作:あかり
お題に挑戦させていただきました。
シリーズの題名およびサブタイトルは以下サイト様からお借りしました。
ありがとうございます。
サイト名・時雨れ喫茶 (しぐれきっさ)
管理人名・道野 木実 (ミチノ コノミ)
URL http://www.geocities.jp/tokisamechaya/index.html
初めてのパラレルものです。
だぁ!にでてきている人たちの名前も変更しています。
それでもいいよという方は見ていただけたら嬉しいです。
もし、不都合ありましたら拍手で教えていただけるとありがたいです。
むかしむかし、ある国の小さな町のお話です。
その国では、魔法を使うことはごく当たり前のことで魔法を生業とする人「魔法使い」も少なくはありませんでした。今ではもうおとぎ話だと思われていますが、妖精や小人も少数ではありますが人間と共に生活することもあったころのお話です。
魔法が当たり前に存在するその国のひとつにヘイオゥと呼ばれる町がありました。その町は、城下町ではなく地方の領主の治める小さい町でしたので、魔法使いと呼ばれる人たちの数はそう多くありませんでした。その多くは、炎や水、土、風を操ることができる力も備えておりました。しかし、戦乱の世ではなかったこともあり戦いや争いに力を使うことを是とはせず、薬草を作ることを生業としている人が多くいました。そのため、その人たちの持つ力は、町の癒し手としてその力をはっきすることで力を役立てる人々がほとんどでした。その魔法使いたちの中に、カーナと呼ばれる男の子がいました。カーナの父も母も小さな町に住むものとしてはかなり名の知れた魔法使いでした。その力で、小さな町を守ることもしていたのですから。そして、二人の子として生まれたカーナは二人分の魔力を受け継いだせいか人一倍魔力が強く、魔法使いの間ではまだ幼さの残る年ではありながらも広く名を知られておりました。
しかし、強い力は良いことも引き寄せますが、それ以上に悪いことも引き寄せます。魔法使いが争いに力を使うことを是としていなくても、その力を利用し権力や富を我が物としようと企む者にとっては炎や水、土、風を操ることができる魔法使いの存在はのどから手が出るほど欲しい存在です。幼いうちに自らの手で育てることで、魔法の力を自在に使うことが出来ると企んで、カーナの強い力に惹かれてよくない輩の悪巧みでさらわれそうになったことは1度や2度ではありません。自分とは無関係の争いごとに巻き込まれることもしばしば、それこそ年端のいかない小さなころより幾度もありました。そのようなことを繰り返すうちに、カーナの小さな心はかたくなになってしまっていました。7つの頃、母が連れ去られ、惜しみなく与えられるはずであった愛情を失ってからは、特に。周りの者に心を開くことも少なくなってしまいました。
隣に住む家族と過ごす時間を除いて。
「カーナ、おはよう。今日もいい天気ね。調子はどう?今日は、とうさまが作ってくれたパンを持ってきたの。出来立てだからおいしいよ。」
「ミーユ。おはよう。いつもありがとう。まだ温かいな、本当にうまそうだ。あ、ユーウ様に頼まれていた薬できたんだ。渡してくれないか?」
「わぁ、もうできたの?カーナはすごいね。とうさま喜ぶわ。お代はいくら?」
「今回はいいよ。いつもご飯をごちそうになっているそのお礼です、と伝えてくれ。」
「分かった。・・・あのね、カーナ。・・・その。」
「今日も、何か作ってきたのか?」
「うん!とうさまに教わって焼き菓子を。焦がしてしまったのだけど、そこは取り除いたから多分、そんなに苦くはないはず。・・・食べて?」
「いいよ。・・・うん。ちょっと苦いけど、うまい。」
「ほんとう?良かった。自分で一応味見はしたのだけど、やっぱり心配で。良かった。」
ニコニコとこぼれんばかりの笑顔を見せるのは、カーナの隣の家に住む女の子で名前をミーユといいました。父親はパンや菓子を焼いて売ることを生業とし、母親は魔法の力を使って銀細工のアクセサリーを作る職人をしておりました。オゥヘイの町の雑貨店の看板娘がミーユです。父親はたいそう料理が上手で、ミーユもその仕事に憧れをもってはおりましたが少々・・・いや大分、苦労をして毎日練習をしておりました。毎日失敗続きではありましたが、少しずつ少しずつ上達してきていました。父の焼いたパンを毎日お隣に届けるときにその日に練習したものをカーナに渡すことを毎日の日課としていたのです。始めのころは、カーナがおなかをこわしたり、熱を出したりすることもありましたが、最近ではそんなこともなくなり何かしら失敗はしてはいるものの、以前に比べるとおいしいものを作れるようになって来ました。こんなふうに町より少しはなれた森の入り口にある2つの家族は助け合って生活していました。ミーユとカーナの仲が良すぎるせいでたまに喧嘩をするようなことがあっても、穏やかな日常がそこにはありました。
ある日突然、それが変わってしまうなんて、この頃の二人には思いもよらないことでした。