作:あかり
お休みの日のルゥ君との散歩は時々超能力を使いそうになるルゥ君にドキッとすることもある。だけど、無邪気に喜ぶ様子を見ていると、ほっとする。
だから、私の楽しみな時間になってる。
今日も、くさっぱらの中でたくさん咲いているお花を見て、キャッキャッて笑っていて、すごくかわいかった。あんまりかわいいから、いくつか持って帰ろうかって言って西遠寺に持って帰った。
帰る途中で、くにゃりと元気がなくなった花にルゥ君は悲しい顔をして、私がお水につけたらまた元気がでてくるからねっていったら、分かっているみたいにお花をなでていた。
家に帰って、ワンニャーに小さいビンをだしてもらって、お花を入れて水を注いであげた。しばらくしたら、少ししゃんとした花たちをみて、ルゥ君は手を叩いて喜んでいた。
私も、ママとこんな風にしたことがあったな、なんて思い出す。喜んでるルゥ君をみてると、頬が自然にゆるんできて、つい金色の髪をなでてしまう。ママもあのとき、こんな風にしてくれたななんて思い出して。あのあと、どうしたんだっけと、思い返して手が止まった。
「ルゥ君、じゃあ、私部屋にちょっともどるね。」
突然の私の言葉にワンニャーは不思議そうにしていたけれど、ルゥ君は気付かなかったみたい。・・・よかった。
戻るねと居間をでて向かった先は頭脳明晰、本の虫の彷徨のところ。多分、あの話を知っている気がして。ぽんぽんとふすまを叩いて名前を呼ぶと、「なんだよ」ってめんどくさそうにしながらも出てきてくれた。
「あのね、木箱もってないかな?」
「木箱?」
「うん。たぶんなんだけど、明日か明後日かとにかくいるから。」
「ちょっと待て。分かるように言ってくれ。」
「あ、ごめん。ルゥ君が花を摘んできたのね。で、今のところは大丈夫なんだけど、多分2,3にちで枯れちゃうから枯れたときにいれる木箱がほしいの。」
「普通に捨てたら良いじゃないか。」
「あれ?彷徨はあの話知らないの?」
「・・・だから、分かるように言えって。」
「ママが教えてくれた物語なの。えっと、どこの国のお話かは分からないんだけど・・・。」
遠い遠い国のお話。ある3人兄弟の末っ子の女の子はお花が大好きな子でした。
花壇のお花が花が咲くと数日で元気がなくなってしまうことをいつも不思議に思っていました。ある夜のこと、ふと目がさめると、花たちがダンスをしているではないですか。バラに、水洗、百合庭咲いていたお花すべてです。ダンスの音楽は女の子のもっているお人形やお兄さんの鉛の兵隊さん、小さなおもちゃたちも混じっていました。
そこで、女の子は思ったのです。「夜、こんなに踊っていたからくたびれてしまっていたのね。」花たちのダンスをこっそりのぞいてみていると、こちらまで踊りだしたくなってきましたが見つかっては大変。ぐっと我慢をして、その次の日も、その次の日もこっそりその様子をのぞいていました。家族は、昼間に元気がなくなってしまった女の子のことを心配していました。その子の2人のお兄さんも。ですが、そんな日は長く続きませんでした。とうとう、花は枯れてしまったのです。女の子はたいそう悲しがりました。しくしく泣いていると、お兄さんたちがわけを尋ねてきました。女の子は、花たちのダンスを見たこととてもきれいだったのに、枯れてしまってもう見れないことがとても悲しいとポロポロ涙を流しました。お兄さんたちは、女の子の話を始めは不思議そうに聞いていましたが、鉛の兵隊さんが音楽を奏でていたことを話すと、「だから、最近足が土で汚れていたんだなぁ」なんていって最後には信じてくれました。そして、女の子にじゃあ、お花のお葬式をしてあげようと言ったのです。ワインの箱に枯れてしまったお花をつめて、一人のお兄さんは本当のお葬式のときのようにおもちゃの弓を射り、もう一人のお兄さんがしずしずとその箱を運んで、庭に一緒に埋めてくれたのです。こうしたら、また新しい花が咲くんだよと言って。女の子はそれを聞いて、とてもよろこびました。その微笑んだ顔は、どの花が咲いたときよりも美しく輝いていました。
ところどころうろ覚えで、作ってしまったところもあるけれど、話し終わって一息ついた。話をしていたはずの彷徨はどこか遠くをみていて、ちゃんと聞いてたのか心配になった。
「聞いてた?全部話したよ。聞いたことない?」
私の言葉にはっとなったみたいで、「聞いてた」って返事が返ってきた。いつもより硬い表情につい「大丈夫?」って声をかけたらぶっきらぼうに「何が?」って返されて、なんだか腹立たしくなってきた。
「なんでもない。木箱、くれるの?くれないの?」
「これ使えよ。・・・あのさ。やっぱいいわ。」
「なによ。彷徨、上の空で聞いててやっぱりもう一回話してくれなんていうんじゃないんでしょうね?もうしないんだから。」
「ちがう。さっきの話って、未夢は自分のお母さんから聞いたんだよな?」
「うん、そうだけど。なんで?」
「なんか、聞いた覚えがあるんだよな。でも、母さんに読んでもらった覚えないんだ。でも、なんか知ってる気がする。」
「ふぅん。あ、ママが彷徨のお母さんに雑誌をかしたんじゃないかな ?毎月違うお話が載ってる雑誌だったんだよ。毎月、絵がすごく楽しみだったの。すごくきれいで、いつも何回も見せてもらってたんだ。あ・・・でも、ママこのお話だけは一回だけしか見せてくれなかったんだよね。」
「なんか未夢もここに来たことあるみたいなことお前のお母さん言ってたもんな。・・・なんか、未夢のお母さんに教えてもらったような気もするな。この話。」
「そうなの?じゃあ、ママが読んでくれたのかもね。」
「そうかもしれないな。ああ、木箱だったよな。悪い、まだ俺が持ってたな。ほら。」
「ありがと。その日は、彷徨も一緒にルゥ君説得してよね。箱に入れるの嫌がるかもしれないし。」
「ああ、分かった。」
そのときは、考えつきもしなかった。その行為は大事な、本当に大事な儀式だったんだってこと。たんなるお別れの儀式のじゃないってこと。