山稜的・だぁ!キャラ考

その1

作:山稜

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 だぁ!だぁ!だぁ!も、原作とアニメとではキャラクターの性格に多少の差があるようです。
 山稜のシリーズは原作ベースですが、原作の話がひと通り終わった後の環境や関係の変化などもあります。アニメとの比較も交えて、少し整理をしておきましょう。

 グレーバックの部分は山稜オリジナル設定です。

 また、これを書くに当たっては神山楓華しゃんが多大な協力をしてくれました。この場をお借りしてお礼申し上げます。


未夢 - 普通を許されない普通の子 -

 少女マンガの主人公らしく、ごく普通の女の子。特徴といえば大きく愛らしい瞳、きれいに伸ばした髪といったぐらいで、特に勉強ができるわけでもなく、運動もできそうにないコですが、芯はしっかりしたところがあります。小さい頃から両親が忙しく、ひとりでいることが多かったからではないでしょうか。普通でない環境に育った分、普通の人であること、「家に帰ると母親が待っている」ような、普通の家庭に憧れている面もあります。将来の夢が「お嫁さん」というのも、その表れでしょう。

 原作では、多少気の強い物言いをするだけですが、アニメでは「〜ですなぁ」などのオッサンか(笑)と思うような言葉づかいが特徴的です。ひょっとすると、彼女は以前にもどこかに預けられたことがあるのではないでしょうか。彼女自身は「転校なんてよく考えたらはじめてで」(1巻、3話)と言っていますから、夏休みの間などの短期間ながら、父母どちらかの実家で過ごすうち、祖父の口調をまねた…と考えられなくもありません。その祖父も他界したのでしょう、頼る身内もなく、父母がいちばん信頼できる友人である西遠寺家にというのが最も自然な成り行きですね。

 だらだら涙を流してがっくりするような顔も原作では見られない顔です。アニメでは、未夢が彷徨をからかっているようなシーンをしばしば見受けたりしますが、原作ではいいようにあしらわれています。どちらかといえば、原作の方がより彷徨を頼りにしているような印象を受けますね。

 彷徨とお互いの気持ちははっきりさせていますが、もともと自然と思いあっているふたり。傍から見ても対して振る舞いに変わりはない…はずですが、いちばん仲のいい友人たちには微妙な違いはわかったようで、この後、ふたりは友人たちの目標となっていきます。
 2駅先の公立高校へ進学、被服科のある短大へ。卒業後は中堅商社に就職します…が…。

彷徨 - がまんにがまんを重ねるさびしがり屋 -

 クールで美形、なんでもこいのスーパーマン…主人公の相手の王道を行く彼ですが、冷たく見えるのは実はさびしいから。母親を幼くして亡くし、心を開いた初恋の相手も遠くへ行ってしまった、大切に思えるものを失わないためには大切なものを作らないこと…そう決めたはずの彼のもとへ、やってきたのは明け透けに物を言う未夢と、疑うことを知らない無邪気なルゥ、やさしく3人を見守るワンニャー。にぎやかに暮らすうち、素直な気持ちを取り戻した彼が決めたことは、もう大切なひとを離さないこと。山稜はそう解釈しています。

 ただ、「一緒に暮らしている」ことは彼自身にも相当なプレッシャーを与えたようです。
 3巻で、ももかが西遠寺にやってきたとき、未夢が意地を張って彷徨のことを恋人だと言い張り、証拠を見せろといわれて彷徨のほっぺたにキス。この夜、彷徨は未夢が風呂に入っているときに「恋人どうしなんだから一緒に入るぞ」と未夢をからかうのですが、人影は脚立と招き猫で作ったダミー、というシーンがあります。
 このとき、脚立の上の招き猫に貼った紙に彷徨は「あのときのしかえしだ バーカ」と書いています。あのときというのは、そのキスのことなのですが、どうして「仕返し」なのか…というと「それぐらい、ドキッとしたんだぞ」と言いたかったのではないでしょうか。一緒に暮らしていて、しかも表には出せないけれど相当気になっていて、それを押さえ込んでるってのに、おまえはいったいなんてことをしてくれるんだ、と。ひょっとするとあの夜、眠れなかったのは彷徨かもしれませんね。

 また、特に描かれているのは「英語が堪能」なこと。授業中のみならず、フロリダではとっさの英会話を難無くこなしているようです。父・宝晶は世界中を飛び回っていますし、アニメの設定ながら母・瞳は「世界の恵まれない子供たちを救いたい」と言っていましたから、案外と西遠寺には外国人の出入りもあるのではないでしょうか。幼いうちから外国人との交流があったので、英語に抵抗がないと考えることはできます。

 原作では「何を考えているのかわからない」クールさが、未夢との関係を素直じゃないものにしていて、また未夢のことをどう思っているのか、やきもきさせるところなのですが、アニメではかなり「わかりやすい男のコ」になっています。こんな顔もアニメならでは。よく笑いますし、よくがっくりきてます。より中学生らしいというか、あれじゃ気づかないのは未夢だけでしょう(笑)

 原作に比べるとノリもよく(特に第2期)、それなりに友だちも多そうです。未夢の口調に合わせて「〜ですなぁ」と言ってみたりもしています。それだけ、未夢やルゥ、ワンニャーとの息が合っているということかもしれませんが、クールが売り物の原作とはちょっと雰囲気が違う彼です。

 未夢に対しては若干素直な態度をとっているようですが、それでもあまり直情的にならないように―つまり、男のコの本能に負けないようにがんばっているようです(笑)
 未夢と同じ公立高校の進学コースに入学、比較宗教学が学べるということで有名な私立大学へ。その後は…。

クリス - 繊細すぎる精神と… -

 フランス人とのハーフ、美人で女らしくて、でもキレると暴走してしまう。彷徨を慕うあまり突飛な行動に出る彼女ですが、その突飛さも精神的なアンバランスからではないか…というのが山稜の解釈です。周囲からの異端視、また未夢同様に両親が多忙であることのさびしさ。それを表に出すことができず、内に抱えていった結果、破綻して崩壊するように。が、素直で明るい未夢に接し、心を許せる友人も増えて、暴走も次第におとなしくなっていっています。いつも屈託なく接してくれる未夢が、いちばんの友人でもあり、憧れでもあります。未夢は未夢で、クリスの女らしいところに憧れていますから、友人関係としてはベストなのではないでしょうか。

 あまり描かれませんが、彼女は非常に繊細です。妄想・暴走しない限り、周りのことをよく気遣っているようです。登校初日に質問攻めにあって困っている未夢に声をかけたりして助けたり、あるいは学校にきてしまったルゥが危険な目にあったあと、あやしていたりしているところを見ても、すごく優しいコです。ルゥが帰る手助けも、お嬢様的な解決方法ではなく、他の友人達と力をあわせて一生懸命にやっていて、気持ちのよいコです。あくまで、妄想・暴走しなければ、とはいえ、こういう一面が、未夢をして「クリスちゃんは、ほんとの友だちだから」と言わしめるのでしょう。

 その妄想も、嫉妬心以外のところでは暴走しないようです。原作では、かなり早い段階でクリスはルゥの秘密を知ることになりますが、このときにはルゥを怖い生物かも知れないと思いこそすれ、キレてはいません。むしろ、考えうる安全策を講じていたり、あとから彷徨の言葉で思い直したりしていますから、多少思い込みが激しい程度の、ごく普通の思考回路で動いたのではないでしょうか。

 アニメでは切れ方が一層ものすごくなっていますし、「特技:日曜大工」という言葉からは到底かけ離れた、超人的な力と土木技術のエキスパートになってますね(笑) ともすればただの変人になってしまいそうですが、あの世界は変人じゃない方が変人ですから、これはこれでいいのかもしれません。ただ、友人思いの部分があまり出てこないのはさびしい気がしますが…。

 高校は名門女子校に入学。そのままエスカレータ式で短大へ進学しました。中学から続く望との交際は順調で、ついにプロポーズされてます。妄想にふけることはあっても、暴走することはごく稀です。


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