タカラモノ

作:あかり

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私の家族は人気者だ。遠くにいる家族も、一緒に住んでいる家族も。
夏休みにアメリカに行ってから、すごくそう感じる。


パパもママもNASAに勤めててとても有名人だ。その仕事のために、私とは離れて生活してる。だけど、離れていても私のことを忘れたことなんてなくて、すごく大切にしてくれている。
ルウくんも、私たちの周りで地球人にも宇宙人にもとっても可愛がられてる。私も地球のママとして嬉しくなる。ワンニャーもペットコンテストで1番になるし、身近な宇宙人に一目おかれてる。
そして、彷徨も。美少年コンテストで2年連続優勝だし、ファンクラブまである。クラス委員に生徒会、部活は家庭の事情ってやつで帰宅部だけど、それでも応援を頼まれることもしはしばだ。
皆ほんとにすごい。そんな皆が本当に大好きで大切。無理だとは分かっているけど、ずっと皆一緒に暮らせたらいいのにって思う。でも、ママの一番の夢だった宇宙飛行士になることが叶うことは嬉しいし、パパもそのサポートが出来るんだって誇らしそうに話してくれたのを見てたから私だって喜んで応援したいと思ってる。
それに、私も今一緒にすごしている西遠寺の家族、ルゥ君やワンニャーが宇宙に帰るまでは彷徨と一緒に守りたいと思っている。もちろん、ワンニャーが西遠寺のお家のことを切り盛りしてくれているから、私や彷徨の生活が守られているってことも分かってる。
でも、こうやって皆でお互いに大切にしてるから、今の生活が守られていてるんだなって思うと、皆バラバラに集まったのに、家族だなぁっておもう。だけど、皆のことを大切にに思う一方で、時々チクリと胸が痛むことがある。
彷徨がクリスちゃんにぴたっと寄り添われてるときなんかは特に。クリスちゃんのことはいつものことなのに、なんでだろ・・・。



思考がそれてしまったことにふぅとため息が出た。
今日でた国語の宿題、家族について書くというものだった。小学生の宿題で書いていらいの題目に困ってしまう。その頃のことを思い返すと、一緒に苦い思い出も蘇ってきて眉間に力が入ってしまった。



数年前のあの宿題が出たとき、初めて母の日にカーネーションを用意して渡せなかった年だった。父の日も外食の予定が延期になって、数週間後の宿題の題目が「私の家族」。
あの頃から両親は忙しくしていて、平日は家族が全員顔を合わせるのは朝の短い時間だけで、休日も1日中二人がそろっての休みの日なんてお正月とクリスマスくらいだったように思う。だから、お休みの日も仕事を頑張っているかっこいい自慢のパパとママですと書いた。大好きな二人のことをだし、私も書いたときは本当にそれを自慢に思っていたから。
でも、クラスで皆が発表した後の休み時間、無邪気に放たれた言葉がすごく胸に刺さった。
クラスメイトから「お仕事が1番大好きなんだねぇ。」と言われたのだ。
その言葉の前には『未夢ちゃんよりも』がついている気がして悲しくなった。今だからこそそうではないと言えるけれど、幼かった私にはそんな風には思えなかった。いつもやさしく接してくれる両親だったけど、仕事が忙しくてなかなか一緒の時間が取れなくてもしかして、私よりも仕事のほうが好きなんじゃないかって心のすみっこで確かに感じていたことだった。そんなはずないって言い聞かせて目をそらしていたことだっただけに、氷が突き刺さったんじゃないかってくらいにさっと体が冷えたことを鮮明に覚えてる。そのときは、まるで二人に言われたかのように感じてしまってあのあと泣いてしまったのだ。その後、どうなったのかは覚えてないのだけど、その時感じた黒く重いしこりは未だとれないままだ。まるで、失敗してしまったあや取り紐のように絡まってとれない。
ちゃんと大事に思ってもらっていること、もう分かっているはずなのに、大事な家族だと私も思っているのに。




彷徨は今度の宿題になんて書くんだろう。


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