作:マサ
ネックレス騒動から1夜明けた、日曜日のこと。
抜けるような青空の下で、
ワンニャーは、ゆっくりと洗濯物を干していた。
「はぁ。良い天気ですね。まさに、洗濯日和って奴ですかね。」
と、昨日の騒動なぞ、全く感じさせないようだった。
しかし、遠くから、
「こら!ルゥくん!待ちなさい!
返してそれ!あたしのぬいぐるみなの!」
と、未夢がルゥを追っているようだった。
ルゥはスイスイと飛びながら廊下を進んで行く。
そこにワンニャーがやってきて、
「あれ、未夢さん、どうなさったんで…」
質問をしようとしたのだが、言葉を言い切る前に、
「わぁ〜!」
思わず叫んだ未夢の膝が、ワンニャーに直撃した。
ワンニャーはそのまま吹っ飛ばされて、洗濯物に真っ逆さまに「墜落」。
物干しごと倒れて、せっかく干した洗濯物がが泥まみれだ。
「ワンニャー、大丈夫?」
未夢も駆け寄ってきたが、辺りはグチャグチャだ。
「ほ…、干したばっかりなのに…。」
と、涙ぐむワンニャーなどかまわず、
ルゥはワンニャーに向かって呼び掛けている。
「ワンニャー!」
「ルゥちゃま、喜んでる場合じゃ…、」
と、自分の悲しみを小さな赤ん坊に向かって言おうとしたが、
ルゥの手にしたぬいぐるみ、
厳密に言えば、そのぬいぐるみの手の中を見ると、
ワンニャーは目の色を変えて、
「も、もしやそれは…!」
と、期待に胸を膨らませるのだった。
朝ご飯の時間を迎えたが、誠大は、まだ眠そうな虚ろな目をしていた。
そんな彼がぬいぐるみを見つめていることが、妙なアンバランスさを生んでいた。
「…で、これが、ペア招待券なの?」
そう言った誠大に、未夢が説明を始める。
「そうなのよ。
昨日、スーパーの懸賞で当てたんだけど、
それがなんと、宿泊券付きで!」
と、未夢は一通り説明したが、誠大の反応はというと…。
「ほう。そこまでは分かったんだけど、
モモンランドってどこにあるんだ?
彷徨、知ってるか?」
彷徨にも聞いてみたが、
「知らない。」
と即答された。どうやら男性陣は知らないようだ。
「ええっ!2人とも知らないの?」
すると、ごはんをよそっている所だったワンニャーが補足を始めた。
「今話題の、巨大テーマパークですよ!ああ、これこれ!」
ワンニャーは、テレビのCMを指さした。
と、ルゥがそのテレビ画面をパシパシと叩いている。
「ルゥちゃまもお気に入りですよね!」
と言っていた。
「へぇ。そうなんだ。じゃ、ルゥくん、あたしと一緒に行こうか。」
と、未夢がルゥに呼び掛けた瞬間、ワンニャーの目から光が失われた。
「ちょうどこの週末はゴールデンウィークだし!」
ワンニャーは未夢の話を聞けば聞くほどに、うなだれていった。
「分かりました…。そうですよね…。」
ただならないトーンの声に気付いた未夢は、
慌ててワンニャーの方を振り向いたが、
ワンニャーの周りには悲しみと嫉妬のオーラが全開、という感じだった。
そしてワンニャーは、堰を切ったように、なおも言い続ける。
「どうせ私は留守番ですよね…。
居候は居候らしく、家事をこなす毎日…。
ちゃんと皆さんの成長を考えて、
栄養バランスの良いご飯を作ったり…。
未夢さんにぶっ飛ばされて、
落ちた洗濯物を、もう一度洗って干したり…。」
早い話が、普段は何もしていないのに、
いざというときに良い所取りか?と言うことらしい。
「ああぁ。そんな毎日に追われて年取っていくんですよね…。私は…。」
ワンニャーは冗談抜きにすすり泣き始めていた。
さあ、一方めった刺しにされた未夢の反応は…。
「あの…。良かったら行く?ルゥくんと、モモンランドに…。」
と、チケット付きにぬいぐるみを手渡そうとすると、
ワンニャーはそれを瞬時に奪い取り、
途端ににこやかな表情で、
「いいんですか?いやぁ、悪いなぁ。脅迫したみたいで…。」
で、そのワンニャーがモモンランドへ向かうべく変身してみれば、
スーパーで安売り目当てに格闘するような若奥様の姿ではなく…、
ルゥに髪の色を合わせた、お父さんのようになっていた。
「なかなか良いわよ、ワンニャー。」
普段の若奥様に見慣れていた未夢も、思わず感心するほどだった。
「変身してることは、他の人間にバレないようにしとけよ。」
と、あくまで宇宙人であることが悟られないよう、彷徨が釘を刺した。
そこでワンニャーが、何かを取り出した。
「あ、そうでした。これ、渡しときます。
ルゥちゃまのおもちゃの1つですが、簡単な通信機です。
まあ、所詮おもちゃですから、運が良ければ使えるって位ですけど…。」
と、小さなケータイの様な通信機を手渡した。
受け取った未夢は、
「わかったわ。じゃあ、ルゥくんのこと、頼んだわよ。」
と、ワンニャーを送り出す。
「はい!行ってきます!明日の夕方には帰ります!」
と、見送った後、未夢は顔をしかめ、
「か〜!あたしが当てたって言うのに!」
「ま、諦めろ。」
「またいつか当たるさ。」
と、家に戻ろうとする2人を未夢が止めた。
そう言えば、いつの間にか誠大の寝ぐせが直っている。
「2人とも、あたし達、今日はどうするの?」
これに誠大が、
「のんびりと、本でも読もうかなぁ。」
「俺も同感だな。ここの所、いろいろ疲れてるからな。」
さて、嵐が過ぎ去ったように、休憩してる時である。
「2人とも、お茶飲む?」
と、未夢が呼び掛けた。
「ああ。」
と、2人は同時に答えた。
ゆっくりお茶を飲みながら、未夢は特に何もしていないが、彷徨も誠大も、読書にふけっている。彷徨は小説、誠大はというと、彼らしい。モータースポーツの雑誌だ。
さて、何もすることがない。未夢は1人で、こんな事を考えていた。
「なんか、静かだなぁ…。ルゥくん達がいないだけで、こんなにも静かなんて…。」
まぁ、3人だけの時は、第1話の夕食のシーンを思い出せば、作者自身分かってもらえるとは思うが、とても静かなのだ。それだけに、ルゥ達は、話題提供者なのだ。彼女たちが楽しく生活できる、一種の鍵なのかもしれない。
「こういう時って、話した方が良いのかな…。」
まだ未夢は、そんなことをただただ考えていた。そして未夢が、
「ねえ。2人とも…。」
と、呼びかけたは良い物の、その後が続かない!だまって苦笑いするしかないのだ。そして未夢は、今度はこんな事を考える。
「あ!そう言えば、ここに来てから、3人だけで1日以上いるの、初めてだ!」
それを知った未夢は、いきなり心臓がバクバクになる。と、未夢は、彷徨の方を見つめて、こう思った。
「彷徨は、まるで気にしてないみたいだけど、女の子達が好きになる理由って、良く分かんないんだよね。どこが良いのかな?」
と、彷徨が、降りてきた髪を後ろへと戻す。本を読むのに邪魔なようだ。未夢はまだまだ考える。
「確かに、髪もさらさらで、ちょっとハンサムかもしれないけど…。何考えてるか分かんないし、それだったら…。」
と、誠大の方へ視線を向け、
「誠大の方が彷徨と同じような外見だし、性格もハッキリしてるから、あたしにしてみればこっちの方が良いかもな。」
と、考えていたが、2人の視線がこちらに向いたのが気になり、
「あ、あの、あの、テレビ、付けても良い?」
と、未夢はちょっと恥ずかしそうな顔で彷徨を見た。
「ああ、別に良いけど…。」
と、ぶっきらぼうに答えた。
そして未夢がテレビを付けると…。時間帯が悪すぎる!昼メロだ。恋人同士のキスシーンになったのを見て、未夢は、驚いた!
「あわわわ。もっと面白いチャンネルはないかな?」
と、チャンネルをかちかちと回しては見たが、どれも似たり寄ったり。結局スイッチを切ってしまった。と、それを見て真っ赤な顔をした未夢に、彷徨が話しかけた。
「食べ物の買い出しに行かないか?冷蔵庫の中、何もないんだ。」
「ああ、うん。」
恥ずかしさで、黙ってうなずくしかなかった。
さて、同じ頃、ルゥ達はやっとモモンランドに着いたようだ。
「やっと来たんですね。モモンランド!」
そう言うと、ルゥは楽しそうに手を挙げた。とその横を、子供達が風船を持って駆け抜けていく。それを追って、ルゥも飛び立とうとした!
「だ、ダメですよ!ルゥちゃま!」
と、ワンニャーが引き戻す。
「お外に出たら、飛んではいけません。いいですね。」
と、話しかけた。一応、了解は取れたようだ。
さて、こちらは、買い出しに行ったはずの3人だったが、なぜかファーストフード店にいた。同じように憂鬱だった誠大が隣に座っている。キャップをかぶって、随分ラフな格好でいる。いつもの姿からは想像できそうもない。まあ、レーシングスーツ姿も想像できなかったものだが。
「彷徨ったら、なぜ外に連れ出してくれたんだろ…。もしかして、あたし達に気を遣ってくれたのかしら…。」
と、まだ憂鬱にして、考え事をしていた。そこに彷徨が、ハンバーガーを持ってやってきた。
「ほら。これ。」
「ありがと。」
「どうも。」
思わず2人はお礼を言う。未夢が視線をやる先には、カップルが連れ立ってお昼ごはんって所だろうか。これを見た未夢は、
「これって、何か…。デートみたいじゃない?」
と考えた未夢は、顔が赤くなった。
同じ事は誠大も考えていた。
「3人いれば、デートじゃない!はずだよなぁ…。」
と、彷徨が席を立ち、
「行くぞ。」
と言った。
「へ?」
「どこへ?」
二人はほぼ同時に質問を浴びせかけた。
「決まってるだろ。スーパーだよ。昼はこれで良いとしても、夕飯は何もないんだぜ。」
「そうか。出てくる前に言ってたな。」
誠大は、家を出る前の会話を思い出したようだ。
が、未夢は腑に落ちない顔で、
「なによ!えらそうに!」
もはや「いつものセリフ」だ。
「しかも飲み物無しかい!」
と、さらに不満を言う未夢に、
「まあまあ。飲み物なら俺が買うぜ。」
と、誠大が飲み物を3人分買ってきた。さて、これで一波乱収まったようだ。
さて、スーパーにたどり着いてみれば、
「見てみて、奥さん!じゅうたんにこぼした醤油のシミも、ほら!一拭きでこの通り!何でも落としちゃう、クリーンクリーン!」
と、ついこの前、包丁を巡ってワンニャーと「格闘」した販売員が、今度は洗剤を売っていた。なんちゅう商魂だろうか。
それに見とれる人々を尻目に、3人は店の中へ入っていった。
「ねえ。夕飯、何が良い?」
と未夢が聞くと、2人は、
「何でも良い。」
と、同時に言った。これにムッと来たのは未夢。
「あの、『何でも良い。』って、一番困るパターンなんですけど!」
と言って、ケンカになるのは嫌なので、すぐににこやかな表情に戻した。
「何が良い?肉とか、魚とか。」
と、言われると少し考えたが、それでも2人は、
「別に。」
と、単調に答える。それではと、未夢が具体例を出す。
「カレーとか、どう?」
と、聞くと2人からは、
「いいんじゃない?」
と、同時に帰ってくる。それが気に入らないのか、未夢は次に、
「エビフライとか?」
と聞いても、
「いいんじゃない?」
と答える。未夢はさらにムッとしたが、続ける。
「コロッケ…。」
と、もう半分キレた状態で聞いたが、これも、
「いいんじゃない?」
と、答えられたので、とうとう未夢も我慢の限界!一遍に2人をげんこつで殴った!
「痛えな!何すんだよ!」
と、2人同時に抗議したが、未夢はそっぽを向いてしまった。
「全く…。」
と、未夢から目を離した途端、ある物が視線に入ってきた。と、その向こうでは未夢が、
「じゃあ、これにしちゃうからね!」
と、肉をカゴに入れたところだったが、彷徨の視線が何かに釘付けになっていることに気付くのに、そう時間はかからなかった。よく見れば、誠大も近くで足を止めている。
「2人とも。」
と、呼び掛けると、2人はハッとしたようだった。
「ん?何か食べたいものあったの?」
と聞くと、2人はまたまた、
「別に、何でもない。」
と、その場を去ろうとする。が、これを未夢が見逃すはずはない。
「あのねえ!一緒に住んでるんだから、言いたいことがあるんなら、ちゃんと言いなさいよ!でないと、いつまで経っても、全然、分かんないわよ!」
と、ありったけ叫ぶと、彷徨は、
「カボチャ。」
これを聞いた未夢は、一瞬身が凍った。
「へ?」
と、思わず聞き返すほどだ。
「俺、今まで誰にも言ったこと無かったけど、実はカボチャが死ぬほど好きなんだ。」
と言われた未夢の中で、彷徨はカボチャ好き、と言うイメージが巡ったが、そんな物合うはずもなく、
「似合わな〜い!」
と、噴き出してしまった。
「だから言いたくなかったの!」
と、彷徨がその場を去ろうとしたが、未夢がこれを引き留めた。
「今日はワンニャーいないんだし、あたしが作るね。カボチャ料理。」
と、大きなカボチャを、カゴの中に入れた。と、その横から、
「実は、俺にも、そんぐらい好きな物があるんだ。」
と、誠大が言った。
「じゃあ、誠大は何なの?」
と未夢が聞くと、誠大は、少し頬を赤らめて、
「イチゴ。」
と、小声で言った。未夢の中で、さっきと同じように誠大はイチゴ好き、と言うイメージが巡るが、これも似合わない。またしても、と言うよりさっきより度が強い感じで、
「もっと似合わな〜い!」
と、笑い出す。ちょっと誠大も耐えたようだが、内心は、彷徨と同じように怒ってしまいたいほどである。
と、未夢がカボチャとイチゴを入れたカゴを持とうとしたが、これが重くて持てない。
「げっ。結構重い…。」
と、苦戦していたが、誠大はこれをいとも軽く持った。
それを見た未夢は、顔がゆるんだ。
「あと、何買うんだ?」
と、2度も2人に呼び掛けられて、やっと気付いた未夢は、
「ああ。あと、適当にみつくろって。」
と答えた。
さて、こちらはまだまだ楽しんでる雰囲気がバリバリの、モモンランドのルゥとワンニャーだ。ジェットコースターの悲鳴が聞こえてくるが、彼らがいるのは、コーヒーカップ。無論身長制限で、ジェットコースターにルゥは乗れないのだ。
コーヒーカップを降りたワンニャーは、
「楽しかったですね、ルゥちゃま。」
と、呼び掛けた。するとルゥは手を挙げて答える。
「あ、そうでした。この様子を、3人に報告しましょう。」
と、あのおもちゃの通信機の電源を入れる。しかし通信機はハウリングしまくって、通信ができないのだ。
「あ、あれ?」
運が良ければ、とワンニャーが言ったのは、この事を指すのか。納得できた。だがしかし、まだまだ遊び足りないルゥは、ワンニャーの頬を掴み、
「ワンニャー!」
と引き寄せる。ついワンニャーも、それにはついつい
「ああ、はいはい。」
と、付いていくしかなかった。
一方、一通り買い物を終えて、西遠寺に戻ってこようとしている3人。しかし、その帰り道という物は、あまりにも静かな物だった。未夢はその中で、こんな事を考えていた。
「彷徨ったら、全然しゃべらない。まだ怒ってるのかな?さっき笑ったこと。」
と言う考えを持った未夢は、とりあえず、彷徨の気持ちを伺うために、石段を登ったときに、こんな事を口にした。
「あ〜。登ったよ。今日も登ったよ、この石段を。」
と言ったが、その瞬間に誠大が、
「何か、聞こえる?本堂の方から…。」
と言った。
「木魚…。」
彷徨にも聞こえているようだ。と、やっと気付いたのだろう。未夢もこう言った。
「おっ、ホントだ。木魚の音が聞こえる。ってことは本堂に誰かいるの?って、いるわけ無いよね、誰も。あたし達以外!誰もいないはず…。」
話が長い!そう思ったのか彷徨は何も言わずに本堂に向かって歩き出した。と言うより、誠大がそれより先に本堂に向かって走っていったので、それを追ったのである。
「あっ!待って!」
未夢が止めるのも聞かず、彷徨はそのまま歩いていく。本堂の前まで来ると、中からは、
「ギィ〜ヤ〜!シャ〜!」
などという、訳の分からない声が聞こえてきた。それも恐ろしい。
「何、今の?」
未夢は完全に青ざめている。2人の腕をガッチリと掴んでいた。
そのうちに、雲が出てきて、風で木が揺れ出す。もっと怖くなった未夢は、とりあえずこの寺の「住人」である、彷徨に尋ねた。
「ねえ。もしかして、この寺って、幽霊が出るとか、そんな事って…。」
と言うと、彷徨はあっさりと、
「あるわけ無いだろ。」
と、本堂の中を覗く。やはり中では、誰かが木魚を叩いていた。
「ひぃぃ!誰かいる!」
そう未夢が言った途端に、向こうからものすごくおどろおどろしい視線で、その誰かがこちらを見てきた。そして、
「誰…。」
と、迫力のある声で、こちらに威嚇してきた!こいつは一体誰なんだ!そして、そいつは、こちらに向かって、こういった!
「ヒャア〜!締め切りだ〜!」
と言った。3人ともこの状況を危険と察知したのだろう。とにかく本堂を離れようとした。だがそいつは、こちらに向かって、飛んできた!しかもそいつは、賽銭箱の上に着地した!思わずそれを見た3人はあっけにとられた。よ〜く知ってる人だったからだ。
「えっ…。」
誠大が絶句するのも無理はない。それはなんと、みかんさんだったのだから。そして、辺にグニャグニャした動きで、
「あ〜。もう時間がないわ!どうしよう、締め切りだ〜、締め切りだ〜!」
そんなみかんさんをよそに3人は、
「あ、みかんさんだ。」
「みかんさんだね。」
「何故、ここに…。」
と、心配する3人はお構いなし。みかんさんは賽銭箱の上で踊り出した。…いかにも変な歌付きで。
「♪〜ラストシーン、どうするの?こうする、ああする、どうするの〜?やっぱり分からないラストシーン。どうすりゃ、こうすりゃ、スリランカ〜。」
(作者談)漫画家の悩みって、案外、これ書いてる自分と似てるな。ホントに、締め切りと戦う仕事なんだよね〜。分かる分かる。(誠大「って、無駄なナレーション入れなくて良いから。」)
そして、みかんさんは、こう続ける。
「…けどね。」
そう言うと、みかんさんは、つぶれた。頭にみかんが乗っているせいか、それが鏡餅にすら見えるのだ。大分季節はずれだが。さらにみかんさんは、
「あ〜、どうにもならないね。どうしようもないね。」
と、ヤケになる。しかし、急に起きあがり、
「って、どうしようもないんじゃ済まないんだよ〜!」
そう言うとみかんさんは、仏様を呼ぶ鈴を鳴らして、
「締め切り!締め切り!締め切り〜!キャ〜!」
ダメだ。完全に壊れてる。この状況を見た3人は…。
「これって…。」
「ホントにみかんさんなの?」
誠大が言ったのを、未夢が継いで言った。
「ああ、みかんさんだ。」
これもあっさりと彷徨が答えた。
「でも、彷徨、この姿を目の前にして…。」
「やけに落ち着いていられるな。」
今度は誠大が後を継いで言った。もはやこれは漫才コンビだ。
と、彷徨はこう答える。
「締め切り近くになると、ときどきこうなるんだ。人格がそっくり変わって本堂に潜り込んだり、墓場を走り回ってみたり…。」
これもあっさりと答えた。と、話している最中にも、みかんさんはあんたに関節という概念はあるのか!と言うぐらい首を伸ばしている。
「ちょっと、それ怖いよ。」
未夢がそう言うのも無理はない。が、みかんさんは何かひらめいたようだった。
「あっ、何か分かったみたい。」
と、誠大が指を指したが、すぐに彷徨が止めた。
「関わり合いにならない方が良いぞ。行くぜ。」
と、家の方に戻ろうとしたその時、みかんさんが不気味な笑みを浮かべた。口も開いている。
「動くなよ…。今が一番、危険な時だ…。」
この姿のみかんさんを知っている彷徨だからこそ言えるのだ。そしてみかんさんは、手をポンと叩いて、こう言った。
「そうか!そうなのよ!やっぱりジャカランダとアンダマダラは、別れた方が良いんだわ!それで決まりよ!な〜んだそんなことか!」
目も光っている。確かに不気味だ。と、不意に彼女の目に自分の腕時計が入った。
「あらやだ、もうこんな時間…。」
その瞬間、彼女の表情は、また沈んだ。そして次の瞬間、
「フライアウェ〜イ!」
と、叫んで自宅へと戻っていった。
さて、この様子を間近で見た3人は、この様子を見て、呆然と立ちつくしていた。
「な、何なんだ?これって…。」
誠大が言った。続いて未夢が、
「ねえ、みかんさんって、地球の人だよね…。」
と、彷徨に問いかけた。
「…だと思うけど、わかんねえな。」
そう言って、しばらくの沈黙を置いた後、3人は一斉に噴き出してしまった。
「まあ、漫画家だし、何があってもおかしくない、かな。」
そう言って、完全に笑っている彷徨に、誠大がこう言った。
「へえ。彷徨って、やっぱりクールに見えるけど、こうやって、笑う時もあるんだなぁ。」
そして、その後を継ぐように、未夢が言った。
「ねえ彷徨、今日の夕飯、あたしが作るよ。おいしいカボチャ料理作るから、期待して待っててね。それに、おいしいイチゴのデザートも作るからさ。」
と、2人に言った。
さて、とは言ったものの、実際作ろうとすると、とってもやりにくいものなのだ。
「あんなこと言っちゃったけれど、実はカボチャ料理なんて、作ったことって無いのよねぇ。大体の話が、料理すらまともにしたことのない私が、何であんなこと言っちゃったんだろう。」
と、考え込んでいた。そして、包丁の刃をカボチャに入れてみたが、なかなか入っていかない。そして未夢はさらに、こうも考える。
「なんか、あの2人とうち解けた気がして、嬉しくて…。」
さて、そこまで考えたとき、カボチャは大変なことになっていた。包丁が全くと言ってもいいほど抜けないのである。とりあえず、まな板に叩き付けてみたが、これもダメと分かった。
ちなみに料理ができるのを待つ2人は、隣の部屋でテレビを見ていた。
と、あからさまに変な音(説明を入れるとすれば、電動ドリルの音など、明らかに工具の音がするのだ)が聞こえてきた。
この事態が心配になってきた彷徨は、台所を覗いて、こう言った。
「あの、何か手伝うことでも…。」
と言うと、すぐに未夢が出てきて、
「ダメ〜!料理はあたしに任せてって言ったでしょ。」
しかし、その右手には、なぜかカナヅチがある。そこに彷徨は突っ込んだ。
「なんだそれは。お前、台所で一体何をしてるって言うんだ。」
これに未夢は、バレバレなウソで応戦した。
「り、料理だよ、料理。」
そう言うと彷徨は、ちょっとあきれた顔で、
「分かった。じゃあ何かあったら、言ってくれよ。」
それに対して未夢は、
「わかった。じゃあ、もう少し待っててね。」
と、いぶかる彷徨を何とかごまかしたと、未夢は思った。
「ふぅ。全く、バレるよ、危ないよ。さて、続きやりますか。」
なるほど、さっきのカナヅチで、カボチャを叩き割るって言うことか。しかし、なんとその現場に、いたのは…。ももかだ!なぜいるのだ?
驚いた未夢は、その勢いでカナヅチをまるでペン回しのようにクルクルと回した。ある意味すごい。
「ひえ〜!」
意外な来客に、思わず叫んでいた。そしてももかは、単刀直入に、こう言った。
「おばたん、ルゥは?」
未夢はとりあえず聞き返す。
「ももかちゃん、あなたいつの間に?って言うかどこから入ってきたの?」
そう言うとももかはこう答えた。
「玄関からよ。ルゥくんのうちはあたしのうちも同然だもの。」
そうか。ダーリンと言っているだけのことはあるな。こいつらも夫婦か、もはや。そこに未夢が座り込んで、こう答えた。
「ルゥくんなら、留守よ。お出かけしていて、今日は帰ってこないの。」
まあ、モモンランドの事情とやらを知らないももかにとっては、知る由もない話題なのだ。無理はない。
「いない?本当?」
と、ももかはこの反応を疑った。どうやら信じていないようだ。これに対して未夢はなおも説得を続ける。
「ホントよ。」
しかしももかは、さらにこう言って、未夢にこう話しかける。
「おばたん。もしかしてあたしとルゥくんのお付き合いに反対なの?」
どこまでませてるんだ、こいつは。未夢もこれにはちょっとやりにくい態度だ。返答に詰まった。と、部屋から誠大が呼び掛ける。
「おい、未夢!誰かいるのか?」
そう言って扉を開けると、恐ろしい勢いで未夢が出てきた。そして、
「ももかちゃんが来ているの。何でもないわ。大丈夫!」
と言うと、これまた恐ろしい勢いで扉を閉めた。そう言われた誠大は、あっけにとられていた。
そしてもはや戦場と化している台所では、ももかが包丁やらのこぎりやらが刺さったカボチャを見ていた。
「あら、これなんでしょう?」
そう言ったももかを抱き上げ、未夢はこう言った。
「ももかちゃんは、何も気にしなくて良いのよ。」
いや、その説明は無理があるだろう。作者の私でも気になるのだから。そしてそのまま未夢は、茶の間に向かってこう言った。
「2人とも!ももかちゃん家まで送ってあげて!」
さて、外はもう日が傾き始めていた。スタイリッシュな彷徨と、相変わらずラフな格好をしている誠大。そこで誠大が話しかけた。
「と言うわけで、ももかちゃん、送るよ。」
そう言われたももかは、何か腑に落ちないような表情で、こう言った。
「うーん、なんかおばたん、変ねぇ。」
それを聞いた彷徨はこう言った。
「けれど、ルゥくんが留守だって言うのは、本当のことだぜ。」
ももかが納得したような表情を見せると、彷徨はこう言った。
「さ。ももかちゃん、帰ろうか。」
と、手を取ろうとしたが、ももかはそのまま歩いていく。そして、いつものませた表情で、こう言った。
「ま、今日の所は勘弁してあげるわ。」
そして、何か物音がした。ふとそちらを見ると、ももかは3輪車に乗っていた。誠大が尋ねる。
「ここまで、3輪車で来たのかい?」
そう言うと、彼女はこう答えた。
「そうよ。」
「あの石段も?」
尋ねたのは彷徨だった。その質問にも彼女は、こう答えた。
「大変だったわ。次からは3輪車は下に置いてきた方が良いわね。」
登ってきたと言うことか。どこまで馬力があると言うんだ。
そして、誠大が本題口に出した。
「大変だったみたいだな。よし、じゃあ送るよ。」
そう言うとももかは、2人に向かって指を指して、こう言った。
「子供扱いは辞めてちょうだい!ももか、1人で帰れるもん。」
そう言われた誠大は、こう言った。
「だからこそ、送るんだよ。」
その言葉で、2人はももかの横にしゃがんだ。そして今度は、彷徨が言った。
「男の子は、すてきな女の子を、家まで送ってあげるんだよ。」
それを聞いたももかは、納得した様子で、
「わかったわ。じゃあ送ってちょうだい。」
と、送ってくれることを認めてくれた。未夢にはこれはラッキーなはず。時間稼ぎできたわけだから。
さて、一方モモンランドのルゥとワンニャーは、イルミネーションが灯ったモモンランドの中を歩いていた。ワンニャーは疲れからか、ヒゲに耳、それからしっぽがワンニャーの状態として出てしまっていた。しかし、周りのお客さんは、カチューシャだの、フェイスペイントだのしているので、全く目立たない。これって、一種のラッキー?
さて…。未夢はやっとカボチャから刃物一式が取れたようで、とりあえずそのカボチャが柔らかくなるように茹でていた。確かにカボチャは切れない。だからこそ、道路に投げ落として割るという手すらあるのに(ちなみに作者である私の実家ではこれが日常茶飯事で、一度カボチャを粉々にしているのだ)、未夢はじっくりと茹でているのだ。やっぱりこいつは、どこか抜けている。
しかし、待てど暮らせど茹で上がることはない(当然であろう)カボチャを見て、うなだれていた、その時だった。
「遅い!」
と、未夢に呼び掛けたのは、彷徨だった。その隣には誠大もいる。なんだ、もう帰ってきたのか。早い奴らだ。
しかし、これに驚いた未夢は、思わず手の上で鍋のふたを落としかけて、あたふたとするが、結局落ちてしまったのだ。それを素早く拾い上げ、未夢は2人に向かって、
「お帰り…。早かったわね…。」
と、たどたどしく話しかけたが、言われた2人はそんなことお構いなし。鍋の中を見つめていた。
「なんだ、これは?」
彷徨が言ったことで、未夢は2人が横にいることに初めて気が付いた。
「ああ、これ?カボチャの姿煮。皮が固くて、切れなくて…。えっと、私カボチャ料理、あんまり得意じゃなくて…、って言うか、作ったこと無くって…。」
どこまで言い訳するんだ。まあ、これはこれでしょうがないことかも。こんな事態じゃ。しかし未夢は、そこからさらに話を続ける。
「何を…、どうすればいいのか…、分からなくて…。随分煮たから、柔らかくなってると思うし…。だから…、だから…、」
そこまで言うと、未夢は言葉に詰まりながら、こんな事を考えていた。
「かっこ悪い…。最低だ…。あたしって…。」
そこまで考えた未夢は、彷徨に向かって、思い切ってこう言ってみた。
「もう捨てるね。こんなの、食べられないだろうし…。」
そう言って、鍋を取ろうとすると、彷徨から意外な返事が返ってきた。
「辞めろ!やっと、柔らかくなったんだ…。だから勿体ないじゃん。」
そう言って彷徨は、ガスコンロの栓を止めた。
「へ?」
未夢は思わず、聞き返した。だがそれは、聞き間違いではないようだ。
「ここまで来たんだから、これで…、3人で一緒に作ろうぜ。カボチャ料理。」
これを聞いて、誠大は乗り気になった。
「OK!」
そう言って、未夢の方を見る。
「え?え〜?」
状況がやっと読めた未夢は、2人の作業を見ることにした。
まず2人は、鍋の中のお湯を捨てるところから始めた。こうしないと、何もすることがないのだ。
「さて彷徨、まず何からやるか?」
誠大は彷徨に、意見を求めた。
「さてと、まずはグラタンかな。それから炒め物…、あ、そうだ。未夢、小麦粉取って!」
そして、2人による料理が始まった。2人は包丁であらゆる物を切りながら、未夢に指示を出していく。
「フライパン熱して、油ひいて!」
彷徨の声と共に、未夢がコンロに向かう。
「未夢、グラタン皿にバターを塗ってくれるか?」
「はい、はい。」
と、未夢がこれも手早く済ませる。
さて、さらにここでは、シチューも作っていた。3人で試食していた。
「うまい!」
「おお!」
「うん!」
どうやら2人は相当な料理の名人のようだ。
さて、さらにはグラタンも完成。未夢がレンジから取り出す。
そしてしばらくして、やっとカボチャ料理が完成した。
「わぁ〜。すっご〜い!やったね!」
テーブル狭しと料理が並び、未夢は喜んでいた。
「さらに、お待たせ〜!特製イチゴシェイクだ!」
と、誠大が部屋に入ってきた。そう言えばと、イチゴの存在を忘れかけていた誠大が飲み物にと、牛乳と細かく切ったイチゴ、さらに砂糖を混ぜたのである。
「これもおいしそ〜!」
未夢はなお喜ぶ。そこに彷徨が座り込み、
「ささ、食べようぜ。もう腹ペコだから。」
「おう!」
「うん!」
そう言って3人は、遅くなった夕食を食べ始めた。素直においしい味だ。
「2人とも、料理が上手だったのね。」
と、未夢が問いかけると、
「俺はカボチャだけだけどな。」
と、彷徨が答えた。
「俺もちょっとぐらいだぜ。親の手伝いしてたから、見よう見まねって奴だな。」
誠大も答えた。2人とも、料理経験は浅いのだ。当然か。
ふと、未夢の視線がどこかボーッとしているのに気付いた誠大が、未夢に問いかけた。
「どうしたんだ?」
すると未夢は、
「ううん。何でもないわ。ルゥくん達、どうしてるかなと思って。」
と言った。確かにちょっと静かかもしれないが、それでも初対面の時の3人きりの食事の時よりかは、話題も多くなったようだ。そして未夢の発言に対して、彷徨が答える。
「さあな…。でも、楽しんでるんじゃないの?」
「そうだよね。楽しんでるよね。」
と、明るい食卓のさなか、モモンランドのホテルの中では…。
「つ…、疲れた…。」
ありゃ〜。これじゃ日頃の疲れぶっ飛ばすどころか、帰って疲れためてるじゃないの。そして完全に脱力して、ルゥを腕から離すと、ルゥは元気よく飛んでいった。
そしてワンニャーは床にばたりと倒れ込み、
「い…。育児日記が…。付けられ…、ない…。」
と、そのまま寝込んでしまった。変身も解除されて。
さて、話は西遠寺に戻る。こちらは夕食も食べ終わり、片付けの真っ最中だ。片付けももちろん、3人で共同作業。今度は彷徨が洗い、誠大と未夢が片付けだ。
「あ、そこの皿、上の棚にしまっといて。」
「了解!」
「しかし、なんだかんだで、カボチャ丸ごと1個食べたな。」
「ちょっと食べ過ぎたかも…。」
「大丈夫だろ、多分…。」
そして、3人が台所で片付けをしているとき、テレビではニュースをやっていた。
「宇宙飛行士に選ばれた光月未来さんは、NASAでの訓練プログラムを、非常に順調にこなしているとのことです。そのため、近く、日本に立ち寄るという情報もあります…。」
この大事そうなニュースを聞いていなかった3人、誰も気付かなかった…。
そして、全員風呂も入って、こちらは未夢と誠大の部屋。
「あ〜あ。今日も疲れた…。」
長い髪を拭いている未夢がそう言うと、
「本当だな。買い物に出かけるの久しぶりだったから。」
「そうだね…。」
2人の間に、静かな、それでいて心地よい空気が流れる。
「今頃、あの2人、寝ちゃったかな…。」
と、未夢がワンニャー達を心配して誠大に話しかけるが、誠大はと言うと、壁に座りかけながら、少しうとうととしていた。と、その時!
「ガタッ!」
と言う物音がした。
「ん?」
未夢は慌てて後ろを振り返るが、そこには誰もいない。
「気のせいかな…。」
そう言って再び髪を拭き始める。が、今度は、
「ビュンッ!」
と言う音がした。さすがにこの音に恐怖を覚えた未夢は、誠大を起こす。
「誠大…、誠大…。起きて。さっきから何か変な音がするの。」
そう言うと誠大は、
「ん?何だって?じゃ、俺が外に見に行く。」
と、すっと起きあがった。
2人が縁側に出ると、風で木の葉が揺れ、月が雲に覆われてくる。
「誰?…、誰かいるの?…。」
するといきなり、青い、強めの光が彼女に向かって照らされた!それと共に、何か黒い影が、こちらに向かってくる…。
未夢は脚がガタガタと震え、体からは冷や汗もにじんで、誠大の腕にしがみついている。そしてその物体が、よろよろとまるで幽霊のように歩いてくるのを見た瞬間、未夢は、
「ギャア〜!」
と叫んで、一目散に彷徨の元へと走っていった!
「彷徨〜!怖いよ〜!に、庭に…、誰かいる…!」
そう言って、彷徨が向こうを見ると、今度は誠大が走ってくる。
「廊下に登って来たぁ〜!」
そう言って走ってくると、その向こうから、確かにゆっくりと何やら白い物体が歩いてくるのが分かる。誠大は自分の部屋から、金属バット(誠大の私物)を取り出してきて、なおも近づいてくるその物体に対して構えて、
「誰だ!」
と叫ぶ。しかしその物体は、いっこうに脚をゆるめない。むしろ歩くペースがどんどんと速くなっている。
「2人は下がってろ。」
そう言うと誠大は、バットをさらに強く握って、こう問いかける。
「あんた…。一体誰なんだ?…。」
そう言って、場の空気は張りつめた。が、しかしその物体は、なんと茶の間に入ると、急須を取り出し、お茶を入れ始めた。
この光景に、3人は唖然となった。目が点だ。
そしてさらにそいつは、それを湯呑みに入れ、飲もうとした。が、そいつの被るヘルメットだかマスクだかに当たり、3人は呆れた。
そこで誠大が入り込み、そこに2人も入ってくる。
「あんた…、」
物々しい雰囲気になったのを察知したのか、そいつはこちらに向かって話しかけた。
「どうもどうもお三方。」
このセリフを聞いた瞬間に、身が凍り付いたのは、未夢だった。
「え?」
慌てて聞き返す。
「やだねぇ。まだ分からないの?せっかくサービスで宇宙服着てきたのに…。」
そう言って、そいつは、ヘルメットを外した!
「元気だった?未夢。」
そいつ改め、未夢の母、未来がそこにいた。どうやらさっきのニュースにあった、「日本に立ち寄る」情報は本当だったようだ。
「ま…、ママ!何でここにいるの?」
そう言うと彼女は、こちらに向かってほほえみかけてきたのだった…。