作:瑠璃宮 恋
本っ当・・・寂しいやつ。
せっかく未夢ちゃんが話しかけてるってのにさ
全部の質問、全部「うん」で返してくるのよ!?
・・・ねぇ
それだったら
この質問には・・・
あなたはなんて
相槌を打つの・・・?
相槌
「それでね、今日はたっくさんの人と話せてね〜」
「うん」
「私、すっごく嬉しかったの!だってね、いつもはななみちゃんとか、綾ちゃんとかしかあんまり話せないから・・・」
「うん」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
「ちょっとぉっ!ちゃんと人の話聞いてる!?」
「・・・うん」
「じゃぁ、『うん』以外に何か言う事はないの!?」
「・・・うん」
「・・・・・・・・・・・・・」(ぴきぴきっ)
なんなのよ〜、さっきからの寂しい返事は!!
せっかく2人っきりでいるって言うのに!
・・・けれど、相変わらず状態は変わらなくて。
彷徨は本を読んでいて。
しきりに未夢が声をかけて。
・・・彷徨が無視して。
・・・未夢が怒って。
・・・しまいには、あっという間に仲直りする始末。
「ねぇ、彷徨」
「うん」
「彷徨ってばぁっ!」
「うん」
「・・・・・こっち向いてよねっ」
ぐいっと。
本に集中していた彷徨の横顔を。
自分の方に向けて、その顔を覗き込む。
・・・琥珀の瞳が眩しくて。
整った顔立ちとか。
全部にドキドキして。
・・・ちなみに彷徨も彷徨で。
一気に向けられた視線の先には未夢が居て。
かなり近距離。
エメラルドの瞳が少し潤んでいて。
白い頬を少し紅く染めて、未夢は怒っていた。
・・・反則だ、と。
誘うように動く桜色の唇に、彷徨は釘付けになって。
・・・このままでは本当に未夢を襲ってしまうかもしれない、と。
・・・彷徨は自分自身を恐れていた。
そして何より。
未夢に嫌われ、未夢を失う事が何より彷徨は怖いから。
ここから一歩も踏み出せずにいる。
「・・・ね、彷徨?」
「・・・・・・・」
「もうっ!今度は黙っちゃうの?」
「・・・・・ばっばかっ!きゅ、急にそんなことされたら誰だって驚くに決まってるだろ!?」
「・・・そんなこと?(きょとん)」
「・・・国語力もないのか、お前」
「なによなによー!馬鹿にしちゃってさー!」
「こそあど言葉ぐらい・・・勉強しとけよ」
「・・・わ、わかってるわよっ!・・・ちょっと苦手なだけだもん・・・(ぼそぼそ)」
「お前の場合は全教科だろ(ぼそっ)」
「なんですって!?」
「あーはいはい、今オレは本を読んでるんだよっ!邪魔しないでくれるか?未夢ちゃん?」
「・・・・・・・・・・・・・」(むすぅっ)
・・・せっかく2人っきりなのにさ。
つまんない。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・。
ふと。
ある考えを思いつく。
・・・今まで・・・何を聞いても「うん」って答えたんだよね?
だったら・・・。
だったらさ。
あんな質問しちゃったら・・・
正気に戻るかな?
それとも
「うん」って
言ってくれるのかな?
どっちにしても
嬉しいかも。
うんうんと一人で納得する未夢を思いっきりシカトして、彷徨は本を読み続ける。
「ね〜ぇ、彷徨?」
「うん」
「本・・・好き?」
「うん」
「甘いもの・・・好き?」
「うん」
「じゃぁ・・・チョコレートパフェ、好き?」
「うん」
・・・彷徨が嘘をつき始めた。
チョコレートパフェほどの甘いものなんて、彷徨は滅多に食べないくせに。
「じゃぁ・・・虫・・・好き?」
「うん」
・・・嘘。
多分嘘だな、うん。
「クリスちゃん・・・好き?」
「うん」
それはそれで悔しいかも・・・。
あ〜あ・・・聞くんじゃなかったな・・・。
じゃなくて。
本題は次よ、次!
「じゃぁさ」
「うん」
「私のこと・・・好き?」
「うん」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」
嘘っ・・・嘘嘘嘘嘘!?
まさか本当に「うん」だなんてっ!
そこまで本に集中してるの!?
っていうかそれでもそれでもっ!
顔がどんどん火照っていく。
「っっ〜〜〜〜〜・・・」
真っ赤な顔の私を見て、彷徨がきょとんとして。
「ばっ、未夢!今お前なんてっ・・・・・!!!!」
「彷徨の馬鹿ぁ〜〜〜っ」
「・・・おれが悪いのかよ」
「そそそうよっ彷徨以外に誰が悪いの!?わ、わ、私の話を聞いてなかった彷徨が悪いんでしょ!?」
・・・・・実は。
彷徨にしてみれば本音が出たも同然で。
未夢からあんなこと、聞いてくるなんて思いもしなかったし。
今までの質問は、適当に「うん」と言っていたけれど。
・・・さっきの質問だけは、自分の意思で「うん」と言った。
それにしても・・・。
「不覚だったな」
「うん・・・?」
「オレにもやらせろ、それ」
「・・・は?」
「オレの質問に、全部『はい』で答えるんだ」
「・・・変な事言うつもり?」
「いや?」
「・・・ならいいけど」
・・・ものすごくいやな予感がするのはなんでなのでしょう?
「じゃぁ・・・勉強が苦手だろ?」
「・・・・・・・はぃ」
「いっつも寝てばっかりだよな?」
「違っ・・・」
「『はい』だろ?」
「・・・・・うぅ〜・・・・はぃ・・・・」
「おまけに恋にはありえないほど鈍いし」
「鈍くなんかっ・・・・」
「ほらほら、早く」
「・・・・っっはい!」
未夢はもう半ばヤケだ。
「ドジでマヌケでおっちょこちょい」
「・・・・・はい」
否定できないのが悔しい。
「じゃぁ」
「オレの事、好き・・・・だろ?」
「!!!!!!!なっなっななななっ・・・・・!!!」
「さぁ、何でも『はい』って言うんだったよな?」
「でっでもでもっ・・・・」
ハメられたー!
「未夢は、オレの事が、好きなんだろ?」
・・・強制だ。
こんなの・・・ずるい。
別に言うのがイヤなんじゃないけど。
現に私は、この人が好きなわけだし。
・・・ただ。
照れが邪魔して上手く言えない。
「・・・・・・・っ」
「なぁ、未夢?」
疑いような眼。
そのダークブラウンの瞳で、上目遣いに見られたら・・・・・
「っっ・・・・・」
多分私は、今きっとすごく真っ赤だ。
・・・変な顔してる。
やだやだやだぁーーーっ!!!
「は・・・・・・・っぃ・・・・・・」
やっとのことでいった、
Yesの言葉。
「そっか・・・・」
彷徨は満足げに笑って。
ゆっくり近づいてきて、私の耳元で囁いた。
「オレも未夢が好きだよ」
「へっ・・・・・?」
胸元できゅっと手を握り締めて。
未夢は唖然とした。
オレも未夢が・・・・・・・
スキダヨ?
「う、う、う、う、嘘だぁぁぁぁぁ〜!?」
「・・・・・くっ・・・・くくっ」
「あっ、笑ってる!やっぱり嘘なのね!?ひっど〜い!騙した〜!」
「や・・・本当だって」
「うそうそ!わかってるんだから〜!」
・・・この鈍感娘には、まだまだこの思いは伝わりそうにないな。
それにしてもコイツ。
オレがこの思いを、
・・・・もしも本気で口にしたら。(いつかするつもりだけど)
・・・・どんな相槌を返すか・・・・・
楽しみだ。
彷徨は不敵に笑って。
自分だけの女神に、小さな挑戦状を送ったのだった。
ワケがわからな〜いvv
何がかきたいんだ。
あのね、全部の質問に「うん」と答える彷徨がかきたかったの。
ごめんなさい。
まだかきたいのあるのよ。(おいおい
自分がこの世界に入ってみたいな〜・・・とか。