君の隣は誰のモノ?

1.

作:ロッカラビット

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「は〜い、皆グループに分かれたわね〜?じゃあ、先生説明するからちゃんと聞いててね〜。」


賑やかに始まった午後一の授業。

普段ならお腹も満たされて眠気に誘われる所なのだが、担任の水野の思いつきとも呼べる謎の行動に、クラス中がざわざわしている。

そしてもちろんこの人たちも…。


「結局いつものメンバーか。」

「なんだよ彷徨、俺と一緒じゃ不満なのか〜?」


呆れ顔の彷徨に情けない声を出してすがるのは、黒須三太。

言わずと知れた彷徨の親友である。


「頼りにしてまーす!クラス委員長様!」


あえての棒読みで声を掛けるのは天地ななみ。

ちらりと未夢を見てから彷徨に向かってニヤリと笑う彼女が、裏で画策したのは言うまでもない。


「このメンバーが揃ったということは、きっといいネタが見つかるわ〜。今度の芸術祭に出す演劇部の演目がまだ不完全なのよねぇ。ここは一つ、西遠寺君と未夢ちゃんに頑張ってもらわなくちゃ。」


怪しい企みを一人ぶつぶつと呟くのは小西綾。

演劇のこととなるとプチみかんさんと化するのはご愛嬌で。


「なんで彷徨と一緒になるかなぁ…………。
うっ!!!この感じは……ク・クリスちゃん!?」


後ろから漂う殺気立つオーラに振り返ることなく、ヒッと背筋を凍らせる未夢。

そんな未夢を庇うように立ち上がり、クリスに対面する彷徨。

苦笑いを浮かべつつ仕方がないと腹をくくって、クリスの手を両手で握る。


「花小町、グループは違うけどお互い頑張ろうな。……って、何やるか知らないけど。」


最後は横を向いて、ボソッと小さく呟いて。

はたしてこれでクリスの暴走が止まるかどうかわからず、冷や汗が流れる彷徨。

しばらく固まっていたクリスだが急に状況を理解したのか、先程まで彷徨と繋がっていた両手を見つめると「彷徨君が、彷徨君が…」と顔を真っ赤にして頭から噴火させつつ座り込んでいった。


「「た・たすかった〜。」」


椅子に座ったままだった未夢は机につっぷして安堵する。

その背中では、ぐにゃりと体を前方に倒しつつ彷徨が床に座り込んでいた。



「みんな聞いてる?先生ねぇ、実は昔、幼稚園の先生をしていた時期があってね〜。
それでその時の−−−−−−。」


教室の隅で起きている騒動は日常風景のようで、水野は淡々と話を進めていた。



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