作:ロッカラビット
「なぁ彷徨、あれ光月さんじゃね?」
言われて顔をそちらへ向けると、道路を挟んで反対側にある公園に未夢の姿があった。
一人でベンチに腰かけている。
「おーい、未………。」
彷徨が何の迷いもなく声を掛けようとしたその時、俯いていた未夢の顔が上がった。
しかし未夢の視線の先は、こちらではなく向こう側。
誰かが未夢の元へ歩み寄る。
目を凝らしてよく見ると、それは彷徨のよく知る人物、山村みずきだった。
「みずきさん?」
彷徨が不思議そうに呟くが、その声は誰にも拾われないまま消えていく。
みずきを見つけた未夢がベンチから立ち上がって、会釈する。
二人は楽しそうに何かを話している。
未夢の顔がほんのり赤くなっているのが彷徨にもわかった。
未夢は大事そうに抱えていた紙袋をみずきに渡した。
「ん?光月さん、何か手渡したぞ?」
「あぁ。」
隣で三太が興味津々といった様子で二人の姿を見つめている。
もちろん彷徨も二人から目は離せないのだが、三太への返事は素っ気無くなる。
未夢がみずきさんにプレゼント?
クリスマスまではまだ日があるし何だろうか?
わざわざ学校帰りに待ち合わせをして?
そんな単純な疑問の合間に、見え隠れする自分の本当の気持ち。
焦り
不安
動揺
本当は気が付いていた。
いつからか、目で追いかけていた未夢への気持ち。
気が付かないフリをした。
知ってしまったら後戻り出来ないから。
この気持ちを形にしなくても、未夢の隣は自分の物だと思っていた。
この道路を隔てた向こう側が、ずっと遠くに感じる。
未夢が、手を伸ばしても届かない遥か遠くへ去っていく…。
頭に浮かぶ嫌な想像を打ち消すように、頭を一振り。
「行くぞ。」
ぼそっと呟いて歩き出す。
「え?おい、かなた〜。どうしたんだよ〜。もう少し見ていこうぜ〜。」
彷徨の方を振り向かずに、いまだ未夢たちの様子に見入っている三太。
「ほら、行くぞ。」
そんな三太の腕を無理やり引っ張って歩きだす。
「え?おい、ちょっ…ちょっ…かなた〜!せっかくいいとこなのに〜!」
彷徨にずるずると引きずられていく三太。
「どうかした?未夢ちゃん。」
「え?…あぁ、なんだか三太君、あっ、えっと、友達の声が聞こえた気がして。」
公園では、先ほどまで彷徨と三太が居た方を見つめて首を傾げる未夢の姿があった。
お久しぶりです。
お待たせしました!! 待ってないですか?(笑)
クリスマス前に5話完結の作品をアップします。
なんとか本日完成しまして、間に合ってほっとしています。
既に書き上げているのですが、読み返しつつこれから修正加え投稿します。
しかし大問題発生で…。
実は今回題名が思いつきませんでした。
何も浮かばず、行き詰まり…。とりあえず無題でいきます。
もし読んでくださった方で、こんなタイトルいかが?とかありましたらお知らせくださると嬉しいです。
タイトル募集するって、どんだけ抜けてんだ私・・・・。(笑)
2013.12.27追記
タイトルを「無題」から「想いの伝え方」に更新致しました。
奏さんからタイトル頂きました、ありがとうございます。
拍手・コメント下さった方々、心よりお礼申し上げます。