託された思い

作:英未


 関東大会男子団体の部。
 青天のなか行われた第一試合氷帝学園VS青春学園。青学が2勝1敗1ノーゲームで迎えたシングルス1は手塚VS跡部、両校の部長対決。これに勝てば1回戦突破となるその試合で、予期せぬアクシデントが起こった。

 手塚の肩……

 痛めていたヒジは完治している。しかし、手塚自身が気付いていない弱点を、跡部は見逃さなかった。手塚は、痛めたヒジを庇って無意識のうちに肩へ負担をかけているのだ。

(キサマの腕は、もって1時間が限界だ!)

 しかし、自分の腕よりも部長として青学の勝利を選んだ手塚は、跡部の予想を裏切りあえて持久戦に挑んだ。このまま試合を続ければ、彼のテニス生命は終わってしまうかもしれないというのに。



「ゲーム6−5 青学リード」



 激しいラリーが続く。




「アドバンテージサーバー」





(あと一球だ)

 見守る青学テニス部員たちと、思いが重なる。

(あと一球、持ち堪えてくれ!)




 だが、手塚のそんな願いもむなしく、左肩に激痛が走った。





 肩を抑えて崩れ落ちる手塚に、誰もが目を疑った。




「て、手塚ーっ!?」
「手塚部長ーっ!?」

 激痛をこらえる手塚に、部員が駆け寄ろうとする。

「来るなーっ!」

 上がらない肩を押さえ、手塚はラケットを拾う。

「戻ってろ!…まだ試合は終わっていない」






「俺に勝っといて負けんな」



「俺は負けない」



 ベンチコーチを務めるルーキーの素直ではない応援に答え、手塚は


 そして、長い長いタイブレークの後、試合は終わった。






「ゲームセット ウォンバイ氷帝学園 跡部! ゲームカウント7−6!!」

 握手を交わした手塚の手を、高々と跡部は掲げた。
 手塚の青学に懸ける想いをたたえるかのように。そして、この試合、どちらが勝ってもおかしくなかったと言うように……




 手塚のまさかの敗退に、青学テニス部員は声も出ない。
「氷帝学園VS青春学園の試合、2勝2敗1ノーゲームにより、第6試合控え選手によるシングルスを行います!」











そのときリョーマの目には、違った光景が見えていた。

部長は負けていない
でなければ、自分の目に、あの光景は映らなかったはず。
だから……

(証明してみようか?)

負ける気はしない。

青学の柱になれと、あの部長に認められたのだから。



勝つ気しかしない!






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