MmKk

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作:あゆみ

 →(n)







未夢がうち、西遠寺から出て行った。
いや、出て行ったというのはおかしいか、
元の自分のうちに帰ったんだ・・・。







今日の教室はなんだかいつもより静かな気がした。
朝も未夢にあわせて遅刻ということもしないし
未夢のいた席を見ても天地と小西3人で楽しそうに話している姿も無い
一人いないだけでこんなに変わるんだ…

はは…俺は特に特別だよな…
学校も家も一緒に居たんだから環境が変わりすぎだ…







ふと窓の外を見た
あいつは今何をしているんだろう……
元の学校に戻るといっていた。
親子三人で暮らせるんだ。
時折見せた寂しそうな顔…そんな顔も家族で暮らすようになったらもう無いだろう。
よかったな…未夢…




と、そこに三太が話し掛けてきた。
「お〜いかなた〜。なにしょんぼりしてるんだよ〜。」
「別にしょんぼりなんてしてねぇよ。」
「香月さんが帰っちゃって悲しいのは分かるけどさ〜元気出せよ〜」
「なっ!…なんで未夢がいないからって俺が寂しいんだよ!!」
「またまた〜背中に書いてあるぜ『さ・み・し・い』ってさ!」
「はっ!そんな事あるわけないだろ」




なにいってるんだ…三太…






教室の隅では
「か〜なた君がか〜なた君が未夢ちゃんを思い出してか〜なしんでいるわ〜
キョェ〜〜〜!!!二人は…二人は…ま…まるで…ガー――――!!」
「クリスちゃん!!おちついて―――――――!!!」
ガッシャー―ん!!
「ハッ!!ワタクシったら・・・よいしょ!!」
トントントン・・・













今日は土曜日。午前中で授業は終わり家に帰宅した。


あの時・・・
みんなに見送られる未夢は姿が見えなくなるまで手を振っていた。

今となりには未夢はいない。
一緒に帰宅していた未夢はいない・・・

どうしたんだ俺…

未夢が帰ることは未夢の親父さんやおばさんが帰ってくると未夢が言ったときから
分かっていたことなんだ。


また、俺は親父との2人きりの生活に戻る。
1年前に戻るんだ。
何もおかしいことはない。


「彷徨〜飯にするぞ」
「ああ!!今行く!!」

親父と二人の食事・・・
久しぶりだな。
二人か・・・未夢たちがいたときが一番大勢で食事をしたことになるんだ。
それでもこの形が一番普通なんだ・・・。
親父と俺。これが西遠寺家の普通・・・。

親父が用意した食事はインド仕込みのカレーだった。
これからは親父も落ち着いて家にいるのだろう。
そして年を重ねていく。

「……それでな。彷徨……」

ジリリン……ジリリン…

電話の音がなった。
「あぁ。わしが出るよ。」

「はい西遠寺ですじゃ」
「おぉ!!ゲンさん!!………なに―――!!ネパールの?!」

なんかいやな予感……

「おぅ!分かったすぐしたくする!!」

もしかして……

「彷徨!わしはこれから修行に行くぞ!」
「はぁ?この前帰ってきたばかりじゃないか?」
「修行につい最近だーなんてへったくれあるか!!すぐにいかねばならんのじゃ!
金は金庫にある。家の事たのんだぞー!!」

ばたばた……

「おい!親父―!!!!」

やられた…
そんなに寺あけてどうするんだよ……










また一人か…
親父が家にいないのは慣れたけど
なんだろ…
この気持ち…



未夢を見送っているときにも感じた…
胸の中、心が空っぽなような…
あれ?
変だな。









俺どうしたんだ??









『彷徨〜!!』

はっ!!
未夢?!










振り返っても未夢の姿ない。
自然に俺の体は未夢の使っていた部屋に向かっていた。










ザッ

障子を開けて部屋を見る
引越しのため前住んでいた住人の姿も荷物も無くガランとしている
足を進めて部屋に入る。

静かだな…

変だな。俺。なんか自然と未夢の部屋に来てしまった。
なぁ。未夢。俺おかしいんだ。
未夢の幻聴が聴こえたり、未夢の使っていた部屋に来たりして。


そのとき机の上に乱反射を感じた

なんだ??

彷徨は未夢が勉強机として使っていた机に向かった。
そこには未夢の大事にしていた母親からもらった星型の石のついていたネックレスがあった。

わすれものか
バカ未夢…これがなくなったときは大騒ぎしていたくせに忘れていきやがって

自然と手にとったネックレスを彷徨は力強く握り締めていた。
その手は震えている…










あれ?
はは……情けね………
なに震えてるんだよ…















…そうか…そうか…
今日何度心の中で、未夢のことを考えただろう…
何度心のなかで未夢に呼びかけただろう
迷子の子供じゃあるまいし…
何度未夢の姿を探しただろう…













『かなた〜光月さんがいなくてさみしいんだろ〜』
三太の言った言葉を思い出した。

……あぁそうか。三太…おまえの言うとおりだ…











俺は未夢がそばにいなくて寂しいんだ……
人に言われて気づくなんて俺も相当鈍いな






ネックレスを握っていた拳をもう片方の手で握りその組んだ手を彷徨は
額につけ、ただ住人のいない部屋に立っていた………













続く・・・


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