「お疲れ様でした。」
そう挨拶すると、俺は家路についた。
俺は天沢青嗣。24歳。中学校の教員をしている。
まだ若い(つもり)が、これでも一応三人の子持ちである。
『ただいま!』
玄関のドアをあけると、まず甘えっこの長女そらが俺を目掛けて走ってきた。
『おかえりなさい。パパ!』
元気のいい娘は4歳。今年幼稚園に入ったばかりである。
俺は、そらを抱きかかえると、
「ただいまそら、いい子にしてたか?」
と尋ねた。そうすると、そらは、大きく頷いた。
「あっ。そら。また、お前ばっかでずるいぞ…。」
そういうのは、長男の光太。5歳。幼稚園年長生である。不快そうにそらに話す光太に、
「はやいものがちだもん・・・。パパに甘えたいんなら、早くくればいいじゃない。」
軽くあしらわれる光太に、もうちょっと、男としてしっかりして欲しいな…。そう感じた。
俺は、
「二人とも、こうすれば文句ないだろ?」
そういうと、俺は両腕で二人を抱きかかえ、リビングに向かった。
「お帰りなさい。今日は早かったのね。もう少しで夕飯の支度が終わるからそこで、
まってて…。」
そういうのは、俺の奥さんの京(みやこ)。俺と同い年だが、小さい頃から家事全般をそつなく
こなしていたせいか、初々しい感じはない。
「そういえば、泉はどうした?」
と俺は京に話しかけた。泉は末っ子で、2歳。まだ、十分な言葉はしゃべれないが、
好奇心旺盛で、よく京の弟の慈君と一緒にいる。
そういえば、京は慈君の姿も見えない。
「今日慈が、大学に連れてった。なんか、泉にみせたいのがあるんだってさ。」
そういう京に、
「あいつは、女の子だけど…慈君と同じように研究家になってしまうんだろうか…。」
ちょっと感慨深くなっていると、
「そうかもね。泉の好奇心は凄いよ。慈が昔発明やってたじゃない。その発明品をしっかりと
見て、早速いじりだしてるの。『女性天才発明家誕生』の日もまじかかも…。」
ちょっと冗談半分にいう京に、「そうかもな。」と相槌を打った。
「ただいま!」
この声は慈君の声だ。俺は玄関の方を覗くと、泉もしっかり抱っこされていた。
「おかえり。」
そう、泉に声をかけるが…。熟睡しているようで…反応はない。
「さっきまでは起きてたんだけどね。流石に眠くなっちゃったみたい。」
慈君が答える。
「そう言えばみやちゃん。依姉と聖姉は?」
その質問に京は、
「依はまだ仕事…。今日遅くなるって電話があった。聖姉は今日先生と食事してくるって…。」
今話に出てきた聖さんというは、俺の初恋の人だった。中学時代、まだおれが自分の本当の気持ち
に気づかなかったころ、俺は振られても諦めがなかなかつかなくて、、、でも、京は俺のこと
ずっと好きで…。でも、ある出来事から、俺の本当の一番が誰かって知った。
「そういえば、青嗣。いいわすれてたけど、さっき晴名さんから電話があったよ。」
京があわてていった。
晴名は俺の姉ちゃんだ。ただ、血はつながっているが、今は血縁ではない。
「姉ちゃんなんだって?」
そう尋ねると、
「なんか、今度の日曜日に会えないか…って。私は多分青嗣も大丈夫だと思うっていっておいた
けど…。」
俺は、「そうか・・・。」と相槌をうった。
「あのさ、京。」
ちょっと照れくさそうにいう俺に京は、「なぁに。改まって?」と尋ねてきた。
「俺が昔、お前と約束したこと覚えてる?」
俺は、京に聞いてみた。
「覚えてるよ・・・。晴名さんと今度会うときは私も一緒にきて欲しい…って言葉だよね。
晴名さん。あれから留学しちゃって結局あってないもんね。」
そう京が感慨深くいった。
「パパ、しょくじまだ??」
そらと光太にせかされ、食事を始めた…。
☆☆☆
三人の子供が寝静まったあと、京は俺に話したいことがあるといい、ベランダに来て欲しいと
言われた。
「改まって・・・なんだよ。どうかしたのか。」
ちょっと心配そうにきく俺に、
「あの…ね。青嗣は子供好きだよね?」
京は照れながら言う。俺は、
「勿論好きだよ。それが、どうしたんだ。」
俺が不思議そうに尋ねると、
「四人目…できちゃったみたい。今日、病院にいって三ヶ月だって…。」
真っ赤にしながらいう京が可愛くて、俺は京を抱きしめた。
「すげー嬉しい。…ありがとう京。また、大変になるけど…俺も頑張るからさ。」
「あらあら・・・。なんかいい雰囲気の中お邪魔だったかしら?」
そういう名の主を確認すると…聖だった。俺も京も真っ赤になって、急いで体勢を戻すと、
「そんな・・・気を使わなくていいのよ。」
と聖はいった。
「そ、そういえば優朔さんは?今日は泊まっていくの?」
そうたずねると、
「今日は、ちょっと父さん、母さんにいわなきゃいけないことがあるから…。」
そういうと、自分の部屋の方に戻っていった。
聖の行動に「??」疑問符を浮かべたが、
「今週の日曜、俺と京と、光太とそらと泉の5人で姉ちゃんのところに行こう!」
そう俺からいうと、京は笑顔で頷いた。
☆☆☆
日曜日
天気は快晴。電車とバスで姉ちゃんの家についた。
「こんにちは!!」
威勢よくいうのは「そら」だった。
負けずぎらいの光太もおもいっきり、「こんにちは!!」と声をあげた。
「はーい。こんにちは。あら、この子たちが青嗣の子(?)なんか…男の子の方は青嗣の小さい
ころに凄くにてる…女の子の方は活発ね。こっちの女の子は静かね…。」
姉ちゃんと久々にあった。子供たちも姉ちゃんとすぐ仲良くなった。
…
「二人とも相変わらず仲よさそうね。青嗣、京ちゃんと付き合うようになってから、
凄く明るくなった気がする。」
姉ちゃんの言葉に、
・・・そう俺は、ひとりぼっちが多くて、、、
クリスマスイブも一人ぼっちで、よくサンタにお願いしてたっけ
お父さんとお母さんと姉ちゃんと一緒に過ごせるようにって。
でもそれは叶わなくて、そして初めて天沢家にいったとき、
すっごく温かい感じがした。
そして後になって気づいた。この明かりは京がくれているものなんだって。・・・
ちょっと感慨深くなっている俺に、京は少し不安そうに「どうしたの?」
って尋ねてきた。
そう言えばさ、姉ちゃん。
「俺、凄く思うんだけど、京に言われてやっぱり家族が増えていくことって凄く嬉しいことだと
思う。姉ちゃん、父さん、母さん、そして天沢家のみんな、子供たち、そして京とお腹の中にいる
子。なんか俺、へんかもしれないけど、凄くわくわくするんだ。・・・確かに大変なこと多いけど
さ・・・。でも、やりがいもあって、『俺ってここに必要とされているんだ。』って思えて、、
だから・・・姉ちゃんも早く結婚しろよ。」
そういって姉ちゃんの肩を叩くと、
「ほんと、相変わらず生意気な弟だわ。」
とくすくすと姉ちゃんは笑い出した。
☆☆☆
家路、
「あのさ青嗣…後悔してない?天沢家継ぐような形で婿養子になっちゃって…。」
そう京がきいてきた。
「なにいってるんだよ!俺はずっと天沢家にあこがれてたんだから!すっげー嬉しいよ。
後悔はこれっぽっちもしてないよ。むしろ、ありがたいね。」
俺はそういうと京の手を握り、
「ずっと傍にいてくれよな。」
といった。
このぬくもり、ずっと感じていたい。
あのときの寂しさを拭い去るくらい。
俺はこのぬくもりがパワーなんだ。
空にに出来た星雲は勢いよく輝いていた。
Fin
あとがき----
この作品は、「空のまんなか」という作品の二次創作です。
ホームドラマで、私の大好きな作品の一つで、以前同盟に一作品だけupさせていただいて
いたのてすが、今回最終回をうけて、その後・・・ってことで書いてみました。
いやはや、凄い文・・・。作品のよさ伝わらないわ・・・こりゃ。
原作は、集英社から刊行されています。
ぜひ読んでみてください。
それではまた。
(この作品は同盟とlittle star 散文、駄文の広場両方に掲載します。)