作:星原 流
2005年12月。企画参加作品(再掲載)
「わかってる。」
あなたがどんなに必死にこらえてることも。
「信じてる。」
あなたが、きっとこの難関を通り越すことを・・・。
☆☆☆
彷徨が、入院して3ヶ月がたった。
いきなり、おじさんから連絡をうけたときには驚いた。
急いで病院にかけつけてみると、
彷徨は何か、「気が抜けたような顔」になっていて・・・。
病気で苦しんでいるというより、何か大きな心の病をおっているような感じがした。
彷徨の病気はとある消化器難病。難治性の疾患で、先ず死ぬことはないといわれているが、
一方で、慢性的な経過をとってなかなか社会に復帰するのが大変だという。
彷徨が罹患したのが、3ヶ月前の9月。私たち大学生は、前期試験で、受けられなければ
当然、単位ももらえなくなる。そうなれば、嫌がおうにも留年ということになる。
彷徨は頭のいい方だが、試験がうけられなくては、単位の取得はできない。
色々な治療をしているが、なかなか退院までこぎつけていないのが現状だ。
「おはよう、彷徨」
私が彷徨に声をかけると、
「おう。いつもありがとな。・・・。」
今日は12月25日、クリスマスでもあり、彷徨の誕生日でもある。
「今日は何の日かわかる?」
私は、悪戯っぽく彷徨に聞いてみた。
「俺の、19歳の誕生日だろ。そして、クリスマスか。」
病室の窓をじっと眺める彷徨に、私はやはり何か大きなものがあるような気がしてならなかった。
「年末には退院できそう?」
私は彷徨に聞いた。
「ああ。多分。できると思う・・・。でも、今年は留年になっちゃうな。」
彷徨は苦しそうにそういった。
「あのね、彷徨。」
「なんだ・・・。」
彷徨は私の方の顔をみて、そういった。
「私って、彷徨の恋人だよね。」
そういう私は多分顔は真っ赤だと思う。
彷徨も顔を赤らめて
「ああ、でも、こんな俺でもまだ恋人でいてくれるのか。」
ちょっと悲しそうな雰囲気でそういった。
「私は、彷徨がどうなっても彷徨の恋人でいたい。それに、そんなに私のこと信頼できない。」
ちょっとさびしそうに私は彷徨にいった。
「そうじゃない。・・・だけど、俺、病気を患ってから、段々孤独になっていきそうで・・・。怖くて・・・。未夢も失ったら、俺どうしたらいいのか・・・。怖くてたまらない。」
彷徨の顔には雫があった。
「そんな心配、する必要ないでしょ。私は何時だって彷徨が好き。そんな心配しないように、こんなの用意してきちゃった。」
私は、カバンから1つの箱を取り出した。
「これって、指輪(?)、おい!指輪って普通、男から女に送るもんだよな。」
「私は、彷徨が好き。その証拠、私からプロポーズ。結婚してくれる。?」
顔を真っ赤にしながら私は精一杯彷徨に向き合っていった。
「お、おい。未夢(?)どうしたんだ。結婚なんて、俺たちまだ未成年だし、両親の了解を得ないと・・・。」
「パパとママ、そしておじさんにはもう了解とってあるよ。私はこれから一生彷徨と一生いきていくから、彷徨がどんなに大変であっても、私はあなたのパートナーとしていきていく。」
彷徨は、
「本気か。俺、一度母さんを失って、何か一人ぼっちになったような気がして・・・もうどうにでもなれって思ってたときがあった。そして、今回この病気にかかって、またそう思ったんだ。でも、未夢がいてくれれば
きっと、乗り越えていけそうだと思う。」
私は、
「実は、式の準備を談話室にしてあるんだ。看護師さんに手伝ってもらって、綾ちゃんやななみちゃん、三太君や望君もきている。もちろん、パパもママもおじさんも。いこ!」
そういって、彷徨の手をとってリードした。
☆☆☆
談話室の中、
そこは、暖かな空間だった。
仲間と両親。
そして未夢と俺。
みんなが俺を祝ってくれている・・・。孤独じゃないんだ!そう思える。
みんなの祝宴の中、俺と未夢は誓いのキスをした・・・。
とっても暖かい、忘れられないこの空間。
☆☆☆
「私ね。ずっと、彷徨のこと「負けないで!」って応援してた。だけどね、きっと言葉だけじゃ不安に
なるんだと思って。思い切って結婚しようと思ったんだ。私は彷徨がいなきゃだめだから。彷徨の気持ちが変わらない限り私は、永遠のサポータでいたいって思って・・・。病気との闘い、大変だけど、私と一緒
にのりきっていこ!」
私は思うがままにそういった。
「俺の一番は未夢だよ。俺が本当ならプロポーズしようと思ったのに・・・。でも、うれしかった。
病気になって、未夢にとって俺はふさわしくないて思い込んで・・・。それが一番気がかりだった。
でも、未夢の気持ちがあれば、大丈夫。俺、きっと病気を乗り越えていく。こんなにも熱い声援があるのだから・・・。」
そういうと、彷徨は私にキスした。
「ずっと好きだ・・・未夢。」
☆☆☆
その後27日に彷徨は未夢の夫になって退院した。
これから、いろいろの医療的な処置が必要だけど・・・。大丈夫。
未夢がいてくれるなら・・・。
そう彷徨は思うのだった。
お久しぶりです。
星原流です。
展開が急になりすぎてすみません。
実は、私自身がこの作品にでてくる消化器の難病罹患者で、もし、パートナーがいたら・・・。
という希望もこめて書いています。
お粗末な作品ですが、企画品として進呈します。
企画終了後も書棚の方で公開する予定ですのでよろしくお願いします。
なお、今回の作品をかくはZARDの曲を聴きながらかきました。
ではでは。
感想をお聞かせいただけると幸いです。