朱に映える笑顔

雪景色のフォトグラフ

作:

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「いや〜〜〜振袖美人がこれだけ揃って、きらめく雪景色! 舞台を西遠寺にしたのは正解だったよなぁ〜!」
袴姿でカメラの三脚を肩に担いだ三太がキョロキョロと品定め。真っ白な雪の広がる西遠寺の庭で探しているのは、写真撮影のベストポジション。


「未夢ちゃん、遅いですわね」
「まだ約束の時間には早いよぉ〜」
「まぁ、未夢が時間通りに来るかどーかは怪しいけどねー」
「でも、今日は車で送ってもらうんだろ? 道の混み具合次第じゃないかい〜?」
縁側に腰掛けて、三太のスタンバイともう一人の仲間を待つ、艶やかな振袖姿のクリス、綾、ななみ。そして彼らしい細身の白いスーツを纏った望。
「向こうは昨日が式だったらしいから、二日酔いなんじゃねー?」
袴姿の彷徨が、華やかな客人たちにお茶を差し出した。

今日は1月の第二日曜日。
成人の日を前に、平尾町主催の成人式を終えた馴染みの顔触れは、当然のように西遠寺に集まっていた。

「そんなになるほど飲んでないわよっ!」
「! 未夢! …おかえり」
「ただいまっ!」
短大入学を期に西遠寺の居候に戻っていた未夢は、両親の希望で実家の方での式に参加するため、一昨日の夜から不在だった。
一同にニコリと満面の笑みを見せて、長い朱の袖をちょっと上げた未夢は、その注目に照れくさそうにはにかむ。

「えへへ…どぉ、かな?」
「あ、あぁ………」

「馬子にも衣装!…なんて言わないよねー西遠寺くんっ?」
ジトッと横目で彷徨に釘を刺したのはななみ。
「未夢ちゃん、可愛い〜!」
「レトロな和柄で素敵ですわね、とてもよくお似合いですわ」
「あぁ! とってもキレイだよ、未夢っち〜!」
跪いて未夢の手を取った望。はぁっと息をついた彷徨はその光景から目を背けるように、庭に出た。


「もーどこでもいいんじゃねぇ? おまえの足跡でせっかくの背景が崩される前に撮るぞー」
「おっ! みんな揃った!? ここ、ここ! ここに並んで! この場所がバッチリ〜!
 なぁ彷徨! 椅子三つ貸して! あぁっ、足跡付けないように、横からまわってくれよぉ〜」

ようやく記念撮影ができそうだと、ぞろぞろと庭に出る友人たちに、誰がどこだ、もーちょっと斜めで、袖を見せて、と三太が指示を飛ばす。
「くっ黒須くん! このボクの隣に華のあるレィディではなく、西遠寺くんを並べるとはどーゆーことだいっ!
 そして何故キミが真ん中を陣取るんだ!」
「え〜? オマエ白だから、ただでさえ背景に消えちゃうんだよぉ〜。 女の子たちは華やかだからこそ、それに負けちゃうし、彷徨の黒に引き締めてもらった方が、引き立つぜぇ?
 天地さん、もーちょ〜っと内向きで……そうそう、そんな感じ! あ、光ヶ丘は自分のベストアングルで任せるぜぇ〜? かぁなたぁ〜まだかぁ〜〜〜!?」

ファインダーを覗いて、身ぶり手ぶりで忙しなく脳内の構図に友人たちを当て嵌めていく。彷徨の持ってきた椅子も、おそらく数ミリのズレもなく、三太自身の手によって並べられた。




「よっしゃ〜いっくぜぇ! 10秒前!」
セルフタイマーをセットして、真横からコの字に自分のポジションに向かう。

「黒須くん、早く!」
「「「「…7! …6!」」」」

仲間たちのカウントダウンに焦りながらも、まっさらな雪に出来るだけ足跡を残さないようにと、そろりそろりと大股で。
2秒前によくやく着席、パパっと姿勢を整えた。



「おわぁっ!」

―――カシャッ


シャッターが切れた瞬間には、六人が全員、白くなった三太に注目していた。

「だ、大丈夫ですかっ? 黒須くん」
「………。 なーんてゆーかぁ…」
「お約束だよねぇ〜」
なんでオレの上にだけ落ちてくるんだよぉ〜と嘆く三太を既に視界の端に移し、ななみと綾が目を合わせた。
「まぁ、三太らしいとゆーか…」
「うんうん、せっかくの記念写真だけどぉ〜…」
「つめてぇ〜〜!」
「ちょっ、頭を振らないでくれたまえ! 冷たいじゃないかっ」
「これがわたしたちらしい写真かも?」
「だなー」

三太と望を眺めながら、彷徨と未夢も肩をすくめて笑い合う。
雪をはらう三太の頭上では、荷物を減らした松の枝が跳ねて喜んでいた。



明けましておめでとうございます。
新年一発目!
年末から書き始めてはいたのですが、年明けはモチベーションが上がらず、しばらくパソコンから離れていました(><)
今年の目標は、昨年よりも完成度の高い作品を上げること。
言葉のボキャブラリーを増やすこと。
プロットをもう少し細かくして、後で詰らないようにすること。
……日々、精進ですね。
本年もよろしくお願い致します。

イベントネタなのであまり遅くならないように、早々に完結させたいと思います。
まだ目処がついた段階ですが、1話目をアップ。
大まかなプロットは出来てるけど、今回は動きが悪いのです。。なんでだろ〜?(−−;

こちらはリクエスト作品です。戴いた方には、感謝感謝です!
例によって、また改めて最終話に発表させて戴きます。

ちなみに、振袖、柄までは考えてないですが、地の色は未夢→朱、ななみ→黄、綾→緑、クリス→薄桃の設定。
え、えと、今後の友人たちの出番はちょっと定かではないです…(^^;
もし出てきても、もう着替えちゃってるかも。
ついでに写真の並びは、後ろに未夢、彷徨、望、ななみ。…んで、松の木w
前に綾、三太、クリス。
どうでもいいことではあるのですが、そーゆーのをないがしろにして、なんか読み進めたら矛盾してる、ってのが稀にあるので、私は出来るだけ重要性のない設定も組むようにしてます(^^*
そんなのをいちいち公表するのは…私が読み手なら気になるから(笑)

さて、20歳の彼ら(未夢ちゃんと三太くんまだ19ですが)はどんなお話を作り上げてくれるでしょう?
お楽しみ戴けると嬉しいです。
ご覧戴きありがとうございました!


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