千甘〜せんかん〜 5

作:瑠璃宮 恋


付き合ってるのに、「付き合ってない」

大好きなのに、「大好きじゃない」

・・・自分で自分を制限して。

周りも同じように思ってしまって。

本当の自分を・・・隠し続ける。




千甘〜せんかん〜 5

・・・「付き合ってる」って、何で言えないんだろう

そりゃぁ、皆に「付き合ってます!」って公表したいわけじゃないけど。

・・・彷徨のファンは、相変わらず減らないし。

私ばっかり浮かれてて・・バカみたい。

机に顔を押し付けて、心で嘆く未夢。

他の生徒は次々と帰り支度を整えて、さっさと帰ってしまっている。

そう、今はまさに下校ラッシュの時間。

と。

「未夢〜馬場崎君が呼んでるよ」

・・・出たな、こうなった最大の原因人物め。

・・・な〜んちゃって。

すっとぼけてる場合じゃないよなぁ・・・。

未夢は体育館裏に呼び出された。

下校ラッシュと言っても、ここら辺は人の出入りが少ない。

それに、ここでは大体、何をするかも決まっている。

内緒話とか。

人に聞かれたくない話とか。

・・・告白・・・とか。

「ぁの・・・?」

呼び出されたのに、翼が話を切り出さない。

「・・・・光月っ・・・俺っ」

「・・・・・・・?」

「光月の事が好きなんだっっ」

「ふぇ?」

何だ、そんなことかと未夢は思った。

・・・皆様、勘違いしないで下さいね。

未夢は告白に慣れているから・・・という理由ではありません。

・・・彼女は相当、恋愛に鈍いのはご存知ですよね?

「私だって」

「え」

「馬場崎君の事、大好きだよ?」

「は・・・え、マジ!?」

「(にっこり笑って)私、馬場崎君なら、すごく良いお友達になれると思う」

ずべっ(←翼のすっ転ぶ音

「そ、そうじゃなくて・・・だなぁっ」

「ふぇ?」

『じゃぁ何の好きなの?』と首をかしげる未夢。

その仕草があまりにも決まっていて。

なんというか・・・可愛すぎて。

心臓のど真ん中を、一直線に射抜かれた感じ。

「・・・じゃぁ」

「はぃ?」

「教えてやる」

「へっ・・・」

間抜けな相槌を返す未夢を、腕の檻に閉じ込める翼。

「えっ・・・何をっ」

「俺の『好き』は・・・」

ゆっくりと顔を近づけてくる翼。

未夢の心は必死に嫌だともがいているのに、体が言うことをきかない。

「ぃっ・・・やぁっ」

もうおしまいだと、未夢はぎゅっと目をつぶった。

と、頭の隅に、ある人が浮かんだ。

大好きな、大好きなあの人。

知らずに、未夢はその人の名を口に出していた。

「彷徨ぁっ」

「未夢っ!!」

あ。

この声。

ちょっと低めの、耳に透き通るように聞こえる、この声。

私の大好きな、この声・・・。

と。

腕の檻が無くなった様な気がした。

と同時に。

「いってぇーーーっっ!!!!!や、や、やめろって、西園寺!わかったって!」

翼の・・・悲鳴?

ゆっくりと目を開けると、そこには彷徨が翼の腕を片手でぐいっと捻っている場面が目に映った。

「かな・・・・た・・・?」

嘘・・・?

最近は、「三太と用事があるから」って、いっつも先に帰っちゃうくせに・・・。

「未夢っ!大丈夫かっ!?何にもされなかったか!?怪我はないか?」

聞きたいこと全部、彷徨は未夢に問いかけた。

「・・・彷徨ぁっっ」

・・・どうしても、彷徨のぬくもりに包まれていたくて。

未夢は彷徨の胸にとびこんだ。

「こっ・・・・怖かったぁっ」

貴方じゃない人に、キスされそうになって。

貴方じゃない人の、ぬくもりを押し付けられて。

すっごく、すっごく怖かったんだよ。

「もう平気だ、未夢。俺がいるから」

「うん、うんっ」

しきりに頷く未夢。

2人の様子を見ていた翼は、やっぱりどうしても気になっていた台詞を口に出した。

「・・・お前ら・・・マジで付き合ってないのか?」

「「・・・・・・・」」

不安気に、彷徨を見上げる未夢。

彷徨は未夢に優しく微笑んでから、翼に向き直った。

「・・・付き合っては・・・いない」

今は・・・そういう状態じゃないから。

でも。

一つだけ・・・変わらない真実がある。

「でも・・」

「「?」」

「少なくとも、俺は未夢の事が好きだ」

驚きの真実。

2度目の告白。

変わらない真実は、2人にだけに明かされる。


















はぃ〜・・・長かったですね。

もうそろそろ、最終話にしちゃってもいいんじゃないかと思った今日このごろ。

疲れました。(はぅ

でもっ・・・まだまだ・・・・最終話をかくまではっ!!!

頑張りますですw

でゎでゎ。    

瑠璃宮 恋




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