作:杏
あたしは後ろを歩く駿に向かって、大きな独り言を投げ続けていた。
「あ―――あ。 なんてことするのよぉ〜」
「……………」
「あーあ! 駿があたしの楽しみとっちゃったぁ〜」
「…しっつこいなー、もう10回は聞いたぞ!?」
「何回言っても足りないもん! じっくり攻めてこうと思ってたのにィ〜」
「はいはい、わかったって!
あーあ、半ベソかいてた昨日の果那は可愛げあったんだけどなぁー」
「半ベソなんてかいてない!」
「はいはい。 で、いーのかぁ? ホントに」
「なぁーにがぁ〜?」
「西遠寺と光月さんくっつけるようなことしちゃってさぁ。 おまえの気持ちは? まだ好きなんだろー?」
「好きだよぉ〜? 西遠寺くんも、未夢ちゃんも。 おんなじくらい!
自分の隣より幸せな居場所があって、求めればそこに居られるんだから、さ。 やっぱり、そっちに居てもらいたいじゃない…?」
「果那」
「ストップ!」
駿があたしの肩に手をかけた。引かれる前に遮る。振り向かない。
「…1分! 1分待って」
「いーち、にーい、さーん…」
「……ばか…」
「…57、58、59、1分!」
「よし! 駿、帰ろ!」
振り返って笑った果那の目元が赤く見えたのはきっと、俺の後ろに夕日があったから。
「みんなにバレるまでは、あたしたちだけの特権だよね〜!」
「何が?」
「あのふたりからかうの!」
「俺はあの子奪うつもりなんだけどー」
「あれ、本気だったの!? あんたじゃ無理だって!」
「ひっでーの! 俺だって結構モテるんだぜー?」
「だって、チビじゃん」
「まだ伸びるし! つーか、おまえに言われたくない!」
「女の子はいいんだもーん」
番外です。
果那ちゃんの恋をキチンとしようと思ってたんです。
本編の限りでは、どうも軽く見えてしまって…私の力不足です(−−;
彼女らしい完結を考えたら、こうなりました。
こんなにショートストーリーになる予定ではなかったんだけど…。。
翌日から未夢ちゃんと彷徨くんは人知れず果那ちゃんにからかわれるんでしょうなぁ〜。
加えて、駿くんの猛アタックも待っていそうです。頑張れ、彷徨くん!(笑)
お読みいただきありがとうございました。