作:山稜
だぁ!だぁ!だぁ!には名脇役が多数登場するのですが、彼らも原作に比べると強い特徴づけがされています。その1同様、原作とアニメとを比較しながら、整理をしておきましょう。
グレーバックの部分は山稜オリジナル設定です。
三太といえば真っ先に思い浮かぶのが「トリのレコード」「変わったカメラ」の2つでしょう。しかし、この2つとも原作には出てきません。原作3巻の人物紹介では、
「彷徨の小学校からの友達。いつもさわがしくてウソがつけないタイプ。名前は、ダジャレ好きの両親がシャレでつけたらしい…。部活は天文部に所属。天気のいい夜は、部のメンバーと一緒に、よく天体観測をしている。」
としか書かれていません(部活については、新聞部の描写は1コマある)。陸上部の設定は、原作にはありませんね。
原作での彼は、どこにでもいそうな、にぎやかな男のコ。別に何かにこだわっている風でもなく、ノリが良くてお調子者、友達と騒ぐのが何より好きで、その分、友達のことをよく考えている、そんな感じです。髪もアニメより短い、ちょっと流行を意識したカットに変えてみたり、結構おしゃれです。
彼が活躍しはじめるのは6巻の「きもだめし」あたりから。ここまでで登場するコマ数は、20もないというのは驚きです。この少し前からアニメの放送が始まっていますから、出番が増えているのもそれを意識してのことでしょう。
そのアニメでは、というと設定はかなり細かくなっているようで、彷徨とは就学以前からの無二の親友で、その彷徨に憧れている面がある、超天然ボケで能天気だが裏では案外悩んでいる時がある、不遠慮だが友達思いのやさしいヤツ、約束事は絶対に忘れない、恋愛にはかなり鈍感だが(おそらく人に対しても)情熱家…という描写があるようです。アニメの方が圧倒的に出番が多いですから、一般にだぁ!ファンの持つ三太のイメージは、こちらになりますね。
それでも、趣味の話でぶっ飛んで自分の世界にハマってしまいさえしなければ、どこにでもいるいわゆる中学生の男のコ、友達思いのいい友人といったところです。あの趣味さえなければ、キャラクター陣の中ではいちばんマトモな人物かもしれません。
山稜のシリーズでは、原作に比べてアニメの要素をかなり取り入れました。陸上部に所属、変わったモン好き、彷徨とは就学前からの無二の親友といったところです。反面、しつこいぐらいに趣味の話を聞かせてくるという部分は薄く、友達と騒ぐのが何より好きな良い友人になっています。
「でぃせんばー〜」で陸上部の後輩・涼子と付き合い始めた彼ですが、高校進学を機に自然消滅に。高校には陸上の推薦で、有名私立大学の附属高校へ進学。一応の戦績を残し、大学へも問題なく進学しました。そのせいか、おき楽に拍車がかかっている感もあります。女の子と交際してもすぐわかれてしまいますが、「まいおうん〜」でキョウコと出会いました。これからが楽しみです(笑)
目的のためなら手段は問わない!人の心を物でつり、あるいは敵の身近な人物から、言葉巧みに弱点を聞き出し、あげくの果てはスキャンダルを捏造、敵をおとしいれる…作品が大河ドラマなら、悪の美形キャラというところで別な人気を博したかもしれない望ですが、残念ながら彼がでているのはコメディ。悪事が露見して、プライドはボロボロになってしまいました。
登場時(7巻、32〜33話)にあれだけの悪事を働いたら、普通は総スカンを食って誰も相手にしてくれそうにないところですが、その後まもなく(36話)、性懲りもなくバラを配っています。女子はそっぽを向くでもなく、歓迎している様子。不思議です。
ここで鍵になるのが、直後の三太です。三太が望をからかいまくって、周りから笑いをとっています。おそらくは、三太が望を毎日毎日からかっているうちに、周囲の目も望を「いやなヤツ」から「面白いヤツ」に変わっていったに違いありません。これを計算してやったのなら、三太はものすごいヤツです(笑)
とはいえ、これ以降は必ず三太とともに登場していますから、からかわれたり言い返したりを繰り返しながら、打ち解けていったんじゃないでしょうか。三太は遊び事は必ず、気の合う彷徨を誘いますから、望は彷徨とも仲良くなっていったでしょう。また、顔がききそうな三太のことですから、周りがほっとけず、ついには望もみんなと仲良くなることができた…と考えても差し支えないでしょう。
この36話は、原作の望を語る上でもうひとつ重要なシーンがあります。自分がバラを配っていても、彷徨の姿ばかりを追うクリスに、「なんでこのコは いつも西遠寺ばっかり」と、ピンクのバラを手に口説きに行ってます。クリスもなびきかけますが、彷徨がそばにいることに気づき、思わずバラを投げつけ返してしまいます。
このシーン、よく見ると望の「なんでこのコは〜」のコマに「…ゴゴゴゴ」と書かれています。そうです、嫉妬しているんです…それも激しく。
望の性格からすれば当然、とも思えなくもないですが、逆に望の性格からすると、これ以降どんなことをしても彼女を自分に振り向かせようと努力するでしょうし、そのために彼女を研究するでしょう。結果…どうなるのかは、想像に難くありません。
クリスも「西遠寺くんがいるのにっ 受け取れませんわっ」って、彷徨がいなかったら受け取ってたんでしょうか。
…このシーンがなくても、36話はもちろん、以降の展開に実は全く支障はないんです。ひょっとするとこれは、後々に向けての伏線のつもりが、解消されずに終わったのかもしれません。だとすると、川村センセは結構な罪作りですね(笑) おかげでわたしはいろいろ書けるのですけれども。
アニメの方では、登場から怪しいヤツ扱いです。父親を「パピィ」と呼んでみたり、ダンスのレッスンをしていたり、「女の子には笑顔」をモットーとしているぐらいで、原作ほど「あくどい」性格ではありません―「くどい」性格ではありますが。ですから級友ともうまくやっています。未夢にかなり執着していたり、ライバルと自称する彷徨への尊敬も見せたりと結構絡んできます。ナル入ってますが、ペットのオカメちゃんは相当可愛がっているようですし、それ以外でも結構いいヤツです。
ダンスのレッスン室を持っていたり、自分用のバラ園を持っていたりするところを見ると、家は相当な金持ちかもしれません。それにしても母親の話はしたがりませんが…。
あと残念なのは、ここで力説したクリスとの関係が否定されていることですね。地上波未放送なので、詳しくは割愛します。
原作でそもそも、彼がなぜあのような極悪な性格になったのか…というところがなかなか見えてこないのですが、金持ちで、自分用のバラ園があるというところは共通とすると、彼の父親は種苗関係の事業で一発当てたのかもしれません。しかし事業の成功の影には、あるプロジェクトのために転々と居を移す家族の姿、友達のできない望はバラだけが友達で、人間不信に…ということも、ちょっとムリヤリですが考えられなくもないです。
そんなわけで、山稜のシリーズでは、彼はクリス同様に幼少期の問題行動があったとしています。その共感が、ふたりを結びつけるきっかけですし、何よりクリスの救いになったわけです。
中3のクリスマスに、クリスからもらったおもちゃの手品キットがきっかけで、マジックに目覚めました。女子校が共学に変わるという高校に進学、クリスの目の届かないところで、人気者を満喫。…届かないと思っているのは、本人だけのようですが(^^;
マジックも人気取りの小道具としていろいろやっているうちに、有名なマジシャンの目にとまりました。高校在学中から正式な弟子として稽古を続け、卒業後に舞台デビュー。合間に、ちょくちょく西遠寺に顔を出しているようです。「まいおうん〜」で、クリスにプロポーズもしています。
おしゃまで面倒見のいい3歳児。3巻の人物紹介に、そう書かれています。
9巻、44話。彷徨の発案で、西遠寺でパーティを開きます。このときも、未夢の顔に思い切り花束を押し付けたりして憎まれ口をたたいていますが、クリスに「未夢ちゃんが転校しちゃうかもっていったら どーしてもきたいって…」と暴露されてしまいます。ももかは否定しますが、照れていることの裏返しであるのは誰の目にもすぐわかる、このシーン。実は、ももかは照れくさいのを隠すのに、素直じゃない行動=子供らしからぬ行動をとっていた、ということがわかります。
兄・栗太には、「未夢たんゲットよっ!!」(4巻、16話)と言っているのに、未夢本人に向かっては「おばたん」呼ばわりをする、ルゥを気に入ったと言っては彼氏呼ばわりをする、一見しっかりしているようですが、大人顔負けの言動は、子供らしい気持ちを照れくさくて素直に出せないということなのでした。さすがに、いとこであるクリスはその辺をちゃんと理解しているようですね。
3巻の14話が初登場になりますが、泣いているルゥを元気付けようとして、いろんなことをします。15話〜16話では、兄が未夢を好きになったようだと知り、なんとか思いを通じさせようと努力をします。8巻では、自分の責任とはいえ、ぺポがいなくなったのを一生懸命探します。最終9巻では、「帰っちゃやだ」とまで言っていたルゥを親元に帰すために、一生懸命おにぎりを握ります。
そうです、実はももかはとても優しい子なのです。
では、優しい子であるはずのももかが、どうしてこんなに素直じゃなくなってしまったのでしょうか。
話は飛びますが、14話(3巻)では5時頃に日が暮れようとしています。この舞台が東京近郊だとすると、夕方5時過ぎに日が暮れるのは1月下旬〜2月上旬、もしくは10月上旬〜中旬。服装から見て、真冬ではありませんから、この話は10月の話です。
ところで、彼女は15話で「桃の木幼稚園 桃ぐみさんばん ももか さんちゃいよ」と自己紹介していますが、ももかの誕生日は3巻の人物紹介にしっかり「6月21日」と書かれていますね。
ふつうの幼稚園では、3年間の保育期間だと、その年度に満4歳になるこどもを4月に受け入れます。いわゆる「4歳児保育」です。ところが、6月生まれの彼女は10月に3歳だ、と言っています。このことから、桃の木幼稚園は「満3歳児保育」を行っていることがわかります。
広島県や島根県などのあるところでは、満3歳児保育を公立の幼稚園が始めていますが、大都市近郊ではまだまだ、満3歳児保育は一部の私立のもの。つまり、桃の木幼稚園は私立で、教育熱心なところだと言えます。
また、同じ町内(もしくは市内)に住むいとこのクリスの家が超豪邸で、栗太がクリスの家によく遊びに行っている=親同士(兄弟でしょう)の仲が悪いわけではないことから考えても、ももかと栗太の家はそれなりに大きな家のはずです。
このことから考えると、ももかと栗太の親は金持ちで教育熱心だが、栗太がぽわんとしているので、ももかに大きな期待を寄せているのではないか…という想像が成り立ちます。ももかが子供らしくない行動をとるのは、常日頃から親に将来のことを言い含められているから、と。
大抵の場合、子供は母親の口調を真似ますから、おそらくは母親が口うるさく、父親は栗太のように穏やかな人物なのでしょう。一方のクリスは、多少難があるとはいえ、思いやり豊かで物腰は柔らかいですから、母親は穏やかなタイプだと推測できます。父親はどうだか知りませんが、当然、花小町の家を継がせる…なんてことは考えていないでしょうから、花小町の跡取は、ひょっとすると、ももかになるかも知れませんね。
アニメでも、ももかの性格付けや行動は原作とそんなに変わっていません。クリスの妄想並みに鋭い時があったり、「カラス捕獲隊」として町を守っていたりと多少おおげさになっているところがありはしますが、ひょっとすると、だぁ!の中ではアニメと原作の差がいちばん少ないキャラクターではないでしょうか。
山稜のシリーズでは、まだ本格的には登場していません。9巻末のおまけで、未夢に「未夢ちゃん」と呼びかけていたり、「あいかわらず、もてもてね」と言われたりしていますが、そのあたり、「小学生になったももか」は、もうすぐ登場の予定です。…その前に、もっと先の話を書くかもしれませんけど(^^;
―とりあえず、続く―