨が自分も小さい頃気に入っていた浴衣を困っていた未夢に『これ、着ろよ』
と貸してくれたのだった。
大切なものだよね…
いいのかな…私がもってて……
この浴衣きた彷徨のお母さんすごい素敵だったな……
彷徨のあのときの表情…すごい困惑してたよね。なのに私ったら後悔するよ!
なんて分かった口利いちゃって…
色々と迷惑かけちゃったな。
はやとちりで、おっちょこちょいで、不器用で。何一ついいところのない私を
ちゃんと導いてくれたんだよね。彷徨は…
あの関係はなんていうんだろう…?
ただの幼馴染とはちがう……お兄ちゃん?弟?お父さん?
不思議だったな…ずっと女子校で男の子と接したこと無いのに
すぐに打ち解けちゃって………何考えてるかほとんど分からなかったけど。
クリスチャンやクラスの女子たちの嫉妬も受けて…(クスっ)
まぁ。確かにかっこいいところはあったよね。
なんで?!と何度思ったか分からないけど…………
いっつも私やルウ君、ワンニャーのことを考えてくれた。
もう、彷徨は側にいないんだよね。
しっかりしないと光月未夢!!
あれ?なんか変だな…彷徨がそばにいないって思ったらなんだか……
……さみしい?……
この感じ……電車でも……
日が一番高いところまで昇り、沈みはじめてきた………
未夢は浴衣を持ったままずっと部屋に座り込んでいる。
こんなに彷徨のことを考えるなんて初めてだな……
っていうか私彷徨のことしか考えていないじゃない///
未夢は顔を横に振り、持っていた浴衣をクローゼットにしまった。
変なの///
「未夢〜〜〜!!お茶にしましょ〜〜!」
下から未来の声がした。
「は〜い!今行く〜〜〜!!」
トタトタ……
「部屋の片付けはどう?!順調?」
未来はカップを持ち上げ言った。
「うん!もともと衣類しか片付けるものは無いしね!!」
「そう…それはよかった。あっそうそう!片づけが一段落したなら。この辺を散歩してきなさいよ!」
名案!!とばかりに未来は言う。
「そうだね。未夢。僕たちがいなかった間に学校通路を並木道にしたらしいよ!見てくれば?」
と微笑みながら優は未来の意見に同意した。
「へー並木道。前はそんな所無かったのにね。」
「何でも、わが町から有名人(未来)がでた!とか言うので記念に植えたらしいよ。
今だとイチョウがきれいなんじゃないかなぁ…」
「パパ見に行ったの?!」
「あぁ。ママの代わりにね。式典のテープカットをしたんだ。」
「そうなんだ〜。それじゃあ…ん!行って来ようかな!!」
と未夢はいすから立ち上がった。
「「いってらっしゃ〜い!!気をつけてね〜」」
と同時に未来と優。
なんだ…二人っきりになりたかったのね……ごちそうさま///
こうして半分追い出されるような形で未夢は玄関の戸を開けた…
続く・・・