時を越えて

1話 風の匂い

作:

 →(n)



あれ―――本堂の屋根だぁ…

「未夢さぁ――んっ」

ワンニャーの声…

戻ってこれたの…かなぁ……?








「…ん……いたた…。 ここ、どこ……?」





ゆっくりと瞳を開けた未夢は辺りを見回す。

見慣れた場所。



「…うち、だよね…?」

未夢がいる茂みの向こうには本堂も母屋も見える。ほっと安堵したのも束の間、ひやりとした風を感じた。


「さむっ…」






違和感。

春にやってきた未夢が、見たことのない季節。



頭上の木の葉は真っ赤に染まっていて、はらはらとその朱を落としている。

蝉の大合唱がようやく虫たちの演奏会に変わり始めた、夏休みの終わり、だったはずなのに。

やけに静かな境内は、時折風と木々がざぁっと鳴るばかり。




その風は、半袖のブラウスにミニスカートの未夢の肌を刺す。

さっきまで家の中に居たから、靴も履いていない。



「まさか…未来にきちゃった…?」





すうっと身体の芯まで冷やされた気がした。こんな時はいつも、彷徨たちが一緒なのに。

今は独り。



ここは未夢が知らない、西遠寺。

「……どうしよう…」


こんばんは、杏でございます。

リクエスト、ありがとうございます!
戴いたお題で頑張って執筆中です!

こっちはリクではないのですが、先日思い付いたのを。
何を思ったのか、プロットは頭の中、下書き全くなしでパソコンに向かってます。

今までとはまた違うスタイルに挑戦。1話がとっても短いです。
改行の数に苦戦してます(^^;

また読んでやってください。ありがとうございました!

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