作:山稜
毎度のアフター新だぁです(^^;
新だぁの最終話後、ルゥとワンニャーが地球に戻ってきて滞在してますのでご承知ください☆
シャリ、シャリ、シャリ。
雪のようなふんわり、うつわにこんもり。
赤いシロップが、映えるいろどり。
「ほら未宇」
「きゃ〜」
ひとくち、ぱく。
帰ったばかりでのぼせたノドが、一気に元気、とりもどす。
「彷っ…パパ、わたしのもはやく、はやくっ」
「おまえ、何杯食う気なんだ…」
「いーじゃないっ、暑いんだしっ」
「ハラ、こわすぞ」
「へーきへーきっ」
パパがハンドル、ぐるぐる回す。
また雪山、うつわにひとつ。
ママは黄色い、氷レモン。
いまどき、うちぐらいじゃないのかな。
こんなおおきな氷かき器、家にあるのって。
「こんどはぼくがやるよ、パパ全然食べてないでしょ」
ルゥがちらっとママを見ると、パパはちょっとわらった。
「あぁ…たのむ」
「彷徨さん、練乳はどこですか?」
「あれ…切らしてたか」
「ええ〜っ、そんなぁ〜っ」
「いーじゃん別に、練乳なくっても」
「そーはいきませんよっ、楽しみにしてたんですから…あぁ〜っ、上等の宇治金時がぁ〜っ」
練乳ぐらいで、泣かなくても。
ワンニャーさんはときどき、おおげさなような。
でも…。
「じゃ、わたし買ってくるよっ」
スプーンおいて、それだけ言って。
あわてる声は、笑顔でながして。
おいたカバンを、肩からかけて。
玄関あけて、外、ふみだして。
なにかのアラーム、背中にきいて。
…アラーム?
「だめだ未宇っ」
ルゥの声を聞いたときには、もう目の前は、まっくらだった。
◇
あいたたた…。
ころんじゃった…かな。
ひざ…たいしたこと、ないな。
ここ…あれ?
わたし、外へ出たよね?
なんで茶の間?
「ありましたよ〜、未夢さ〜んっ」
「お〜い、未夢〜っ、ルゥ〜っ」
パパとワンニャーさんだ。
練乳、あったのかな。
「パ…」
ってわたし、くつはいたまんまだ!
「未夢〜っ、ルゥ〜っ!」
「は〜いっ、いま行く〜っ」
ママもくる!
おこられちゃう!
ど…どーしよ…。
とっとりあえず、押し入れ!
入って閉めたら、ろうかの足音。
「やろーぜ、はやく」
「うん、ちょっと待ってルゥくんのお手てあらってくる」
「おまえの顔も、な」
「え〜うそっ…やだ〜こらルゥくんっ!」
「きゃ〜いっ」
「もぉ…とにかく洗いにいこっ、ねっ」
「あ〜い、マンマッ」
ルゥくん?
きゃ〜いっ?
…マンマっ!?
ちょっと待っ…。
声が向こうの方、行った。
押し入れの戸を、すこぉし開けた。
見なれた、茶の間。
見なれない、テレビ。
…古いんだ。
またろうかから、足おと。
「おーいっ、まだか〜っ」
「すぐ行くぅ〜っ」
「ったく…」
そう言って出てきた、パパの顔。
…わかいっ!?
ってゆーか、幼いっ。
どー見ても、わたしとトシ、かわらない…。
ってことは、ここって、…
さっきのまっくら、…時空のひずみ。
かばんの中で、通信機。
「未宇っ、どこっ!?」
ルゥだ。
「う〜ん、うちなんだけど…」
「うちなんだけど、って?」
「ねぇルゥ、時空のひずみって、おんなじ場所の『むかし』に飛ばされちゃうことって、ある?」
「あるんじゃないかな…ワンニャーもそんな目にあったことあるって言ってたし」
「やっぱり…」
そうなんだ。
ここは20年以上前の、うち。
ルゥとワンニャーさんが、オット星から飛ばされてきたころの。
「パパとママが中学生ぐらいの、うちなの、ここ…」
「う〜ん、だれかいた?」
「いる…パパもママも…どうしたらいーのっ?」
「ちょっとまって、調べてみるから…あ、そーだ未宇っ」
「なっなに?」
「くれぐれも、うかつなことしちゃダメだよ」
「うかつなことって?」
「未宇がなにか言ったりしたりしたことで、未来を変えちゃうかもしれないってこと…
たとえばパパやママが、いまそこでしらないことをおしえちゃったりしたことで、
パパとママが結婚しなくなるようなことになったら、未宇が生まれてこなくなる」
わたしが生まれてこなくなる?
そしたら、ここにいるわたしもいないから、パパとママが結婚しなくなることもなくて…
こーゆーややこしーハナシって、涙が出てくる。
「え〜ん、こんがらがっちゃったよ〜」
「だろ…ってぐあいに、ひょっとすると時空もこんがらがっちゃって、みんないなくなっちゃうかもしれないってことなんだ」
それってセキニン重大なんじゃない〜っ!!
「だから、こっちから連絡するまでおとなしくしててよ?いい?」
「わかった…」
「パパとママに見つからないようにね、ややこしくなるから」
「うん…」
「じゃ切るよ、またあとでね」
通信機をおいたら、胸がくるしくなった。
うちだけど、うちじゃない。
しってるけど、しらない。
そんなところに、ぽつんとひとり。
かえりたいよ…。
とたんに、汗。
不安と、プレッシャーと、
…押し入れの中って、あつい!
ちょ、ちょっとだけ、あけてもいーよね。
風、とおらないかな…。
きゅうに、にぎやか。
台所のほうかな。
「そっちだとせまっくるしーだろ、氷かき器がテーブル占領してんだから」
「ん〜、しかたありませんねぇ…かき氷のできていくところ、見ているとおもしろいんですけど…」
「まーまー、また作るとき、むこうで見ればいーじゃない、ねールゥくん」
「あーいっ」
みんなこっち、きちゃったんだ!
あーん、これじゃとーぶん、こっから出られないよーっ…。
風通しにあけたすきまから、ようす。
みんなすごいいきおいで食べてる…。
あ、みんなして、こめかみ押さえた。
ルゥまでおんなじカッコして…ってあの赤ちゃん、ルゥだよね。
シャラク星でちっちゃくなったときと、おんなじ顔してる。
あはっ、なんかおもしろいな。
「マンマっ、ちゃーっ」
うつわ、両手でさし出して。
「ルゥくん、おかわり?」
「あーいっ」
ママもルゥも、いい顔してる。
「ちょっと待っててねー」
「おい…そんなに食べさせて、だいじょうぶか?」
「ちょっとぐらいいーじゃないっ、きょうすんごく暑いんだよ?」
「それはそーだけどなっ…」
「まーまー、少しぐらいでしたら…といいつつ、わたくしも宇治金時もう一杯」
「へへーっ、じゃわたしも氷レモンもう一杯っ!」
「おまえらなぁ…」
文句いいながら立ち上がるトコなんて、むかしっから変わってないんだね、パパって。
「もう練乳もちょっとしかないし、少しにしとけよルゥ」
「あーい、パンパッ」
ふたりとも、わたしに笑いかけるのと、おんなじ顔してる。
…なんか、うれしいな。
でも。
あつーいっ!
わたしもかき氷、食べたーいっ!
「練乳って、おいしいんですか?」
「宇治金時にかけると上等になるんだよね」
「え〜っそーなんですかっ…すみません彷徨さん、ここにそれっ」
「残念、もうルゥので使いきった」
「あぁ〜っ、上等の宇治金時がぁ〜っ」
いーなぁ…おいしそう…。
こっちは汗だくで、水たまりができそうだってゆーのに…。
食べたことなかったけど、いま宇治金時がすっごく食べてみたいよーっ!
乗り出しちゃったのが、わるかった。
手をついたトコ、汗ですべって。
がったん、大きなおと。
「なにっ、いまの音っ!?」
「さがってろ…っ」
「あっ、ちょっとルゥちゃまっ!?」
「う〜?」
押し入れの戸が、いきおいよく開いた。
あわててワンニャーさん、変身。
パパがママの前、ふみ出してる。
「…なんだ、おまえ…っ」
どっ…どーしよーっ!