作:杏
あれ―――本堂の屋根だぁ…
「未夢さぁ――んっ」
ワンニャーの声…
戻ってこれたの…かなぁ……?
「…ん……いたた…。 ここ、どこ……?」
ゆっくりと瞳を開けた未夢は辺りを見回す。
見慣れた場所。
「…うち、だよね…?」
未夢がいる茂みの向こうには本堂も母屋も見える。ほっと安堵したのも束の間、ひやりとした風を感じた。
「さむっ…」
違和感。
春にやってきた未夢が、見たことのない季節。
頭上の木の葉は真っ赤に染まっていて、はらはらとその朱を落としている。
蝉の大合唱がようやく虫たちの演奏会に変わり始めた、夏休みの終わり、だったはずなのに。
やけに静かな境内は、時折風と木々がざぁっと鳴るばかり。
その風は、半袖のブラウスにミニスカートの未夢の肌を刺す。
さっきまで家の中に居たから、靴も履いていない。
「まさか…未来にきちゃった…?」
すうっと身体の芯まで冷やされた気がした。こんな時はいつも、彷徨たちが一緒なのに。
今は独り。
ここは未夢が知らない、西遠寺。
「……どうしよう…」
こんばんは、杏でございます。
リクエスト、ありがとうございます!
戴いたお題で頑張って執筆中です!
こっちはリクではないのですが、先日思い付いたのを。
何を思ったのか、プロットは頭の中、下書き全くなしでパソコンに向かってます。
今までとはまた違うスタイルに挑戦。1話がとっても短いです。
改行の数に苦戦してます(^^;
また読んでやってください。ありがとうございました!