作:瑠璃宮 恋
・・・・・・言えないよ
言いたくないよ
辛すぎるよ
ごめんね、彷徨
わたしには・・・・・・どうしようもできないなんて・・・・・
(彷徨君死に掛けますよ。苦手な方はお控え下さい)
ただの平日だった
いつもみたいに、「ある日」で済めばよかった
通るたびに、恐ろしくて目を瞑ってしまう、大嫌いな車が今。
わたしの目の前に止まってる。
その車は、本来人を助けるための車だけれど。
なぜその車が来なければいけない事態となったのか。
その理由も、その原因が自分である事も、未夢はよくわかっていた。
空はこんなに青空なのに、どうして。
私の前だけは真っ暗になってしまうの?
「いやっ行かないで!かなたぁっ!!!!」
それは午前にさかのぼる。
今日は修了式だったため、授業は午前中に終わった。
最近、不審者が近辺にいる、と。
隣町の中学生が、平尾町まできて問題行動を起こしている、とか。
いろいろ・・・・危険な話題があったのだ。
だからこそ、早めに帰ろう、と。
いつもより小走りで、下校していると・・・・。
「君か〜わいいね〜vv何年生?ちょっと遊ぼうよ」
未夢の自然な金色に比べ、バサバサに染め上げた金髪。
耳につけている小さなピアスや、つりあがった目が未夢に恐怖を感じさせた。
「やっ・・・・・あのっ・・離してくださいっ」
「いーじゃん・・・ちょっと位さぁ・・・。言う事聞かないと・・・・ちょっと痛い目見てもらうよ?」
男の右手にはキラリと光る鋭利なもの。
「・・・・・やっ!」
必死で抵抗しても、女生徒の力ではかなうはずもない。
「さっ・・・・楽しいところへ行こうか♪」
「やっやめてぇっ!離して!彷徨ぁぁっ!!!」
どがっ!!
「ぐあっっ!!!」
男の腹に、強力なパンチ。
殴り飛ばした後、優しくて、でも厳しい声が降りかかる。
「未夢っ!?大丈夫か!?」
「・・・・・・かなた」
ぶわっ、と涙がこみあげる。
この気持ちはなんなんだろう。
以前から不思議に思っていた、この気持ち。
まだこの謎は、解けていないのだ。
「・・・・いってぇ・・・・・・よくも・・・・・・・」
「・・・・・・・・未夢に目ぇつけるとは・・・お前もいい度胸してんな」
「!」
ゆらりと。
琥珀の瞳をより一層暗くして、突き刺すような視線。
何も言えなくさせるような、強いオーラを持ったその視線。
悪夢は、ここからだった。
「ふざけんなっ!!!!!!」
男が未夢に降りかかる。
「きゃぁぁぁぁぁあぁっ!!!!!」
「未夢っ!!」
ぐっ、と手を伸ばして。
ぐさり、と。
彷徨の右胸にナイフがささる。
「やあぁぁぁぁっ!かっ・・・彷徨!!!」
「・・・・・・・お前・・・・・そこまでこの女が好きなのか・・?そこまでして守りたいのか?」
「俺が思ってるよりも心がこいつを欲してるんだ」
「・・・・・・どけ!」
彷徨からナイフを抜き取り、未夢に襲い掛かる。
「俺をなめんじゃねぇよ・・・・・!」
「いっ・・・・いやぁぁぁぁぁぁっ!!」
「やめろ!!!」
手を伸ばして。
未夢の前には、大きな手。
血が、だらだらと流れ出ている。
素手でナイフを押し返す。
握れば握るほど、ナイフは彷徨の手に食い込むのに・・・・。
「・・・・・おっまえ・・・・・・人間か・・・・・?」
「・・・・・ああ・・。こいつに・・・・骨の髄まで惚れこんだ・・・・・・・な」
男は呆然と立ち尽くしていた。
「未夢・・・・・お前・・・・怪我は・・・・・・・?」
「大丈夫、大丈夫だよっ・・・・。でっ・・・も・・・彷徨が・・・・・かな・・・・んんっ」
ぎゅっ・・・・と抱きしめられて。
キスをされる。
「・・・・・・・・よかっ・・・・・・・・・・た」
ばたり、と。
倒れこむ彷徨。
「やっ・・・・・彷徨?嘘でしょ?・・・・かな・・・」
冷たい。
あんなに優しい、大きな手が。
すごく・・・・・氷のように冷たい。
「嘘・・・・・・・」
嘘だ、嘘だ。
彷徨が・・・・・彷徨が。
わたしのせいで・・・・・・・
彷徨が!!
「・・・・いや・・・・起きて、彷徨。目を開けて・・・・・・」
ずっと呼びかけているうち、救急車が来た。
現場を見かけた誰かが、通報してくれたらしい。
彷徨があっという間に運ばれていって。
でも、まだ腕の中には彷徨のぬくもりが残っていて。
離したく、なかった。
「いやっ行かないで!かなたぁっっっ!!!!」
なんだ・・・・・・・?
俺は・・・・・・?
どうしたんだ・・・・・・・・?
未夢・・・・・・・未夢。
そうだ、未夢!
あいつ・・・・・・どうしたんだ?
何も・・・・・・・・・見えない。
真っ暗で・・・・・・何も聞こえない。
すげぇ・・・・寒ぃし・・・・・・。
俺は・・・・・死ぬのか?
「ん・・・・・・・・・」
目を覚ますと、真っ白い部屋。
病室。
目の前には、横たわった彷徨。
お医者さまは、最前のことを尽くしたと言っていた。
あとは、彷徨自身の問題だ、と。
「・・・・・・・・なんでなの・・・?」
なんであたしなんか助けたの?
「なんでなの・・・・・?」
未夢・・・?
未夢か?
[なんであたしなんか助けたの・・・?]
それは・・・・・。
俺が・・・・・・・・。
「ふっ・・・・・・・・・ゃだよ・・・・・ゃだよ・・・・!!!」
みっ・・・・・・・・・・・・・。
泣くなよ、泣くな。
・・・・俺は、あいつの涙を拭ってやる事もできないのか?
「・・・・どうして・・・・なんで何にも言ってくれないの?」
俺はここにいる!・・・くそっ・・・・未夢に伝わらないのか!?
「どうして・・・抱きしめてくれないの・・・?こんなに・・・・こんなに・・・・胸が苦しいのにっ」
・・・・未夢・・・・・未夢・・・・・ごめん・・・・・ごめんな
「ずっと一緒に居て欲しいのに・・・・・っ・・・・・うぅっ離して欲しくないのにっ!」
・・・・・・俺は
「まだ・・・・・・彷徨に言わなきゃいけないこと、いっぱいあるんだよ!?」
俺もだよ、未夢
全部、全部。
俺の思い・・・・伝え切れてない
このままでいいのか・・?
「おいてかないで・・・・」
未夢
「一人にしないで・・・・・」
・・・・・・このままなんか・・・・よくない
「っ愛してるわ・・・・・・・」
未夢!!!!!!!!
どくん、どくん、どくん、
「・・・・・・うっ・・」
「かっ・・・・・・・・・」
「ぁ・・・・・・・ここ・・・・・?」
「っっ・・・・・・・・・かなたぁっ!!!!!」
「み・・・・・・・・ゆ・・・・・・?」
ふわり、と柔らかい重み。
ああ、触れる。
俺は、生きている。
「・・・・・・・・ふぇぇぇぇぇぇぇんっっ・・・・・・よかったよぉっ」
「未夢、未夢」
「・・・・・・・ふぇえええぇぇっ・・・・ふぇぇえぇっ」
「未夢・・・・・・」
「・・・・・・・・くっ・・・・・ふっ・・・・・・ぇぇ・・と、とまんないよぅ」
いたたまれなくなって。
柔らかな桜色の唇に、キスを降らせた。
「ん・・・・・・・・かな・・」
「未夢・・・・・俺な・・・・・」
お前の声を、聞いたんだ
どこかわからない、真っ暗な場所で
お前の声が、俺の道標になってくれたんだよ
なんか書きたくなりました。
ネムリヒメの謝罪として、危険な目にあわせる、と。(最悪やな
まぁ、独占欲強いのはいつものことですがね(苦笑
ちなみに。
これR指定ですか???
まだ大丈夫ですよね?